図書館での出来事
綺麗な庭園の中、机に置かれた紅茶をすする。
「ん?うまい」
「結構甘いわね」
「私は結構好きですよ?」
談笑しながらバンレバーを待つ。
なんで平穏な生活を望んだかって?
それは騒がれたくないからだよ。
「ここに悪魔の大王がいるぞ!」とかって騒がれたらどうなるかわかったもんじゃない。
陽射しが眩しく輝き庭園の花を照らしている。
普段なら一般開放時間だったらしいのだが俺らが召喚されたせいか今日は貸切状態だ。
故に庭園近くの人間の行動がよく分かる。
庭園の奥には壁がありそこからは剣を打ち合う音が響く。
しばらくするとバレンバーと他2人がこちらにやってきた。
「デミル様、お待たせしました」
「よろしくお願いしますデミル様。私は王宮内で魔物の研究を行っております、ベラグルドと申します」
「地形学を専門に活動させていただいております、ムルヌです」
「よろしくお願いいたしますわ」
『デミル殿!聞こえますか?』
いきなり頭の中にバレンバーの声が聞こえる。
『あら?バレンバー様は上位魔法:思念話が使えるんですの?』
『様付けは不要です。少しお話があります』
『なんでしょう?』
『この二人には貴女様方を異国の貴族として説明しております。なにぶん召喚は極秘事項でして』
『分かりましたわ。後ろの二人にも伝えておきます。では、』
思念話が切れてバレンバーの声が聞こえなくなる。
「では行きましょう」
三人の教師を先頭に王城を出て隣の大きな建物に向かう。
まあ王城ほどでかくないが。
回転ドアを開けて中に入っていくと天井まで高さのある本棚がいくつも並べられていた。
あ、これは確か開発チームの佐々木って言う超読書家に作ってもらったやつだっけな?
だが図書館や王城の外見はかなり違っている。
内装はかなり似ているが微妙に違うところが多い。
「バレンバー様だ!」
「なぜここに!?」
「後ろにいるのはベラグルド様だぞ!?」
「なぜ魔物学の権威がここに!?それにムヌル様も!」
「後ろのお嬢様方は誰なのでしょう?」
「きっと高貴なお方だな」
「う、美しい」
結構有名なんだなこいつら。
ちなみ俺たちは召喚されたままの格好で来ている。
正確に言えば俺の服は悪魔の大王的ではない女性用黒シャツスーツだ。
キャラを作った時は黒シャツは同じなんだけど貴族の格好みたいな豪華なやつで、何よりキャラが男だった。
ノアとネアは双子コーデというのか、服はお揃いで少し荒っぽい戦闘服のようなものだがが二人が漂わせるオーラなのか上品に見える。
流石に大槌は置いてきた。というか、大槌を召喚前の状態、つまり転送した。
ちなみに言うと悪魔の特徴である角とかその他諸々は隠している。
カウンターに行くと綺麗な紫髪の受付嬢がいた。
「こ、これは、バレンバー様!よ、ようこしょ!」
「すまないが魔物全書一級と全地図一級を出してもらえないかね?」
「は、はい!」
受付の紫髪は超絶噛みながら奥へと消えていった。
「デミル様。この図書館を貴女様方が自由に使える様に許可を取ってあります。
魔法を使用する際は図書館地下に結界が張ってある訓練場がありますのでそちらをお使いください」
『くれぐれも上位魔法以上の魔法を使わないでくだされ!騒がれたら困りますゆえ!』
『わかっておりますわ』
「ムヌル、ベラグルド後は頼んだぞ?くれぐれも失礼のない様に」
「承知いたしました」
「お、お待たせいたしました!」
「取ってきてくれたかね?」
「は、はい!魔物全書一級と全地図一級ですね!」
「ありがとう、さて私はこれから仕事がありますゆえ失礼します」
「はい。お気をつけて」
バレンバーはそのまま図書館を退場していった。
ムヌルとベラグルドについていき本棚の間を進んで行く。
すると、中央に開けた円形の場所があり数十の席があった。
そういえばここは佐々木がこだわって、こだわり抜いておいや机の配置だったな。
