わきまえのない道と理論
笹田が幼少期から過ごした養護施設というのはアットホームという感じだったのは思い出したのだ。笹田が物心ついたときには大勢の似たような境遇の人が集まっているのだと思ったのだ。母親が会いに来ても職員によって追い返される様子も見ていた。
「貴方には彼を育てる覚悟というのはあってきているのですか?少しばかりの罪悪感のための小道具とするならばやめていただきたいです。」
はっきりとした口調でいっていたのは確か、笹田明光といって彼は元刑事という経歴を持ちながらなぜか養護施設で働いていたのだ。明光は数々の事件を解決していたいわゆる敏腕刑事といったところであったが、やめると決めたときはあっけなく辞めてしまって養護施設の職員として働きだしたのだという。宗の笹田という苗字は明光から取られたものだった。宗は明光の息子として育ったのだ。養護施設で育ったこともあったが、全くといっていいほど多くは語らなかった。
「あっちゃんは俺の何に当たるの?」
幼いころの宗は一度そういって聞いたことがあったのだ。
「父親だ。それに尽きる。だがな、お前には本当の両親がいるんだ。俺は子供も育てたこともない人間が職員になったことで出会えたんだ。・・・下らん前職があったせいでろくでもない噂を書き立てる連中もいる。それをいやしてくれるのはお前だ。宗。」
それでも明光は父親と呼ばれるのは嫌がったのだ。それは父親というほどの愛情を注いだ覚えがないからだといっていたが、本当は本当の両親がいるからもあるのだろうと思った。養護施設では明光とともに遊んでいたのだ。明光はそれからも職員というのがなくなっても施設にいっているのは知っているが、これといって何もなかった。
「刑事という職業は人助けだなんて大きなものを抱えていると間違えてしまうものなんですよ。宗にはいってませんが、あいつの両親は過ちの末に起きた事件とかかわっているだなんて言えないですよ。」
施設長にそういっていたのだ。明光は刑事になったことを恥じているのは幼いながらにわかっていたのだ。それでも明かそうとしない両親について調べようと思ったのは大学に入った時だった。しがらみから逃れたと思ったのだ。だからこそ、バイトに探偵になろうと思ったのだ。ただのバイトの延長として探偵以外に飲食店で働いていたのだ。そこで起きた事件が探偵として疑われたのだ。そこで乗り込んできたのは明光だった。
「宗はそんなくだらないことを教えてない。よっぽどのものがない限り、此処まで留置していいとはなっていないはずだ。わきまえたうえでやっているのか。」
刑事に突きつけると即釈放となったのだ。




