見えぬ敵
顧問弁護士の候補として雇うとかいう話になった時もあったが、その人物はやけに笹田に対して決めつけた態度を見せたために断ったのだ。のちに大手企業の顧問弁護士になったものの解雇になったことも聞いていたのだ。
「田口真澄っていう弁護士は今、何をしているんだろう?」
「貴方の弁護をしていた弁護士ね。・・・確かに話は聞かないわね。増岡を追っているってみたいな話だけは聞いていたのよ。田口さんはもっぱら増岡にしか興味がなかったらしいのよ。」
田口は事件を聞きつける度に増岡の裏を見張っていたのだろうかと思ってしまう。だから狙われやすいといってもいいだろう。大手の弁護士事務所に在籍をしていたとしても大きな敵を前にしてはおじけづくことも考えられてしまう。
「そのことも含めて調べてみるか?」
「そうだな。」
「それなら契約書が出来上がるまで近くの喫茶店にでもいて。近くに行きつけの店があるのよ。此処の事務所だって言えば個室もあってそこに誘導してくれるから。」
川城はそういって契約書を急がせて作らせるようだ。悪いようにしないのは知った上の契約なので、突っ込む必要もないだろう。村上と笹田は川城探偵事務所の行きつけの喫茶店に向かうことにした。路地に入った場所なのでわかりづらいのかもしれない。
「田口っていう弁護士を所長がそれっきり知らないっていうことは普通に考えてあり得ないんだよ。あの人も伊達に元検事の所長をしているわけじゃないんだろうからな。」
「知ってるさ。俺もあの人の下にいたんだから。それにしても何時行きつけの喫茶店ができたんだよ。俺がいたときはそんなのなかったぞ。」
そこの喫茶店の店主が事件に巻き込まれそうになったのだという。それで警察にいうことも嫌だったために頼って来たのだというのだ。川城尚子は受け入れたのだという。その事件を巻き起こそうとしていた人物を特定をして訴えることも考えていると言い含めるとあっさりやめたのだという。その人の言葉には後ろには大きな後ろ盾があるといっていた。
「それでも嫌がったんだよ。多分だけど、俺の予測じゃ川城三郎じゃないかと思っているんだ。こんな探偵事務所を狙う理由にもならないだろう。」
「確か所長には兄弟がいたよな。」
「検事をしていたはずだよ。川城翁助といったかな。凄腕の検事だとか言われて事件に追われているとかいう話だよ。まぁ、三郎もいるくらい当たり前だよ。」
尚子の弟ですら敵になってしまうのだ。




