つながっているもの
「川城翁助について調べるように言っていなかったか?どうしてだよ。」
「川城三郎に会うには翁助に手を借りるわけさ。それも何故頼るかというとな。増岡勉に会うためだよ。じゃなきゃ単純には会えないさ。」
探偵なんてくだらない職業だとして評価をしている人間に対抗できるものとして得れるのは情報に過ぎないのだ。山田剛三の死についても知っているはずだろうから。マスターはコーヒーをもってきてくれた。
「熱弁する分は構わないよ。なんせこんな小さな店だと誰がしゃべっているかまではわからないだろうからね。」
「すいません。」
「川城探偵事務所の川城尚子で請求書をお願いします。」
村上はその場でマスターに告げた。これから出てくるものに関しては全て川城探偵事務所が負担するということの確約に近いのだ。宗はそれを眺めた。村上は以前よりも責任感が強くなった気がした。そうでなければこのような仕事はしていないだろう。相手に憎まれる前提の仕事についてしまっていることも悪しからずといったところだろうか。
「本気で会うつもりかよ。殿山製薬も関わっているとすればかなり厄介だぞ。だって、殿山製薬は以前は大した製薬会社じゃなかったにしても今や大手の製薬会社だ。そんなところを相手にするのか?」
「するしかないだろう。俺の事務所を放火しようとした久保田が殿山製薬の営業マンだったんだよ。その時に薬で人が死んでいるのにコネで入社をした藤川は別の製薬会社にいったにもかかわらず死んでいるんだ。」
殺されたも同然だとしか思えなかったのだ。宗からしてみれば久保田の話を聞いたときに思ったのは藤川は守られてやめたはずなのに結果的に守られなかったということだ。村上は真剣な顔付きで宗を見つめた。藤川正治は何故別の製薬会社にいたにもかからわず狙われてしまったのかという不思議が生まれてしまうのだ。
「確かに殿山製薬は藤川に生きてもらったら困る状況であったということだな。その薬に関することだったらやめる時にとっくに黙っているはずだろう。下手にしゃべったところで別の相手に罪が擦り付けられているのを明かしたところで藤川自身が損をしてしまうのはまるわかりだからな。」
増岡につながっていてそこに隠れているものが分かるのではないのだろうかと思った。店のドアの鈴が綺麗なノイズとしてなった。
「マスター、今日の産地は何処かしら?」
「コロンビアといったところですね。」
「そう。それを頼むわ。」
彼女の演技じみた声が喫茶店に響いた。かすかに楽しみを含んでいるように思えるほどだった。