どの席に座っても落ち着ける様に配置されており超静かだ。
ちらほらと学生もおりめっちゃ厚い本と大量のノートを相手に格闘している。
違う色の制服を着ている学生もいるがどうやら色違いの同じ制服の様だ。
AD.worldに学校は作っていなかった気がする、、
だって必要ないしね。
「あの学生は?」
「ああ、王都の中にある学校である魔剣学校の生徒ですね」
「なぜ魔剣なんですの?」
「魔法士と剣士、だったと思いますよ」
「ではなぜ色の違う制服を着ているのですか?」
「気付かれましたか。あれはですね優秀順に身分分けがされるんですよ」
「身分分けですか?」
「はい。判断基準にはLv・職・ステータス基礎値・実際の身分・成績や功績で判断されます」
「見ればわかると思いますが、黒・白・紫・赤・青・緑の順に校内での身分が高いのです。
それぞれ、王・貴族・騎士・商人・平民・奴隷の様に分かれています」
「そうなるといじめ等の問題が発生してしまいますが?」
「大丈夫です。そこはしっかりと監視しています。まあ、たまに派閥問題が起こるのが問題点ですかね」
「そうですか」
「ネア様とノア様は質問はないでしょうか?」
「私は大丈夫よ」
「私も同じです」
「そうですか。では始めましょう」
5人掛けの席に座り授業が始まる。長くなってしまいそうだ。
まあ結果は上々だった。
予想通りAD.worldの中に存在した国は見当たらなかった。
が、地形や気候、魔物の種類や生息域は何も変化なく問題もなさそうだ。
ムヌルとベラグルドたちの話はわかりやすく有名なのも頷けるものだった。
俺はいま、一人で図書館にいる。
何故ならムヌルとベラグルドは仕事で帰り、ネアとノアは王城内の貸してもらった部屋に帰って行ってしまったからだ。
次は魔法の確認をしよう。
誰にも見えない様に中級魔法:本検索を発動し魔法が書かれている本のところに向かう。
通りすがりに緑服の男子生徒が飛び出してきた。
「ご、ごめんなさい!」
「大丈夫ですよ」
「し、失礼します」
なんかいじめられてそうな予感。
ばれない様に中級魔法:消音を発動して後をつける。
大きな階段を下っていき地下空間に出る。
ここがバレンバーが言っていた結界が張ってある訓練場か。
数名の生徒や魔法士が本を片手に魔法を使っている。
端のほうに白と紫の制服の集団を発見した。
一人だけ黒がいる。
あれが派閥ってやつか。
緑学生はそっちの方向に怯えながら行った。
消音を解除し一般人に紛れ込んでいく
「お!キタキタ〜!こんにちわ〜!僕たちの奴隷く〜ん!」
「はははは!!」
「なんでまた僕を、、、」
「生意気なんだよ!」
「ぐはぁ!!」
体格のいかつい紫学生が緑学生に蹴りを入れる。
うわぁ、いったそ!
周りの生徒や大人は完全無視だ。
えげつねぇ。
「ヌッソール公爵家の次男であるサンディー様の前だぞ!奴隷は這い蹲っていろ!」
「きゃはははは!」
「ちがいねぇ!」
成る程。
大貴族の子供ってわけか。
だから誰も注意できない。
この状況はあまり好きではない。
止めに入ろう。
「やめたほうがいいと思いますよ」
サンディーくん派閥の方向に歩いていき緑学生を介抱する。
「あ?なんだと?」
静かになる訓練場。
誰もが思った。
不味い、と。
「サンディー様は中位魔法をも使いこなす学園の中で最強の方だぞ!その方には向かうのか!」
『『そうだそうだ!』』
「待て貴様ら」
『『っは!』』
「どこの誰だか知らないが僕には向かうとはいい度胸だな」
「井の中の蛙大海を知らずって言葉ご存知で?」
「知らないな」
「小さい所で強くとも世の中にはそれ以上に強いものが何人もいるのにそのことに
気づかない者のことを言うんですよ?」
「なんだと?」
「あなたはまさに井の中の蛙です」
「やめて下さい!」
おお!?まさかの緑学生からストップがかかったぞ!?
