騎士団長の生活と家出
わーい。本日二個目だぜ。
ちょっと長めです。
〈某日:王国内のある街にて〉
五人の男女が冒険者組合の中へと入っていく。
冒険者パーティー『家出』は今日も絶賛儲かり中であった。
「いい以来だったね」
「そうだね、リーダー。ナナさんもありがとうございます」
「そんなに畏まらないでくださいよ」
「僕も感謝してる」
「ミリーもなんか言えば?」
「え!?うん、あ、と、ありがとうございます」
「うん?なんでミリーはそんなに敬語なの?」
「あっと、感謝してるから?」
「大丈夫だよ。もう僕たちはBランクになったんだしチームとしての連携も出来てきたしね。改まる必要なんてないよ」
そんな話をしながら彼らは組合を出て行った。
その時、一瞬だが空間が歪み一つの指輪と紙ががナナさんと呼ばれた少年の手に落ちてくる。
それをつかんだ少年は指輪を見て絶句した。
曰、結婚指輪にどうぞ。と紙には書いてあるがそこは問題ではない。
その指輪の名は『八色竜の吐息指輪』
1日に一回各属性のドラゴンブレスを放つことの出来る超位魔法に匹敵する指輪である。
こんなの渡してどうすんだよ、おい!
と思った彼だった。
〈同時刻:バレアルス王国王城〉
近衛騎士団団長バストロ・デカルスは護衛任務の為、タフィニーニャ王女殿下の自室へと足を急がせる。
殿下は自身の通りいかないと癇癪をお持ちでいらっしゃる為、少しでも自分の予定が狂うとかなりのとばっちりがメイドの向いてしまう。
その為、自分が入る時間も定刻どおり一分一秒違えずノックをする。
「王女殿下。バストロでございます」
「入りなさい」
「っは!失礼いたします」
扉を閉めて最敬礼。
現在王女殿下は朝食をお取りになっている。
朝食が終わると殿下は席を立ち上がり外へ出る。
それに追従し、扉をそっと締める。
「バストロ」
「なんでございましょうか、王女殿下」
「今日の予定はちゃんと頭に入れてきたわよね?」
「っは。本日は魔剣学校にて授業のあと組合により先日ベルダティヤにて起きたゾンビ騒動の情報確認、そしてベルダティヤにて誕生した『聖剣の乙女』について教会に赴く予定であったかと」
「正解よ。では行きましょう。いつも通り貴方は校門より中に入ることは禁止いたします」
「分かりました」
殿下についていき殿下の乗った馬車の御者と同じ場所に座る。
馬車が進み始め王都の中を進んでいく。
馬車に刻まれている王家の紋章は民衆に対し絶対な力を持つ。
その為道は開け、まるで英雄の帰還のような状態になっている。
数分もすると魔剣学校が見えてきた。
校門の前で馬車が止まり扉が開く。
「行ってらっしゃいませ、王女殿下」
「あ、そうだ。あのミイマという短入生について調べておいて」
「っ!?承知いたしました」
ミイマという短入生、つまりはデミル殿のことを言っているのだろう。
(どう説明すればいい?四公爵や召喚に関わったもの以外全員デミル殿の存在は知るはずがない。いや、確かムヌル殿とベラグルド殿、そしてフォースト公爵の子息と『黒炎』という冒険者が知っていたはず。それよりもどう説明すればいい?うまく思い浮かばん!ここバレンバー殿に協力を、、、、)
『バストロ殿ですかな?バレンバーですが、、』
九死に一生を得た思いでバストロは思念話に応じる。
『バレンバー殿!相談がございます!』
『な、なんでしょうかな?』
『デミル殿のことを調べろと王女殿下に命令されたのです!どうお伝えしたらいいか、、、』
『そうですな、、、デミル殿は実は異国の貴族でその国は小国だが一子相伝の秘術があり、その継承者がデミル殿で、その護衛がネア殿とノア殿である。なんていうのはどうですかな?』
『ありがとうございます!!それにいたします!それで、なぜ私に『思念話』を?』
『それはですな、先日ベルダティヤにて起こった騒動でゾンビキングの発生が人為的なものである可能性が高まっておりましてですな』
『っ!?』
『実際にゾンビキングを発生させたと思われるものはすでにデミル殿が倒しておるようでして、、それと二つほど警告を』
『なんでしょう?』
『聖剣の乙女に話を聞くのは良いですが冒険者組合に対しては注意を払っておいていただきたい。そしてもうひとつ。これが本題だと言っても過言ではありませんが、、今回の事件はあの『死竜の叫び』が関わっている可能性がありまして、、』
『あの『死竜の叫び』ですか!?』
『死竜の叫び』それは王国やその周辺の帝国や法国を拠点に活動していると思われる秘密結社であり、これまでに引き起こしアンデット事件のほぼ全てがこの組織のものであると考えられている。
