戦時中の休憩
あれ?
どうして僕は胴上げされているのだろう?
元気になったミリーも混じってるしどうしてこうなったのかがわからない。
待って!
高い!
高いから!
まあいいか。
少し確認しよう。
能天使の剣が振り下ろされた時にデミルさんが目の前にいきなり現れて力天使諸共怖いくらいの威力の黒炎でぶっ飛ばした。
ここまではよし。
その後一回ミリーとその仲間達と一緒にベルダティヤに戻ったらなぜか僕が吹き飛ばしたことになってていきなり胴上げされた。
勘違いされた?
あ、領主館の上空にデミルさんがいる。
めっちゃ笑ってる。
「は、、、、、」
『『『は?』』』
「はめやがったなぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
〈領主館上空〉
「ははははは!はぁ〜。すっごい面白い」
「貴方って下衆ね」
「今更感ありますよネアさん?」
「まあそれもそうね」
「それにだ。俺たちの存在自体は機密らしいからな。ナナタリーが勝利をつかんだ英雄として祭り上げられればその分俺たちの様な召喚された存在を疑う者が少なくなるだろう?」
「確かにそうですね」
まあそれにミリーと約束した平民であるナナタリーと付き合うまたは結婚することが出来るようにする班に入る時に約束した事も果たすためもある。
勝利を勝ち取った英雄が彼氏となれば公爵自身としてもある程度自慢になるだろう。
運が良ければ爵位が当てられて結婚も可能、てところかな?
「さて、この後どうするかな」
「王都に戻るのではないのですか?」
「違う。ミリーとナナタリーについてだよ」
「どういう事?」
「彼らは俺たちの存在を知っている。あ、そういえばヌッソール君も知ってたなヌッソール君とその周りの取り巻きは魔法を使って記憶を消すからいいとして、、そういえば今回の戦争って捕虜っている?」
「いないと思いますよ?ナナタリーと天使の戦いの余波で全員死んだと思います」
「それじゃあ魔法の実験に使えないじゃないか」
「貴方ねぇ。まあいいわ」
どうやらネアさんは諦めた様だ。
それよりもナナタリー達の問題だ。
彼らは既に魔剣学校を退学済みだしもう一度魔剣学校に入るのは恥ずかしくないか?
まあそこは本人たちに任せるとするか。
「さてと。この後どうしたい?」
「少しお腹が空きましたね。どこかでご飯を食べたいです」
「今戦争中だからどこもやっていないと思うぞ?」
「あなたが帝国の切り札消し炭にしたじゃない。戦争も終わりに近いんじゃないの?」
「戦争っていうのはどちらかが降伏をしなければ永遠に続くんだよ。帝国は王国に宣戦布告をした。それで惨敗したとなったらその他の国から舐められるだろ?」
「確かにそうですね。最近わかったことですが如何やら人間の貴族達は世間体や名誉などを気にする愚かな生き物ということがわかりましたし、、、、、、、」
「いい貴族達もいるけどほんの一握りよね」
「なんで君たちそんなこと知ってるの?」
「あなたも使ってるでしょ?優秀な情報網」
「成る程、それで?如何する?」
『デミル様。少し降りてきてもらえますか?』
『なんだバレンバーか。何の用だ?』
『実は陛下がお呼びでして。今後の方針についてお話をしたいとのことで』
『分かった。どこに行けばいい?』
『先日の仮謁見室です』
『分かった』
バレンバーの声が聞こえなくなり背後から腹の虫の声が聞こえる。
バレンバーに頼んで用意してもらうしかないか。
「転移する。第三位階魔法:『複数転移』」
転移魔法が発動し景色が一瞬で移り変わる。
目の前にはバレンバーと国王、そしてスローデン公爵がいた。
恐らくスローデン公爵は四公爵の中でも頭脳派であるようだ。
ベナトリ公爵は脳筋タイプだしヌッソールは煩悩の塊。
フォーストは魔法道具にご執心だし政略に関してはスローデン公爵より数段劣る。
消去法でスローデン公爵はこの場にいるのだろう。
そう考えているとバレンバーが話しかけてきた。
「相変わらず素晴らしいですな。デミル様の魔法は。どうか教えてくださらんか?」
「お断りしますわ。できるとも思いませんし職位変えもしなければなりませんし」
「職位変え?なんですかそれは?」
