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8.

そういえばサブタイトルってあった方が良いですか?

もしよかったらコメントくださいな(*^^*)




 一瞬の出来事だった。


 道路の向かいぐらいの距離はあった筈なのに、棍棒を振りかぶったディエナが既に頭上にいた。

 もし紫乃が振り下ろされた棍棒を防いでくれていなければ、今頃頭蓋骨を砕かれてお陀仏だっただろう。戦闘に関して全くの素人の俺でもそう思わざるを得ない一撃だった。


 驚くだけで体が動かなかった。それが今の俺と彼女の戦力差だという事だ。



「主殿は下がっていてくれ!! ここは私が!!」


「ほぉ……賊のくせに中々やるじゃないか」


「なっ、私たちは賊では────」


「御託は良いから掛かって来いよ。オレが負けた時には話の一つぐらい聞いてやるかも知れないぞ?」


「くっ……」



 大きく飛び退いて構え直したディエナを睨む紫乃は、その場で刀の鞘を捨て一歩前へと勇み出た。



「……殺しは無しだ。これは”命令”だからな?

あと危なくなったらすぐに戻ってくること、怪我したら一旦引いてだな────」


「主殿は過保護過ぎるだろう……大丈夫、武士の名において負けないさ」



 過保護で何が悪い。せっかく今日買った貴重なボディーガードが潰れたら俺が困るんだよ。……なんて言える訳ないしなぁ。まぁ、紫乃が大丈夫と言ったんだ、勝算はあるのだろう。



「し、心配なのです……」


「なに、主人に嘘をつく奴隷は居ないだろう。そんな奴いたら即商館に付き返してやる」


「ご主人様はやはり鬼畜なのです……」



 紫乃とディエナの戦いは人間の領域を軽く突破していた。明らかに人が出せない超速で打ち合い、躱し、回り込み……偶に目で追えない程の動きを見せていた。……いやマジで、どんな特訓したらそんな人間離れした動きが出来るんだよ。


 紫乃は刀の峰を使って打撃に近い斬撃を繰り返し、ディエナを建物のある方へと追い詰めていく。ただ、ディエナもやられっぱなしという事はなく、紫乃の猛攻を防ぎながら攻撃の切れ目を見て大きな一撃を叩きこんでいく。


 一見互角のようにも見えるが、恐らくだが紫乃の方が一枚上手なのだろう。手数や立ち回りからしても、素人目でそう判断できた。



「その剣術……お前アズマの出身か?」


「ふっ!! ……よくご存じで。だがそれが何か?」



 戦闘の最中で何やら言葉を交える二人は、ディエナが動きを止めたのに合わせて一時中断される。警戒心を高めたまま紫乃が質問に答えると、ディエナは肩を竦めて棍棒を地面に突き立てた。



「だとしたらお前達は賊じゃねぇ。アズマの人間は誠実だからな」


「最初からそう言っている。聞く耳を持たなかったのはそちら側ではないか?」


「はは、それは悪かったな。

……そうだな、話ぐらいは聞いてやる。だがその前にアズマの剣技ってのを見せてくれよ、オレも本気で行く、それで決着だ」


「……安い挑発だが乗ってやる」



 売り言葉に買い言葉、紫乃は構えを解いて俺の方まで歩いて戻ってくると、シィの持っていた鞘を受け取って刀を収める。そして二本の内の一本を俺の方に差し出した。



「主殿。良ければ持っていて頂きたい」


「まぁそれは良いけど、一本で良いのか?」


「今から使う技は刀一振りで行うのでな。問題ない」



 本人がそう言うなら、という事で刀を一振り預かると、紫乃はくるりと翻してディエナの方へと歩いて行った。



「準備は良いみたいだな。さぁ────やろうぜ!!」



 地面に突き立てていた棍棒が持ち上げられ、勢いを殺さないまま彼女の肩に掛けられる。あれで構えているつもりなのか分からないが、先ほどよりも威圧感は増しているように感じた。


 対して、紫乃の構えは既視感があった。腰を低く落とし、刀を鞘に納めたまま腰に引き寄せている。



(これは……居合切り、抜刀術?)



 ドラマや映画で良くある剣術の一つを、紫乃は繰り出そうとしていた。画面越しにしか見た事が無かったものを、いざ目の前で見るとまた別の迫力があった。


 紫乃は姿勢を維持したままディエナに意識を注ぎ込んでいた。指の一つも動かないその姿は一種の芸術作品のような風雅さを出し、相手に気を逸らせていた。



「っ……行くぞ!!」

「いざ参る」



 ディエナが棍棒を握る手に力を込め、先ほどよりも素早い動きで紫乃に接近していく。

 しかし紫乃は動きを見せる事なく、ただ一方的にディエナが距離を詰めてくる。そして────




「────はぁっ!!」

「ふっ!!」




 ディエナに振り下ろされた棍棒が彼女の顔に影を落とすその瞬間だった。振り下ろされた棍棒の下には既に彼女の姿はなく、気が付けばディエナの背後で抜刀した彼女の姿が見られた。




「……怪物じゃねぇかよ」


「まだまだ未熟故、六連斬り(・・・・)が限度か。修業が必要だな」


「はは……とんでもねぇ奴に挑んだ……も……」



 言葉の途中でディエナはその場に倒れ伏し、彼女の持っていた棍棒は丁度十二等分されていたのだった。




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