行動と天使召喚
水の流れる音で目がさめる。
星空が綺麗で少しの間眺める。
王都を離れて1日が経った。
生活していくために冒険者組合という団体に加盟して今は馬車を護衛する依頼の最中だ。
冒険者組合は10歳以上の冒険者が何万人も入っている団体で加盟した冒険者は一般依頼やクエストをこなし組合から報酬を受け取り生活している。
隣には年が同じくらいの男女3人。
この依頼を受けるときに冒険者になったばかりの人を集めてパーティーを作った。
10人までがパーティーで30人までがクラン、31人からギルドと呼ばれるようになるらしい。
冒険者にはランクがあり魔物のランクと同じように特SS・SS・+A・A・+B・B・C・D・Fがある。
みんな最初はFなのだが試験があり一定の基準を満たしていると判断されれば最初からBとかCとかの人もいるらしい。
私は14歳でまだ子供だ。
経験も浅かったためDを最初に決められた。
登録したら組合カードと呼ばれるものを渡されそこに名前・ランクが書いてあった。
このカードは各国の門などを通れる身分証にもなるらしい。
カードを眺めながら起きる。
依頼人の馬車は比較的安全かつ護衛のしやすい道だったため私達Dランクでも請け負っていいと判断されたらしい。
今は夜になったため道の脇にある野営地で休んでいる。
この野営地は他の冒険者も利用するため比較的襲われにくく安心して寝れる。
依頼人と馬車は少し離れたところで他の商人と色々話していから今はすることがない。
同じパーティーの子が起きたようで私と同じように空を眺めている。
起きたのは14歳の女の子で名前は確かリリアだった気がする。
「ミリー」
「何?」
「どうして冒険者になったの?」
「ちょっと生活に困っちゃってね」
「そうなんだ」
「リリアはどうして?」
「私も同じ理由。家があまり裕福じゃなくて」
焚き火だけがキラキラと輝いている。
その光が私の服を照らす。
制服は捨てた。
少しだけあったお金で冒険者の装備を買ったのだがあまりいいのはなく革の胸当てがせめての防具だ。
槍は私のそばに置いている。
この槍がたった一つの武器だ。
私は前衛でリリアは後衛も回復魔法使い。
後の男の子二人セドリックとチェイスは盾使いで兄弟らしい。
この三人を見ていると魔剣学校のことを思い出す。
ナナタリーは元気かな?
多分私のことはお父様が退学ということで学園に説明しているだろう。
ナナタリーなら屋敷まで飛んできそうだ。
ミイマもネーアもアーノもなんだかんだ言って優しくて強い人達だった。
目から涙が溢れる。
「どうしたの?大丈夫?」
「なんでもない。ごめん。お休み」
寝て忘れよう。
多分もう会えない。
ナナタリーは強くなっていくだろう。
黒服になって騎士団にでも入ってしまうかもしれない。
寝よう。
寝よう。
でも寝れない。
涙が溢れてきて寝るのを邪魔する。
リリアがこっちに来て抱きしまてくれる。
「何があったかは知らないけど多分ミリーは悪くないよ。ゆっくり休んで方がいい」
休めるわけないじゃん。
そんなこと言われたら余計泣いちゃうよ。
そのまま私は寝てしまった。
「・・て!・きて!起きて!」
「う〜ん?」
「あ・さ・だ・よ!!」
「いや昼だと思うな僕は」
目をこすりながら起き上がるともう太陽がかなり上まで登っていた。
あれ?やばくない?
「まったくもう!起き上がる!」
リリアに脇を掴まれ起こされる。
槍を渡され依頼人のもとに走っていく。
「すみません!寝坊しちゃって!」
「いいよ別に。あまり急いでないしね。では出発しようか」
「「「「はい!」」」」
どうもナナタリーです。
今目の前に大人が数人転がっています。
なぜかって?
それを説明するためには少し前に遡らなければいけない。
僕は両親に僕が決めたことを話した。
デミルさんは手伝ってくれるといったがいつまでも甘えるわけにはいかない。
父さんはとても怒った。
だが母さんは賛成してくれた。
父さんがなぜ?と聞いたら母さんがものすごく恥ずかしいことを言った。
『惚れた女を離さないのはあなたも同じでしょう?』だって!