まさか俺を幹添えにしたくない感じか?
「私の心配は結構ですわ」
「言うじゃないか。やれ」
緑学生を抱えて後退する。
すると派閥の全員が魔法を発動しようとしたり剣を抜いたりしている。
入り口に緑学生を置いて元の所に戻る。
「先ほどの言葉。そのまま返してやろう」
総勢30人。
俺がやるともろくて(自分の攻撃力が高いだけ)死にそうなので悪魔でも召喚するか。
「中位魔法:『下位悪魔召喚』」
魔法陣から一体の下位悪魔が召喚される。
「下位悪魔!?」
「貴様!召喚士だったか!」
「総攻撃だ!」
下位悪魔の爪による攻撃を二人の学生が抑える。
「く!」
「強い!」
その隙を突き一人の学生が剣で切り裂く。
なかなかの腕だ。
「どうだおらぁ!」
が傷は深くなく|すぐに再生する。
それなのに下位悪魔は後退してきた。
「なんで後退した?」
「グギャラ」
「っち」
こいつは使えない。
「下位悪魔。こっちむけ」
こちらを向いた下位悪魔の胸を貫く。
「ギャァァァ!!!」
下位悪魔は死亡し俺のLvの一端となった。
「っな!?」
「一撃だと!?」
「しょうがない。上位魔法:『下位悪魔騎士召喚』
紫の魔法陣が現れ下位悪魔騎士が現れる。
その時の反応といったらもうびっくりするぐらい怯えていた。
奥で成り行きを見守っていた者たちでさえも恐怖で漏らしていた。
ただ一人、サンディーだけは恐怖はしていたが貴族の意地なのか踏ん張っていた。
「っく!?貴様、、何者だ、、、」
「簡単に言えば、、そうですねデミルという名前のこの国の軍事協力者です」
「軍事、、協力者だと?」
「君のお父上や兄上にでも聞いてみればいいんじゃないんですか?ではごきげんよう」
「何をやっているんですかぁぁ!!!!」
下位悪魔騎士を送還しようとしたバレンバーが突っ込んできた。
「いじめを止めたんですの」
「そうじゃなくて下位悪魔騎士です!下位悪魔騎士!」
「そこの蛙に下位悪魔を差し向けたら下位悪魔が怖気ずきましたので下位悪魔騎士を出しました」
「上位魔法以上の魔法使わないでくださいって言ったではないですかぁぁ!!」
「上位魔法!?」
「そんな魔法が使えるのか!?」
「う、嘘だろ、、」
「とりあえず帰りましょうデミル様」
「わかりましたわ」
下位悪魔騎士を送還しバレンバーについていく。
「ひ、ひぃ!」
あ、緑学生にまで怖がられた。
「君、、」
「な、なんでしょうか!!」
超位魔法:『超位魔法道具作成』と言う魔法を発動する。
「な!?その魔法は一体!?」
「驚かないでください、バレンバーさん。ただの超位魔法ですよ」
「ちょ、超位魔法ですと!?」
透明な水晶がはめられた指輪が作られ手のひらに現れる。
「君にこれをあげる」
「な、なんですかこれは」
「そうだね。危険を感じた時にこの指輪に魔力を通しなさい」
「わ、分かりました」
「では、ごきげんよう」
超位魔法といった瞬間から固まったバレンバーを置いていき外に出る。
外は暗くすでに夜になっていた。
「デ、デミル様!あの者に何を授けたんでしょうか!」
バレンバーが慌てて出てきて大声で叫びやがった。
うるせぇ。
そのまま王城まで歩きながら上位魔法:『思念話』を使い語りかける。
『これでいいですか?』
『は、はい』
『超位魔法:『倍反射結界』が発動する指輪です。護身には最適でしょう?』
『超位魔法を付与した魔法道具をあの少年に与えたというのですか!?』
『何か問題でも?』
『大ありです!あの指輪は白金貨1000枚いや、白金貨10000枚の価値があります!』
『白金貨?』
そんな設定作っとらんぞ?
