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忘れていた人

田口という弁護士は増岡を調べていたのだろうか。あくまでも大手の弁護士事務所に所属していたにも関わらず自分の思い通りの動きができたというのも不思議な話だ。

「増岡って増岡康太のことなのか?」

「もしそうなら消されてしまっているっていうことだよな。・・・確かにあの人は正義感が強かったからな。特に権力によって押しつぶされるような状況は気に食わないみたいなことを言っていたんだよ。その時の事務所の所長に無理をいって毎回弁護をしていたようだ。」

白浪はグラスを傾けながら言った。彼も田口という人物像をはっきりとわかっているわけではないのだ。あくまでも笹田宗の弁護士として現れて以降全くもって会いたくても会えるはずがないのだと思っていたのだろう。

「奏斗、田口真澄を調べてほしいんだ。」

「わかりました。田口真澄ですね。弁護士ですよね。何処の弁護士事務所に所属していたか、わかりますか?」

宗は奏斗からそれを問われると悩むような顔をしていた。宗にとってはその名刺を受け取れるはずがなかったうえに感謝を言うつもりもなかったのだ。逮捕されたとしてもかまわないと思っていた節があったからだ。

「覚えていないな。だってもう何年も前の話だ。俺は名刺を受け取れる立場でもなかったし・・・。」

「そうですね。けど、弁護士をしていたということは登録はされているでしょうからね。探すのには時間はかからないはずですよ。」

「さすがだな。」

笹田はそういってワインを飲んだ。村上も思い出すかのように田口という人の顔を思い出していた。だが、全くといっていいほど思い出せないものなのだ。田口は大手の弁護士事務所に在籍していながら自由に動けていたという許されていたということも謎だった。田口は会社の顧問弁護士をしていたとも本人から聞いたこともなかった。田口は口を酸っぱくいっていたのだ。刑事事件の裁判は金にならないから事務所からやめろと言われているが、自分の探していることとつながっているのでやめられないしやめるつもりはない。

「刑事事件の裁判はやめるつもりはないとかいっていた人がだ。ぱったり国選なりを受けないとは思わないな。」

「そうだな。国選でもやっているほうがいいと思っている人だった。」

国選で選ばれたとしても誠意をもってやってくれるとしていい噂しかなかった人なのだ。そんな人がいなくなるなんて可笑しいとしか思えなかった。宗にとっても誰かにとっても動かなかった歯車がゆっくりと動き出した気がした。

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