「つまりは職位の中の魔法や技術をある程度極めることによって『魔法詠唱者』から『魔法師』。『魔法師』から『魔術師』へ。そして『魔術師』から『魔術師之頂』。『魔術師之頂』から『魔導師』。そして『魔導師』から『魔導師之頂』へと上位になっていきます」
実はその上の『真之魔導師』と言ういくら極めたところでつけない職や『上位魔法詠唱者』と言うちょっぴり特殊な職位があるのはいわないほうがいいだろう。
「そのようなことがあるのですか!?」
「恐らく表示されないだけでしょうね。あなたの実力は高位魔法が限界ですので『魔術師』あたりかと」
「な、成る程!」
「ですがいくら職位変えして『魔導師之頂』に至ったとしても使える魔法は限られるでしょう。後ろの二人も第三位階魔法まで使えますがすベてというわけではないのですよ」
「盛り上げっているところ悪いのだがデミル殿?少しいいかね?」
国王から声がかかり現実へと引き戻される。
バレンバーがまるで初めて勉強意欲が出た子供のようだったからつい面白くなって話してしまった。
爺なのに目が純粋すぎる。
だからと言ってテヘペロが許されるわけではない。
あれはキモかった。
そんな感じで話し合いが始まる。
主な内容は三つ。
一つ目は俺たちに軍事協力を求めた際に生じた契約にあった平穏な生活についてある程度目星がついたらしい。
ベナトリ公爵領の平穏の丘。
その上に少し広い程度の家を建てているらしく少し時間がかかるらしいので1年後となるそうだ。
その間は王宮暮らしである。
少し安直だなと思ったのは許してほしい。
二つ目は今回の戦争についての話し合い。
一応勝ったようなものなので戦勝会と言うか受勲式のようなもので褒美をもらうかもらわないか。
ぶっちゃけ言ってそれではナナタリーを英雄に仕立て上げた意味がないのでお断りした。
代わりにナナタリーくんに貴族位をあげるとのこと。
これでミリーとの約束は果たされたも同然だ。
英雄が貴族となり貴族の娘と結婚する。
いい話じゃないか。
まあ彼らが魔剣学校に戻ったらの話だけどな。
そして三つ目。
俺たちの今後の行動について。
正直何もしたくないのだが王国に何かしらの危機が迫ったら助力してほしいとのことだった。
無茶振りだ。
とも思ったが王宮図書館や王都の様々なサービスの自由使用を許可できるバッチで釣られてしまった。
だってタダ飯タダ宿タダ風呂タダ買い物だぜ?
釣られないわけないだろう。
まあ流石に限度はあるみたいだったけど。
こうして王都で謎の美少女三人組が図書館にずっと入っており図書館三姉妹と呼ばれるまでは時間がかからなかったのだがそれまた別のお話。
そんなわけで話し合いは終わった。
「そうでした。何処かに美味しいご飯を出すお店とか知りません?」
「それでしたら領主館からは遠いのですが平民街にティルト食堂という店があります。そこの焼き鳥丼がとてつもなく美味しいのですがお試しになられてはいかがでしょうか?」
何それおいしそう。
スローデン公爵がまさかそんなことを知っているとは意外だ。
「なぜそのようなことを知っているのだ?」
「実は子供の頃この街に来た時に馬車から抜け出して迷子になってしまったのですがそこの店主が気のいい人で道を案内してくれたのです。その後お礼に行ってみたらなぜかご馳走になってしまいまして」
子供の好奇心って恐ろしいね。
俺の友達も子供のころ好奇心で別の飛行機に乗ってしまって国外まで行ったていう武勇伝があるらしいからな。
どうやって乗ったかは教えてくれなかった。
「教えてくださりありがとうございます。今から行ってみます」
「少し良いかデミル殿?」
「なんでしょうか?」
「少し頼みごとがあるのだ」
「内容によりますわ」
「うむ。実はな帝国に行ってきてもらいたいのだ」
「目的はなんです?帝都の壊滅とかでしょうか?」
「違いますデミル様!どうしてそうなるのです!?」
「陛下が提案なさろうとしているのはなぜ帝国が王国み攻めてきたのかの調査ですよ」
「理解しましたわ。では失礼いたしますわ。第三位階魔法:『複数転移』」
もう一度景色が移り変わると目の前に見えたのは胴上げされて疲れ切ったナナタリーの背中とその隣に座るミリーの背中だ。
何やらものすごくいい雰囲気なのだが邪魔しないほうが良いのだろうか?
