訓練場
ミリーが退学した。
朝の話でベーグから通達されたのだ。
昨日の夜王城の窓から走ってる数名の騎士を見つけたから何か関係はあるだろう。
朝の話が終わり班を集めた。
防音魔法を張って誰の声も聞こえないようにする。
「どうします?」
「どうするって何を?」
「班の人数が足りなくなってしまった」
「そういう問題じゃないです!」
「騒がないで。とりあえずナナタリーが知りたいのはミリーの行方だろ?」
「はい、、」
「アーネとアーノは知らないだろうけどメイドの噂によると昨日貴族街にミリーの家の公爵様の叫び声が響いたらしい」
「何かしらの関係がありそうね」
「とりあえず俺は放課後、公爵の家に行く。お前らはミリーを発見次第連絡しろ」
「何気に協力的ね」
「新しいやつを見つけるより問題を解決したほうが国王に恩を売れそうだしな。ナナタリーは足りない二人をピックアップして置いてくれ」
「ピックアップ?」
「選んどけってことだ。今は授業の準備だ。一時間目は?」
「確か訓練場でバレンバーっていう老人の直接指導と9年生の指導を受けさせてもらえたはずです」
「バレンバー様を呼び捨てにできるのはあなた達か国王陛下ぐらいですね」
「とりあえず行くか、、あ、」
「どうしたんですか?」
「訓練場ってどこ?」
「「「え?」」」
「ついてきてください。案内しますから、、」
ナナタリーについて行き教室を出る。
この教室は三階だったので二階に下り廊下を歩いていく。
渡り廊下に入り別館のような建物に入っていく。
「ここが訓練場です。昼休みにも使えますよ。図書館のようなことはくれぐれも、、、」
「しないから。しないから。それよりもその指輪どんな感じ?」
「凄すぎますね。正直平民である僕が持っていいものではないと思います」
「君にあげたんだ。遠慮なんかするな」
そんな会話をしながら中を見てみるとここは観覧席のような場所であり右手の階段から一階の訓練場とやらに行けるらしかった。
訓練場はかなりの広さで昔で言う東京ドーム1個分の広さだった。
魔法や弓、剣などの様々な武で分かれており中には大盾なども入っていた。
因みに西暦・2188年に東京の再開発計画が実行され東京ドームを拡張し今では多数の競技が行えるようになっており名前が東京国際多種競技場という名前に変更された。
話が逸れたな。
あまり人はおらず9年生が多少いる程度だった。
あ、昨日デールの迷宮で一緒に第五階層まで行った厳つい兄ちゃんがいる。
向こうはこちらに気がついていなようで渋りながら訓練場の的に向かって下級魔法:『火球』を放った。
着弾した『火球』はボン!という音とともに弾けて的に焦げ跡を残した。
魔法も使えて剣も使えるのか。
つまりLvは20越えってことだな。
それはそうとして火球で焦げ目がつくなら高位魔法:『黒炎』を使えば灰になるだろう。
なんてお粗末な的なんだ。
もう少しまともな保護魔法かけろとも思ったけどあのバレンバーでさえ上位魔法が最大なのだから一般人からしたらかなりの強度なのか。
因みに高位魔法:『黒炎』はナナタリーが覚醒した直後にフランベルジュに付与した炎と同じである。
思ったのだがナナタリーくん人間社会の中でとても強くなってないか?
そこは置いておこう。
強くなったのだしいいよね別に。
後ろから数名の九年生と6年生が入ってきた。
どうやら6学年全員と9学年全員で行われるようだ。
下に降りると謎の魔道具がありなんか二世紀前に流行ったセグウェイみたいだった。
「これで各自が練習する場所に移動します。持ち手を掴んで乗れば勝手に動きますから乗ってください」
セグウェイは俺が乗ると俺を魔法の訓練場へと運んで行った。
いや、主武器は弓なんだけど、、、、
まあいいか。
運ばれるがままに厳つい兄ちゃんがいる魔法の訓練場へと入っていく。
向こうもこちらに気がついたようでグットポーズを向けてきた。
「おう!1日ぶりだな!」
「魔法もできたんですか?」
「おうよ!Lvが最近20に上がってな新しく『魔法詠唱者』の職をゲットしたからな!本職の魔剣使いには及ばないがそれなりの魔法剣がつかえるぞ」
何だろう。
なんか初心者プレイヤーにこういうの居た気がする。
新しく力を得て少し自信がついたタイプの初心者プレイヤーだ。
でもちゃんと引き際は分かるタイプの。
分かるぞ。
おまえはきっと強くなる。
結構体ガチガチだしな。
「それでお前さんは魔法使いだったのか?迷宮の時後ろにずっといたから回復系なのかと思ってたぜ」
「結構私強いんですよ?」
「まああの大槌の嬢ちゃんより強い感じがするからな!あの二人もかなりの実力者だろうがお前さんの方が強いやつの気配がするぜ」
「固有能力なのですか?」
「ばれちまったなぁ。そうだ。おっと、そろそろ始まるぜ」
話し込んでいたうちにかなりの人数が集まっていた。
中にはネアとノアもいた。
あのセグウェイに君達も連れてこられたのか。
なんとナナタリーだけ剣のところに連れられている。
かわいそうに。
魔法職持ってないからしょうがないけどな。
彼はただいまとてもいい顔をしています。
なぜでしょう?
