6.
誤字脱字の報告をして下さった方、ありがとうございますm(__)m
いやー、中々自分では気付けない所ってありますからね、こうして報告して貰えて本当に嬉しいですよ(*^^*)
これからもよろしくお願いしますm(__)m
シィと紫乃を連れて歩き始めて少しの時間が経過した。その間に色々問題点が発覚した。してしまった。
最たる問題は土地勘の無さにあった。最低限の目標としては人気の無い、風雨を凌げる場所にたどりつく事なのだが、そもそもそんな場所がどの方角、どの地帯にあるのかすら分からない。奴隷少女二人に聞いても首を横に振るだけなので、この時点で手詰まりである。
そして次に問題だったのがこの二人の衣類である。
麻のワンピース一枚しか着ていないらしい彼女たちは靴どころか靴下すらも履いていない。裸足で外を歩かせるなど鬼畜の所業ではないだろうか。流石の俺だってそれは良心が痛む案件である。
細かく言えばもう少し色々とあるのだが、まぁそれは置いておこう。悪い発見もあったが良い発見もあった。
「主殿よ、この”ぽいんとかーど”なる物は素晴らしい道具だな。こんな小さい紙切れから物を生み出せるなどとは……」
「凄いです!! 何もない所から物が降ってきたのです!!」
このポイントカードを手にしてから恐らく二時間と少しが経過したため、カードには”7321Pts”と表示されていた。
どれぐらいのポイントで物が手に入るのか、ポイントの価値がどれぐらいなのかを計るために「ペットボトルの水」と告げてみると、あのポーションの時と同じように手元のカードが強く発光し、次には見慣れた形のペットボトルが落ちてきた。
ラベルこそ貼られていない透明な液体の入ったペットボトルだが、一口飲んでみるとちゃんと水だった。そして肝心のポイント消費は120Pts、これから察するに1Pts=1円なのだろう。
となればあのポーションは六百万円……むしろそれだけの金を積めばどんな傷でも治してしまう薬が手に入る訳だから、破格にも程があるというものだ。
因みに「全回復できるポーション」と呟いてみても何も出なかった。貯まっているポイント以上の物は当然だが購入できないらしいな。
一応もう二本ペットボトル水を出し、両方共120Ptsの消費だったことを確認した俺は二人にペットボトルを渡して開け方、飲み方を教えると物凄く感動された。
何でも、奴隷は主人の食べ残しを食べるのが普通らしく、手の付けられていない食べ物、飲み物を口にするのは滅多に無いとか。それは少々衛生的に問題が無いだろうか? ……奴隷だから関係ないのか。不憫なものだな、全く。
「そうだ、ついでに探してみるか」
「ん、何を捜すのだ主殿?」
「何なのですか?」
俺の言葉に興味深そうな反応を示す二人。いいねその好奇心、俺は嫌いじゃないぞ。
カードの残りポイントが”7002Pts”であることを確認してから、それ片手に「安物子供用シューズ」と呟いてみる。すると運の良い事に一発でお目当ての商品を見つけられたらしく、カードが強い閃光を放ち……閃光鬱陶しいな、収まらないのか? ……あ、収まった。一応意思疎通っぽいことは出来るのか。
「……おっ、これは良いな」
カードから生み出されたのは安物、にしては割と丈夫そうな紺色で柄の無いシューズだった。消費ポイントは2400Pts。2400円か、中々良い商品に巡り合えたな、これは。
続けざまに同じシューズを取り出して、残りポイントが”2231Pts”になった事を確認する。シィと紫乃は出現したシューズに興味津々そうだった。
「これは……履物なのだろうが……」
「見た事の無い形と触り心地の靴なのです~」
「あぁそれはお前たちが履く用の靴だからな」
「「えっ?」」
……また何かおかしい事を言ったのだろうか。ペットボトルの時と違い、今度は恐れ多いといった様子でこちらを見つめて来ていた。
「あ、主殿はご冗談が好きなようだ。こんな高級そうな靴、奴隷が貰える筈ないではないか。はは……」
「そ、そうなのですっ。きっとご主人様が私たちに触らせる為だけに出したに違いないのですっ!!」
「いやいや、違い大アリだから。それはお前たちの履く靴だって言ってるだろ?
