声の張り方
龍哉ばかりに無茶を言うのは気が知れてくるものなのだ。奏斗もパソコンに向き合っているのだろう。明白に事件にかかわっていることが見えてこなければいけないのだろうから。安易には向き合えないとは言えないのだろう。
「宗、川城翁助に直接、会ってみることはできないのか?」
「協力してくれるのなら直近の事件で示すことはできるだろうな。」
川城翁助は検察庁に時々戻っているのだとも聞いたこともあった。いくら検事としても歴があったとしても出世街道というまで持ち上がらないのだという。それは裏で川城三郎が動かしていることが明白になっては困るっていうことなのかもしれない。
「村上、今から会いに行こうと思うだが・・・。」
「いいんじゃないのか。所長は何も言うわけじゃないんだ。ある意味依頼者と一緒だよ。誰だってそうだよ。犯罪に加担したかもしれないと思った公にして罪を償うほうを選ぶのが妥当だと思うけどな。」
宗は村上から力のこもった声によって前へと進めることができるのだ。村上はある種の川城探偵事務所の特別枠といったところだろうか。探偵になったものの性に合わないとか言い出してやめてしまうことだってあったのだ。
「いってきてください。俺は轟に情報をもらっていますから。」
「そうか。龍哉はどうする?」
「俺は裁判の傾向を取っておくよ。再捜査に導ける裁判を起こすにはそれなりの証拠が必要となってくるからな。」
2人の前と進んでいる足を見つめるしかないわけではないのだ。後ろになってしまったとしても背中が見せるものは偉大なものになってくる。彼は村上とともに検察庁に顔を出すようにした。アポを取っていないこともあって追い出される前提だ。ただ張本人がいいといってしまえばいいだけの話に過ぎないのだが・・・。
村上は歩きなれないビル群の森に少し困ったような表情だった。路地を出ると正面に警視庁があった。
「こんなところに警視庁があったんだな。」
「俺の事務所があるのは警視庁のおひざ元っていう感じかな。でもそれは監視をするつもりで近くにおいたんだ。警察が怖くなったり役に立たなかったら探偵に役回りっていうのは回ってくるものだからな。」
警察は事件が起きないと動かない癖に要人すら守る能力を持ち合わせていないのだ。かすかすの警備をしてしまったら何が起きても驚かないだろう。驚いたところで鳥越苦労に過ぎないのだから。その癖に
権力者には頭を下げるし、死んだとなれば調べる。違いはないはずなのに・・・。格が違うのではない。恩恵ばかりを追ったに過ぎないのだろう。身近の事件すら未解決にするくせに・・・。