『本当なのでしょうか?』
『まだ決まったわけではないですが一応留意しておいてください』
『分かりました。それでは』
『思念話』が切れて意識が周りに向いていく。
「バストロ様?如何されましたか?」
「なんでもない。私は少し王都を見回る」
「分かりました。ではここでお待ち致しましょうか?」
「いや、王城に戻れ」
「分かりました」
御者と分かれ魔剣学校沿いの道を歩いていく。
学生がちらほらと学校へと歩いていく。
中には私を知っている生徒もいるのか、頭を下げてくる生徒もいた。
恐らく頭を下げる生徒は私のことを強者と思っているに違いない。
彼は、本当に強い者を知らないのだろう。
そのまま貴族街、平民街、大通りを歩いて行き遂には貧民街に着いた。
この王都もそうだがどの国にも一つや二つは貧民街が存在する。
冒険者の両親を亡くした孤児や借金から逃げてきた者、理由は様々だが大抵事情を抱えている者しかここにいないのだ。
平民街や他の場所と違い犯罪者が多いため、清掃が行き届いておらず少なからず異臭や血の匂いがする。
座っている物乞いの目はギラついており隙があれば他の物乞いとともに私を襲おうと考えているのだろう。
物乞い達を無視して貧民街の更に奥へと入っていく。
すると、不意に殺気を感じ飛んできたナイフを剣で弾く。
「へへへ。どうやら本当に近衛騎士団長様でいいみたいだな」
「何者だ?」
「さぁ?なんでしょうね?」
「どうやら他にも数名“お客”がいるようだな」
「ばれましたかい?さあ、どうします?」
「抵抗さてもらおう」
「では、死んでも恨まないでくださいよ?」
後ろからナイフが飛んでくる。
瞬間的に襲撃犯、暗殺者がいる方向にナイフをはじき返す。
「っな!?」
ナイフをはじき返された暗殺者は驚きを隠せずナイフに刺されそのまま死んでいった。
(暗殺者にしては練度が低い。こいつら、一体何者だ?)
「さすがですね。そいつは入ったばかりの新人でしてね。貴方を相手獲ることができるほど強くはないんですよ。しかし、さすが騎士団長様だ。さっきから空気がピリついてますよ。この国最強の戦士というのは伊達じゃありませんね」
「っふ。お前は知らない側でよかったな」
「どういうことでやんすか?」
「この世には誰も届かない高みがあることをだよ!!」
斬りかかる。
「へへ。そんなの当たりませんぜ!」
「自分の体を見てから言ってみろ」
「へ?」
「通常の飛斬より威力を抑えた飛斬を使いながらの間合い潰しだ。基本中の基本だが、お前も捨て駒だったようだな」
通常飛斬は中距離用の攻撃方法だ。
だがそれほどの威力を出さずに最小限に抑えることで近距離の切断力が上がり間合い潰しも行える。
「かはっ」
全身から血を吹き出し死んでいく暗殺者。
「終わりだ」
彼にいたぶる趣味はない。
なので首をはね早々にケリをつける。
「さて、出てこないのか?」
「やはりばれていたか」
「貴様が本命だな?雰囲気が違う」
「その通りだ」
「信用はしてないぞ?」
「当たり前だろう。暗殺者を信じる馬鹿など本当の馬鹿か、頭が湧いているアホだけだ」
「ま、貴様もここで撃退してやろう。素直に捕まってくれると嬉しいのだが?」
「それはない」
「ま、当たり前だな」
投げられたナイフを避けそのまま斬りかかる。
「その手品はさっき見た。よほど近距離でもなければその攻撃は当たりはしないぞ?」
「飛斬しか使えないとでも思うのか?」
七段剣術:十閃乱舞を使う。
一振り一振りが十つの斬撃に分かれ暗殺者の体をだんだんと傷つけていく。
「っく!」
「今投降するなら命は助けてやるぞ?」
「すると思うか?」
「するとは思えないな」
七段剣術:瞬閃を用意する。
「道づれだぁぁ!」
「残念だったな」
「へ?」
首が転がる。
知覚不能な一瞬の刃が暗殺者の首を刈り取ったのだ。
「さて、そろそろ戻るか」
剣をしまいそのまま貧民街を出て行く。
返り血は浴びていない。
暗殺者も派遣した者たちが片付けるであろう。
暗殺自体はこの国では取り締まれていない。
何故ならこの国の王族である国王にも懐刀として暗殺部隊があるからだ。
そして暗殺者に対しての攻撃も制限されてはいない。
命の危険があるときに攻撃手段を制限される方がばかけているのだ。
大通りに戻り王城の方向へと戻っていく。
周囲は賑わっており数多の露店が並んでいた。
人を殺すことは慣れている。
だが、、、
「本来は慣れてはいけないものなのだがな」
そんなことを考えながら歩いているとあっという間に王城へと着いた。
「近衛騎士団長バストロである」
「っは!ではどうぞ!」
もはや門番とは顔見知りである。