────履かないなら捨てるぞ?」
「「は、履きますっ!!」ですっ!!」
最初からそう素直に言えばいいのに、奴隷とは結構面倒な暗黙の了解があるらしい。ただ、安物のシューズを貰って嬉しそうに頬を緩ませる二人を見るのは案外気分の良いものだ。
そういえば足のサイズは、と思いシューズを履こうとする二人に目を向けると、シューズの方からサイズ調整しているかのようにピッタリなようで────
「これはっ!! 跳ねても足裏が痛くならない!! しかも軽いっ!!」
「凄いのですっ!! まるで足に羽が生えたみたいなのですっ!!」
少々過剰気味な反応を見せつつ飛んだり跳ねたりする二人。これが街中なら「はしゃいだら危ないぞー」と声を掛けるべきなのだろうが、そんな下らない事を口にする必要がないというのは何とも気楽なものである。
これだけ晴れた日の平原なのだから、これだけ騒いでいる俺たちの所に獣の一匹や二匹が襲いに来るのでは、と身構えていたりしたがそんな様子もないので楽しそうにする二人を眺めていると、とうとうフラグ回収のお時間がやって来てしまった。
「っ……主殿、どうやら獣がつられてしまったようだ」
「わわっ、ワイルドボアが二頭ですぅ!!」
二人目掛けて地平線の先からやって来たのは二頭の大きな猪で、両方共が反り返った太い牙を携えていた。
先の尖った牙もさることながら、皮膚を覆う剛毛に強靭な四足、木の幹よりも太い胴体と威圧感のあるその体格に、更に鋭い目つきが足され正しく獰猛な獣としての威厳を放っていた。
殺られる。直感的にそう感じ取った俺は無意識の内に唾液を飲み込んでいた。だが、そんな獰猛な猪二頭に対し、紫乃は不敵な笑みを浮かべて二刀の鞘を抜き捨てていた。
「これは私の力をお見せする絶好の機会。主殿、あの二頭は私が狩ってもよろしいか?」
「あ、あぁいいけど……」
自分の背丈ほどはありそうな二振りの刀を器用に構えると、紫乃は重心を傾けて一気に駆けていく。
子供とは思えない程の身のこなしで肉迫してくる少女に戸惑いを覚えたのか、一瞬だけ動きに乱れを見せた二頭の猪だったが、すぐさま標的を紫乃に変え再度突進を仕掛けてくる。
コンマ秒単位で両者の距離が縮まる中、あと数秒で衝突するとなったその時だった。
「────はぁっ!!」
一歩に力を込めた紫乃は更に速度を上げ、一瞬で猪共の元まで詰め寄り、そして一閃。猪共は声を上げる間もなく首と胴体に別れを告げる事になっていた。
────強い。猪を狩った瞬間、俺はそう感じていた。
成り行きで買った奴隷少女が、まさかここまでの戦闘能力を有していたなど誰が想像できるだろうか。これなら彼女に俺を護衛する役を任せてもいいかもしれないな。
取り敢えず手放しにでも誉めてやろうか。いつの間にか俺より先に紫乃の所へと駆け出していたシィの後に続く形で彼女の方へと歩いていくと、そこで事件が起きた。
「……あっ」
「「あっ」」
急な加速と急なブレーキ、そして肉壁となりうる猪二匹の間を通り抜けたこの状況が生み出す現象は一つ────”彼女の起こした渦で追い風が出来る”だ。
彼女の鋭敏な動きによって不自然な風が巻き起こされ、それによって彼女の着ていた麻のワンピースを捲れ上がらせたのだ。
ここで思い出してほしいのは、紫乃たちは麻のワンピースしか着ていないという事である。つまりはノー下着、つまりはノーパンである。
「……」
「「……」」
はい、ハッキリと見えてしまいました。俺もシィも彼女の背後から一部始終を見ていた訳だからな。見えないという方がおかしいだろう。
「……紫乃ちゃん? シィは、何も見ていないのですよ?」
「……」
先ほどからまるで身動きの一つも取らない紫乃に恐る恐る近寄りながら声を掛けるシィ。ちゃっかり自分だけ逃れようとする辺り、意外と狡猾な子なんだなとつい感心してしまう。
俺もシィも彼女の真正面へと移動すると、そこには刀を持ったままワンピースの裾を押さえて顔を真っ赤に熟れさせた紫乃の姿があった。
「……見た?」
「み、見てないのですよっ!! シィは、シィは見てないのですっ!!」
うわー、コイツ言い切りやがったよ。堂々と言ってる割には視線が斜め下を向いているし、もうそれはどうやっても言い逃れ出来ないだろ。言い訳ヘタクソか。
「……主殿は?」
「……俺か?」
あぁ、何と答えるのが正解なんだ? 正直に言って謝るのか? 思春期かもしれない事を考慮して、見てないと誤魔化し切るべきか? ────うん、これでいこう。
「今は果物が食べたいな」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!!?!
恥ずかしすぎるぅぅぅぅぅぅ切腹ぅぅぅぅぅぅっ!!?!?!」
「ちょっ紫乃ちゃん武器を下ろすですっ!? 早まっちゃダメなのですぅ~っ!?」
……まぁ、何だかんだあったがこうして無事、獣との戦闘を終える事が出来たのだった。
「お願いだから忘れてくれ主殿ぉぉぉぉぉぉ~~~~っ!!?!?」
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