AD.worldは円を通貨単位にしたからな。
この世界の設定か?
『後でお教えします!あの指輪をどうにかしなければ!』
『別にいいですわ』
『指輪の価値がバレればあの少年に危害が!』
『バレンバーさんでも破れない結界を前にして襲おうと思いますか?』
『しかしですなぁ、、、』
『それに、あの魔法道具は受けた攻撃を二倍にして反射するものですわ。
身の安全は確実でしょうね』
『分かりました、、ただし!陛下には報告させていただきます!』
『どうぞ好きになさってください』
思念話が切られ二人は黙って歩いていく。
「貴女はいったい、、」
「さぁ?ただ言えることといえば、、」
「、、、言えば?」
「悪魔の王ということですわ」
ちょっと演出ちっくに威圧の眼光を使用する。
この時ばかりはバレンバーが小さく見えた。
「行きましょう」
「、、、はい」
悪魔が去っていった。
未だ恐怖で足が震えている。
デミルと名乗ったあの人は強かった。
超位魔法。
あの女の人はそういった。
あの人数を相手にして自分で相手にせずに悪魔を出して相手にさせていた。
遊んでいたのだ。
確実に。
サンディー達がこっちに来る。
怖い。
だがあの悪魔ほどではなかった。
「貴様のせいで!貴様があいつを連れてきたからぁ!!」
サンディーが珍しく怒っていった。
「中位魔法:『重爆弾』!」
僕なんかが真似できない魔法が飛んでくる。
魔力を!
魔力を入れなきゃ!
指輪に魔力を注ぎ込むと半透明な黄色い結界が張られた。
サンディーの魔法は結界に当たると急にその魔力が増大した。
そして跳ね返っていった。
「なぁ!?」
サンディーはとっさに避けたが派閥の取り巻き達は諸に食らってしまった。
「うわぁぁぁ!!!」
「手がぁあぁあ!!」
「痛い痛いよぉぉ!!!」
腕が火傷を負い使えなくなった者。
背中が焦げた者。
様々な負傷者が生まれた。
彼は恐ろしく感じた。
と、同時にこの指輪を作ったあの女の人に憧れを感じた。
「何をした!」
彼はとっさに逃げ出した。
図書館を抜け出し王都の大通りを走る。
彼は平民の産まれである。
小道に入り自身の家にとっさに入る。
「はぁはぁ、ははははは、、」
とっさに笑いがこみ上げるがすぐに引っ込んでいく。
「お兄ちゃんおかえり!」
まだ4歳の妹が抱きついてくる。
「はは、ただいま。お母さんは?」
「いまごはんのしたくしてるの!」
「そうか。よしよし」
「へへへ」
玄関から自分の部屋に上がり制服を脱ぐ。
ベットに寝っ転がると何故だかウトウトしてきてそのまま意識は落ちていった。
魔物!
大鬼・・・人型に近いツノの生えた魔物。
人間ほどの知能があるが魔法は使えない。
髪の色が肌の色になる。
ツノが多い方が強い。
動死者・・・墓や屍体が埋められている場所に発生する魔物。
主に火葬や鳥葬がされず屍体のまま放置や埋葬された人間が
魔素の影響を受けて魔物化すると出てくる。
腐ってるのもあるし腐っていないのもある。
動死者王・・・動死者が生前に恨んでいる人物がおり
その恨んでいる人物が同じでありなおかつ500人を超えると
その恨んでいる人物を殺すために大量の動死者を発生させ
街などを襲う魔物。
再生能力が異常でそれなりの知能がある。
今回はここまで!