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悪魔の大王による異世界放浪〜弓と魔法で切り抜けろ!〜  作者: 書くのはいつも唐突に
王国編
13/26

開戦前日

少し短めです

〈三日後:バレアルス王国帝国領国境付近・要塞都市『ベルダティヤ』仮謁見室〉


「・・・よってバキスタ帝国はバレアレス王国に宣戦布告を宣言する。第12代皇帝サミルウス・ド・バキスタ。以上であります」

「ご苦労だった使者殿。して開戦の場所と日時は?」

「今回の戦は明日、ベルダティヤから北西に位置する『ノルメルスの霊廟』の近くの平野にて開戦の打ち上げが両者から放たれた時と同時に開始するとのことです」

「了解した」

「では私はこれにて」

帝国からの使者が仮謁見室から出て行く。

謁見室に無言に包まれる。

この謁見室にいるのは国王、王妃、第一王子、第二王女の王族。

そして全貴族とその側近。

最後にバレンバーと透明化し気配を消したデミルたちである。

「国王陛下。早速各領地から兵を集めなければなりません」

「し、しかし領地が遠い貴族たちはどうすれば、、」

「そうですな。まず今日一日で兵を極限まで集めましょう。領地が遠い貴族たちはそのあと第二撃用として明々後日までに兵を集めてください」

「専業騎士はどうするのです?我が国の兵は大半が民兵。専業騎士の配置にを考えなければいけません」

「それに帝国七将をはじめとする強力な敵の対策はどうするのです!」

「う、うむ」

「静まりたまえ」

一人の男の声により仮謁見室は静まり返る。

その声の主は戦争の総指揮者・スローデン公爵である。

その若々しい瞳からは勝利の確信が見えているようにも見える。

「此の度の戦争の総指揮者は私に決まった。それは三日前の会議で決定済みであり国王陛下直々に決められたことだ。反論は許さない」

「スローデン公爵閣下、一つ質問をよろしいですか?」

「メルドンス子爵か。なんだ?」

「今回の戦争の戦力はどの程度必要であると考えておられるのですか?」

「そうですな。騎士二千・魔法師千五百・民兵三千・合計六千五百ですね」

「そんなに集まるのですか?」

「それについてはバレンバー殿から」

バレンバーが一歩前に出て貴族たちを一瞥する。

この魔法使いの瞳は生きているが顔は窶れており貴族たちの顔には不安がある。

「悪魔を召喚いたします」

その発言に仮謁見室の国王・バレンバー・スローデン公爵以外のすべての『人間』が驚愕する。

悪魔をそれほど大量に召喚するなど無理だ。

戦後の悪魔の処理はどうするのか。

などと貴族たちから不満の声が上がる。

「ひとつよろしいか?用意する戦力の中で召喚する悪魔の割合はどれくらいなのですか?」

一人の貴族が声を上げる。

「騎士・魔法師それぞれ100ずつを考えております」

「しかし、そんな数を制御できるのですか?」

「ご安心下さい。手はあります」

「それは確実なんですか?」

「はい、確実です」

その言葉にその貴族は安堵した。

貴族社会において『確実』や『絶対』などは信用できる言葉なのだ。

貴族は公共の場所などでは嘘は“あまり付かない”。

何故ならその嘘がばれた場合、一族の恥となりうるからだ。

だからこそ『確実』や『絶対』などの言葉に信頼を置いているのだ。

なので今バレンバーが確実といったことによって大多数の貴族たちは悪魔の召喚という手を容認し始めた。

が、そこに反対するものは当然いる。

「お待ちいただきたい!なぜ悪魔を召喚する必要があるのですか!確かに悪魔は強力な種族ですが帝国ごときにそのようなリスクを払うわけにはいきません!」

「ネヌータ伯爵。帝国の戦力は強大だ。敵を侮ると痛い目にあって、、、、

「ですから帝国ごときに、、、

「静かにせんか!!!」

国王の声によりネヌータ伯爵が押し黙る。

険悪な雰囲気が広がり誰もが心の中でこう叫ぶ。

(((誰か喋ってくれ。出来ればあまり関係のない方の!!)))

「敵を侮るのは愚策です。それに戦力が多く圧勝した方がのちの交渉に役立つでしょう?」

「そ、その通りですなスローデン公爵閣下」

「ネヌータ伯爵も落ち着いていただきたい」

「む、むぅ」

「少しいいでしょうかみなさん?」

スローデンの声が広がりもう一度貴族たちが静かになる。

「方針はすでに決まっています。我々貴族は明日までに自領の騎士団と魔法師団を連れてこの街まで集まっていただきたい。正直明日までに先程言った六千五百が集まるとは思いにくい。できるだけ急ぎでお願いします」