中級魔法:消音・下位魔法:気配殺し・中位魔法:透明化を発動しそのまま眺めてみる。
幻影魔法を使って姿を魔剣学園にいた時のような少女の姿になる。
『何やってるの?』
『ミリーとナナタリーがとてもいい雰囲気』
『早く行きましょうよ』
「っち」
「あんた舌打ちしたでしょ?」
「いいや?あとお前らも幻影魔法使って姿変えろ」
ナナタリーくんに近づいていく。
お話の内容はどうやらミリーがどっかいっている間に何があったとか俺が栄光を押し付けたとか言ってた。
まあいわゆる愚痴だね。
そういえば思い出したのだがミリーは未だに俺たちのことをミイマと思っているらしい。
ナナタリーは図書館でバレンバーがぶちまけたから知ってるけどミリーの中での俺たちは少女なのだろう。
ぶっちゃけ正体バラしてもよくね?と思ったのだが一旦保留にする。
「ナナタリー、、」
「何ミリー?」
「あの、、、、、
「お久しぶりでーす!!!!」
「「うわぁ!?」」
幻影魔法以外の魔法を全解除して驚かす。
さすがにびっくりしてくれただろうか?
「手柄押し付けやがってこの野朗!」
「模擬戦しますか?」
「あ、すみません」
「よろしい。ところで君たち腹減ってない?」
「まあ空いてますけどデミルさんが奢ってくれるんですか?」
「何言ってるのナナタリー?ミイマって
「あ、それ偽名だから」
「え?」
「おごりでいいよ。誰かさんの父親に魔法道具売って金貨百五枚あるから」
「えぇぇぇ??」
「ミリー?どうしたの放心状態だけど」
「とりあえず行くぞ」
ナナタリーにミリーを任せてちょっとお祝いムードの街中を歩く。
いや、君たち?
一応まだ戦争中なんだけど?
ちゃんと警戒しておいたほうがいいと思うぞ?
ま、いいか。
「あ」
「何よ」
「場所聞くの忘れた」
「どこに行こうとしてたんですか?」
「ティルト食堂」
「それならこっちよ」
「なんで知ってるのミリー」
「仲間といったのよ。丁度組合の隣だったしね」
「少し聞いてもいいか?」
「なにを?」
「お前らこれからどうするんだ?ナナタリーは仮だが俺とパーティー組んでいる。パーティーをやめてミリーのパーティーにはいってもいいし少し面倒だが二人で魔剣学校に戻るもよし、だ。因みに戻った場合はナナタリーくんに貴族位が待っているぞ?」
「私は魔剣学園に戻る気なんてさらさら無いわよ?」
「僕もやめておきます」
「じゃあミリーのパーティーにはいるか?」
「うーん。私はそれでいいけど?」
「それでいいです」
「それじゃあティルト食堂行った後冒険者組合でパーティー変更するか」
貴族位の交渉が水の泡になったのは少し残念だが駆け落ち的なものだからまあ良いだろう。
ミリーについていくと大きめの鶏の看板が見えてきた。
すげえ焼き鳥の匂いがする。
客は外まで列んでおりワイワイガヤガヤ。
うるせえ。静かにしろ。と言いたいがそれもあまりできない。
一番後ろに列ぶと前に列んでいた客が全員こっちを見た。
「「「「「「あぁぁぁぁ!!!『黒炎』だぁぁぁぁ!!!!」」」」」」」
え?