その理由は覚醒して自信がついたからですね。
とは言ってもおそらくミリーのことで頭がいっぱいで多少の不安があるが。
良いねぇ青春は。
私、前世、経験、なし。
なんか急にナナタリーにムカついてきた。
後で締めよう。
迷宮でたっぷりと。
頭の中で馬鹿なことを考えているうちに急に歓声が起こった。
すごいびっくりしたがその理由は観覧席にいる人物が原因であるとすぐにわかった。
バレンバーがいた。
いや地味にこっちに気づいてテヘペロしてんじゃねえよ!気持ち悪い!
ほら、ネアさんのノアさんも引いてますよ。
バレンバー乙。
それは置いておきバレンバーがなっがたらしい話を始めた。
おや?
なぜか帝国との戦争に話題が移ったぞ?
ああ、学生にも危機感を抱かせるためか。
まあ心なしか全員の顔が引き締まったしな。
黒と白の生徒は戦争が始まり次第徴兵される可能性もあるらしい。
うわいやだなー。
とは言っても俺は前線確定なんだけどね。
長ったらしい話というより演説に近い話が終わりバレンバーが『飛行』で降りてくる。
『思念波』の範囲内に入ったので授業中だろうがなんだろうが語りかける。
『おいバレンバー!さっきのテヘペロはなんだテヘペロは!』
『うをぉい!?デミル様!何ですかその口調は!?そっちが素ですか!?』
『んなこたぁどうでもいい!さっきのテヘペロはなんだ!』
『どうでした?』
『きもかったです』
なんと意外なことにノアさんが思念波に割り込んできた。
そうだ!
もっと言ってやれ!
『そんな言われようされたら泣いてしまいますぞ!』
『『知る(りません)か』』
『まあそれは置いといてですじゃ。貴女の左手側30mの黒服の女性。見えますかな?」
『見えるぞ』
『あの方にはあまり近づかないでいただきたい』
『なんでだ?』
『それは言えません』
『まあいい。授業やれ』
『もう始めております。貴女に学ぶことはなさそうですが』
『正解』
テレパシ−をきりバレンバーの声が聞こえる方向を見ると一人の女子学生を呼び出し的に魔法を打ってもらっているところだった。
ま、いっか。
だって俺の『真之魔導師』は『AD.world』の中で最も強い職の一つだしね。
適当に聞き流しているとネアとノアがこちらに近ずいてきた。
丁度バレンバーの話も終わり9年生による指導が始まった。
「顔見知りだし俺がやってやるぜ!まあお前さんの方が強いけどな!ギルだよろしくな!」
「ミイマです。こちらこそよろしくお願いいたします」
「アーネよ」
「アーノです」
「嬢ちゃん達もよろしくな!」
どうしてこうなったんだろう?
ミリーは退学してしまうし僕は県の練習場でむちゃくちゃ絡まれるし。
ただいま白服相手に対峙中。
勝てる気がしない!
でも相手は白服の下の方の六年生。
ミリーよりかなり弱かったはず。
だったら勝てるかもしれない。
「じれったい!行くぞ奴隷!しねぇぇ!!」
殺意だだ漏れなんだけど!?
こうなったら!