建前上は私が上司だがたまに酒も酌み交わす中だ。
「どうした?何かあったか?」
「ん?ああ。貧民街で暗殺者3名に襲われてな」
「それは災難なこって」
「まあ今度酒でも飲もう」
「その時は一杯おごってくれよ?」
「わかったよ。しょうがねえな」
「じゃあな」
「おう」
門番と別れ王城の中に入っていく。
まず見えるのは大量の馬車の停車場だ。今日はあまり馬車が集まってはいない。
確か今日は重要な会議はな買ったはずだ。
だが数が少ないというだけでその馬車そのものは高級で、恐らく宰相や各大臣のものであろうことがわかる。
「さてと、副団長は今訓練場だったか?」
近衞騎士団副団長シェリル・ガルリーシャ。
近衞騎士団唯一の女性騎士であり最年少で近衞騎士団へと入った天才。
才能だけであればバストロをも上回りジョブの差がなければ負ける試合何度かあったに違いない。
停車所の反対、庭園の都杏里に位置する訓練所には様々な設備があり、ここより素晴らしいものは耳にしたことがない。
訓練所に入り模擬戦用の木剣を掴み取る。
鎧を着たまま訓練所に入ると予想通り副団長が新米の騎士になったばかりの者たちに訓練をつけていた。
「このままで良いのか!貴様らは騎士だろう!」
「つ、次こそは一本入れさせてもらいますよ」
「私はあなたを倒すまで諦めない!!」
「さ、さすがですね!ですが私たちも成長はしているのですよ!」
「いつまでも優位に立てると思わないでくださいね!!」
「その闘志!良いだろう!少し本気を出して、、、」
「そこらへんにしてやれ」
「バストロ様!タフィニーニャ殿下の護衛任務のはずでは?」
「魔剣学校内ではその人は解かれていると前にも行っただろう」
「そうでしたね!今日もやりますか?」
「そのつもりだ」
木剣を持って2mほど離れる。
「このくらいか?」
「少し待ってください。その前に、、いいかお前たち。これから行うのがこの国最強の戦士バストロ様と私の戦いだ。しっかりのその目に刻め!」
「「「「はい!」」」」
よく見ると新米たちの手には力が入っていた。
「では行きますよ!!」
木研の打ち合う音が訓練場に響く。
その速度はだんだんと早くなっていき遂には木剣が耐えられなくなり折れてしまっていた。
「うーん。やはり真剣での試合のほうがいいですね。どうしますか?」
「それがいいな。やはり木だと耐えられん」
このような会話をしているが実は木剣には耐久魔法が備わっており、簡単に壊れることなどないのである。
「す、すげえ」
「あの異常な速度の剣捌き、これでも本気ではないのか、、」
「高みすぎて理解しがたいな」
その言葉にバストロが反応する。
「君」
「何でしょうか?」
「本当の遥かなる高みは存在する。ただ認識できていないだけだ。いついかなる時も相手を侮ることはしないようにしろ」
「あ、ありがとうございます!!!」
「さて、今日は少し付き合ってもらうぞシェリル」
「わかりましたよ。全く、うちの団長殿は戦闘好きでしょうがない」
「それを言ったらシェリル様は脳きN、、、、
「何か言ったか?」
脳筋と言おうとした新米の口はシェリルの笑顔により撃沈することになる。
「よし、お前たちは一時間訓練を追加だ連帯責任だと思え」
「そ、そんなぁ!」
「ちょっとキツ過ぎますよ!」
「恨むならそいつを恨め、さて団長?始めましょう」
「お互いに、全力でだぞ?」
「わかってますよ」
そんな会話の後、模擬戦が始まりその工房は昼時まで続いき、観客がだんだんと多くなっていったりもして、結局勝ったのは団長であるバストロだった。
ただ、新米の騎士たちの体力は削れるに削れ後日全身打ち身と筋肉痛で発見されることになる。
〈同時刻:王国内某所〉
「ナナさん。その指輪なんですか?」
「見なかったことにして頼むから」
「う、うん」
「特にミリーには秘密ね?」
「うん」
「絶対だよ?」
「うん」
「わかってる?本当にわかってる?」
「うん。リーダーとの結婚式は何時頃になりそうですか?」
「あああああああ!!!」
「どうしたのナナタリー?」
「「なんでもないよ」」
「へ〜。わかっちゃった」
「ねえねえ。どういう事?」
「教えなーい」
「ねえなんなの!ねえってば!!」
「ミリーには知らなくてもいいことがと思うよ!」
「なにそれ!!ねえ教えてよ!そういうのが一番気になるんじゃん!」
(((流石に結婚指輪って言えないもんねー、、)))
「ねえってば!」
(デミルさんは気が早いんだよ!全くもー!!!!)
彼らは今日も楽しく旅をしている。
困ってる様子を悪魔が見ながら笑っているとも知らずに、、、、