「貴族の諸君。我が国のため尽力してほしい」

国王の言葉によって仮謁見室での一時的な話し合いは終了となり全ての貴族が馬を走らせて自領へと向かっていった。

事情を知っていたら四公爵たちはすでに兵を集め終わっておりその数は騎士600・魔法師400・民兵1000というスローデンが提案した全軍の約3分の一が揃っていた。

彼らはベルダティヤの城の塀の中におり全員が整列している状態であった。

その様子を窓から眺めているのはバレンバーとベナトリ以外の四公爵、そしてデミル、ネア、ノアの7人であった。

「しかしよくここまで集めましたわね」

「当然です。我らは公爵ですので」

「それよりも貴様!謁見の時は我慢していたが四日前のあれはどういうことだ!」

「私からもなぜ吾が家の秘密を知っていたのか教えていただきたい」

「ヌッソール公爵殿が言っていることはよくわかりませんがフォースト公爵殿の質問にはお答えしましょう」

その時デミルの体を魔法が包みフォースト公爵が知る人物へと変わった。

その者の名はコンドウである。

「っな!?」

「まあこういうことです」

「なるほど。そういうことでしたか」

「私の質問に答えぬか!」

「落ち着いてくださいヌッソール公爵殿。ただ一時的に大事な者を麻痺させただけですよ。明日には治るはずですわ」

「貴様見たいのが軍事協力者とは、、ぐぬぬ」

「それよりもベナトリ公爵殿を参戦させなくてよかったのですか?」

「ああ。それなら大丈夫です。ベナトリ公爵殿は前進しか言いませんから」

「苦労していますね」

公爵とバレンバーはそのまま城の外へと出て行った。

三名の悪魔は何かをつぶやきそのまま姿が消えた。

そして両国は本当の恐怖を知ることになる。







〈その頃:王国領『ノルメルスの霊廟』近くの街。サランにて〉

串焼きを持った四名の若い男女が街を鼻歌交じりに歩いている。

彼らは最近冒険者になった者たちで構成された冒険者パーティー『家出』である。

由来はなんとそのメンバー全員が家出組だからである。

サランで依頼を達成し報酬をもらった彼らは打ち上げとはいかないが全員で串焼きをかって食べている。

彼らはすっかりこの街で有名になった。

その理由はまだ子供で目立つのとバランスが悪すぎる編成だからだ。

盾二人、槍一人、回復職一人。普通ではありえない組み方なのだ。

そのくせに平均よりかなり早く依頼を終えるのでその効果も重なって有名になっている。

彼らはまだCランクというこの世界の冒険者の平均の強さだが子供でこのくらい強いというのはあまりない。

彼らは串焼きを持ったまま組合に入っていった。

中は混雑しており昼にもかかわらず銀貨一枚で飲める酒を大量に飲んでいる冒険者もいる。

彼らを気遣う様子も無く冒険者たちはそれぞれの目的を果たす為に行動している。

その中で噂話が一つ。

本当なのか嘘なのかはそれを聞く者が判断するのだ。

「実はな、王都で最小年のBランク冒険者が生まれたらしい」

「まじか。元々の最年少は何歳だっけ?」

「確かに17だったな」

「で?今回は何歳だ?まさかの14だとよ。頭おかしいだろ?」

「それ本当だとしたらものすごい才能持っているよな?」

「しかも試験管を全員倒しちまったらしい」

「なんだそれ?流石にそれはないだろ」

「そうだよな〜。それでそいつ、今この街にいるらしいぜ」

「見つけたら可愛がってやるか」

その話を聞いた『家出』の一人の女性が噂をしていた男に近よるがその行動は途中で寸断されることになる。

サランの組合支部の支部長が青ざめた顔をしながら組合二階の支部長室から降りてきた為だ。

支部長の言葉を聞いた冒険者たちは言葉を失うことになる。

“帝国が、王国に宣戦布告をした”

その言葉を境に王国出身の冒険者たちは次々にベルダティヤに向かい帝国出身の冒険者は帝国へと向かっていった。

「な、何が起こって、、」

「戦争だ!戦だ!」

「ベルダティヤには彼女がいるんだ!どいてくれ!」

次々に冒険者たちはいなくなり支部の中にいる冒険者は『家出』のメンバーとローブを被った一人の剣士以外誰もいなくなった。

ローブの剣士はそのまま彼らの横を通り過ぎ組合を去っていった。

『家出』のメンバーは相談を開始した。

「どうするの?」

「僕は正直かかわらない方がいいとおもう」

「リーダーの意思に沿って俺は動く」

「私は関わりたくないかも」

「ミリーはどうする?」

「リーダー?どうした?」

ミリーと呼ばれた少女は頭を抱えて悩んでいた。

本来パーティーの事を考えていれば戦争に関わらないのが最善の手だ。

実際に冒険者は戦争時にどちらの国に加担してもよく参加しなくても良いという協定を各国の間で結んでいる。

が、『家出』の名のとおり彼女らには家族がいる。

ミリーという少女の脳裏に一人の少年の姿がよぎる。

重い口を開けて彼女は言葉を発する。

「『家出』は戦争に参加しない」

「そうか。じゃあ今すぐにここを、、、」

「でも冒険者ミリーは戦争に参加する」

「っな!?」

「ミリー!正気!?」

「やめたほうがいいと思うよ」

「でも私はいく」

彼女の決断に『家出』の他のメンバーは黙るしかなかった。

彼女を止める事はできないとわかったらしい。

ミリーは無言で組合支部を出て行った。

その後を追いかけるように『家出』もでていきついに支部はもぬけの殻となった。











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