ミリーを助けられたときみたいにフランベルジュに黒炎を纏わせる。
「なんだその炎は!っな!?」
「あ!しまった!」
黒炎が白服の剣を融解してそのまま白服の腕に太刀筋が入り血が吹き出る。
が、黒炎の熱によって止血され治癒魔法が効きにくくなってしまった。
やらかした。
「ぼ、僕は男爵家の子供だぞ!こんなことしてタダで済むと思っているのかぁ!」
治癒魔法で腕を直されながら白服が叫ぶ。
が、白服の腕は一向に治らずだんだんと白服の顔が真っ青になってきた。
「どうした!早く治せ!」
「そ、それが治らないんです!何回もかけているんですが!」
「き、きさま!何をした!奴隷の分際で僕に何をした!」
そういえばこの前デミルさんが『治癒遅延』とか言っていた気がする。
まさかこれのこと?
それだったら凶悪すぎるじゃないか!
「静まれ!」
この声は多分バレンバー様だ。
多分終わった。
いくら僕でもバレンバー様には勝てる気はしない。
「バレンバー様!この無礼者をどうか粛清してくd、
「馬鹿者!お前は斬りかかるときなんと言った!」
「行くぞ奴隷、です」
「その後お前は死ねと言った!それは明らかに殺意を入れた剣だったな!そうだな!」
「ひぃ!はい!そうですぅ!!」
「殺そうとして腕一本で済んだのだ!喚くな!本来ならお前は死んでいてもおかしくないのだ!いいか!お前らも覚えておけ!殺そうとしたものは殺されても傷つけられても文句は言えないのだ!わかったな!」
『『『は、はい!!』』』
「今回はサービスじゃ。今後こういうことがないように留意せよ」
バレンバー様が治癒魔法を使うと少しながらも回復していき白服の腕は完全に治っていた。
「ふむ、中位魔法の治癒でこの速度。治癒が遅くある効果が付与されておるの。御主、名はなんという」
「は、はい!ナ、ナナタリーと言います!」
「なるほど。御主が。まあ良い。やりすぎないように注意せよ」
バレンバー様は飛行して観覧席へと戻っていった。
訓練場が静まり返っている。
注目を集めているのは合計7人。
当事者の僕、白服、バレンバー様だ。
あと四人。
デミルさん、ネアさん、ノアさん、昨日の迷宮の9年生。
だって何事もなかったように魔法を練習し始めているからね。
ちらりと白服を見るとそのままダッシュで逃げていってしまった。
そのまま魔法の生徒が魔法を練習し始めたのをきっかけに全生徒が練習し始めた。
あるものは動く的に矢を。
あるものは素振りを。
あるものたちは模擬戦を。
僕孤立してるんだど。
しばらくすると飽きたのか何故かデミルさんが剣の練習場に入ってきた。
「あの、なんでいるんですか?」
「少し練習に付き合ってあげようと思いまして」
「何するんですか?」
「簡単です。私に攻撃を当てられたらあなたの勝ち。10分間逃げ切れたら私の勝ち」
「シンプルですね」
「一応範囲を決めておきましょうか」
そう言いデミルさんは魔法で直径10mぐらいの円を描いた。
なんだなんだ?と周りの生徒が見てくる。
「ひとつ言っておきます」
剣の訓練場が静かになる。
「殺す気で来なさい。じゃないと当てられませんよ?」
「僕を殺したりしませんよね?」
「しないと思いますわ。多分」
「そこは断言してくださいよ!」
「殺しませんよ。ではいつでもどうぞ」
円から時間が書かれた光が浮かび上がる。
最初から最速で行かないとダメっぽそうだな。
「ふ!」
加速し間合いを詰める。
首を取りに行くが当たる瞬間デミルさんの姿が掻き消えた。
「おい、今のみたか?」
「早すぎて見えなかった」
「奴隷なのになんであんな早いんだ?」
「それよりもあの黒服の人」
「ああ、あれ以上の早さだろうな」
え?
僕が見えなかったのか?
一部の白服や黒服などは見えたっぽいけどそれでもデミルさんの事は見えなかったようだ。
「よそ見厳禁です」
「な!?」
後ろに向かって切ったが感触はなかった。
あと8分。
一回攻撃を当てればいい。
だったら。
黒炎を爆発的に増やし自分を中心に火柱を上げる。
「うおぉ!?」
「あっつ!」
「いきなりかよ!」
「死んでないよな!?」
周りを見渡すが煙で見えない。
突如風が吹き煙を浮く外へと飛ばした。
「正解です。攻撃が当たらないなら自分の周りごと攻撃すればいい。ですが、、」
煙が晴れたそこには、、、
「魔法を使わないと言ってませんよ?」
謎の小さい結界を体の周りに張っているデミルさんがいた。
卑怯でしょ、それ。
「残り7分を切りました。頑張ってくださいね?」
うん、無理がある。