妹は横で呆れていた。
とりあえず父さんはその一言で撃沈し僕は魔剣学校を退学した。
で、効率よく探すために冒険者組合に入ろうと決めたのだが試験で盛大にやらかした。
試験管を倒してしまったのだ。
そのあとは先輩冒険者に可愛がられることになったのだが威力が強かったのか全員倒してしまった。
それが30分前の惨状。
因みにデミルさんやネアさんとノアさんは上手くやっておりあまり騒がれていない。
僕は最初からBランク、他三人はDランクから始まった。
明らかにおかしい。
組合カードを渡された時にデミルさんがニヤニヤしていたので何かしらの印象操作的なのを行ったのだろう。
デミルさんならできるから怖い。
受付の人にミリーのことを聞くとそれらしき少女が1日前にここで登録をしていったそうだ。
今は依頼を行っていると言う。
さすがに依頼内容は教えてもらえなかった。
外に出るとまだまだ明るかったので少しだけ依頼を受けることにしたのだ。
Bランクということもあり盗賊団の討伐という依頼を受けることにした。
僕は選んでいない。
あの三人が選んだのだ。
一応僕たちはパーティーということにしているのでこの依頼を受けれた。
詳しい内容は王都近くの道に盗賊が出るから撃退して欲しいということだった。
盗賊と出くわしたので戦闘が開始しその結果が目の前のこれだ。
「この盗賊たちどうします?」
「確か王都の検問所に連れて行けば報酬がもらえたはずだ。運ぶのめんどくさいし転移門開くぞ?第四位階魔法:『転移門』」
「運びますか」
王都の外壁の近くにつながっていたためすぐに検問所まで運べた。
この盗賊団は結構大きかったらしく金貨20枚ももらえたので結構美味しかった。
依頼を達成したため組合に行くと受付の人にすごく驚かれた。
普通は1日で戻ってくることはないらしい。
報酬をもらって外に出ると結構暗くなっていた。
「ナナタリー。悪いが俺らはミリーを探すつもりはない」
「そうですか」
「お前の力なら大概のことはなんとかなるだろう。頑張れよ」
「はい!」
三人と別れて僕はそのまま王都を出た。
僕はミリーを見つけるまで諦めない。
絶対に諦めない。
僕は星空に向かいそれを誓った。
〈その頃:バキスタ帝国・議会の間並魔法省地下召喚場〉
7人の男女が円卓に座っている。
バキスタ帝国皇帝。サミルウス・ド・バキスタ。
そしてその側近の七将である。
七将は剣術・盾術・魔法・召喚・結界・戦術・政術のそれぞれに秀でた七人の将軍のことである。
七人の実力はバレンバーでさえ及ばないこの大陸の中でトップの実力者である。
その中の召喚将のみがこの部屋にはおらず別の場所に赴いている。
その部屋は薄暗く光っているのは円卓の中央にある洗面台のような魔法道具だけである。
その魔法道具は『監視の眼』という魔法道具である。
一度眼で見た場所を魔力を通すだけで見ることができる帝国において神の時代と呼ばれた時代の遺物である。
その魔法道具の力は超位魔法の領域であり今現在の生命では再現が出来ない帝国の秘宝の一つである。
『監視の眼』が映し出しているのは帝国の魔法省の地下召喚場である。
『監視の眼』は見るだけでなく通信も出来る魔法道具であり一人の男が七人の男女と会話していた。
『陛下。もうすぐで準備が完了いたします』
「あとどのくらいだ?」
『天使の中でも上位のものを召喚いたしますのであと15分ほどかと思われます』
「おい召喚将さんよ。もう少し早く出来ないのか?」
『うるさいな剣将。上位の天使を召喚するんだ。これでも短い方なのだよ」
「そうだぞ剣将殿。一般の魔法使いや召喚師では大天使ですら召喚できないのだ」
「それにしても戦術将は良い案を思いついたな。まさか天使の召喚とは」
「バレンバーが悪魔ならこちらは天使ということですか。確かにこの世界の上位種族ですから強力ですし魔法で制御さえして仕舞えばこちらの勝ちですな」
「バレンバーは正直言って弱いです。あの老公の使える魔法は上位魔法以下ですしね」
「魔法将さんよ。それは本当かい?」
「結界将殿安心していただきたい。事実です」
『陛下。準備が整いました』
「では開始しろ。なるべく強く大量にな」
『それでしたら魔法将をこちらに向かわせてください』
「私ですか?いいですが皇帝陛下どういたしますか?」
「行ってこい」
「分かりました。召喚将殿、すぐに行くため少し待たれよ」
『早くしてくれよ?』
魔法将はそう言い議会の間を後にした。
10秒もすると『監視の眼』に魔法将の姿が映る。
『はじめます。魔法将は魔力を全力投入してください』
『了解』
『監視の眼』に映る魔法陣が光り始める。
そこから15分間、周りの召喚師が魔力切れで次々に倒れていく。
遂に召喚将と魔法将の2名だけになり最大の光が発せられる。
すると魔法陣に100体の天使が召喚されていた。
どれも人型で純白の翼が生えている。
「私は能天使です。私を召喚せし人間よ。要件を」
「はぁはぁ。能天使殿我が帝国の願いを聞いてくれるか?」
「物によります。あなた方が邪悪を行うのであれば我々はあなた方を排除し天界に戻らせていただきます」
「隣の国であるバレアルス王国が悪魔を召喚し我が国の戦争で使うつもりだ。悪魔の強さが未知数なので助けを求めたい」
「ならば断る通りはありません。大天使並びに権天使よ。直ちに悪魔を討ち取りに行きなさい」
「待っていただきたい!能天使殿!」
「なぜです?」
「我々にも面子という物があるのです。どうか開戦後にお願いできないでしょうか?」
「いいでしょう。ですが我々は悪魔とは違い理性と正義で動きます。あなた方が悪いと判断したら私たちは悪魔を排除後あなた方も排除します。よろしいですね?」
「はい」
こうして帝国に天使が降り立った。
世界は正義と悪の戦いに巻き込まれていくことになる。