5.
何でも来週あたりから急激に気温が下がるらしいですね。風邪には注意しましょう(^_^;)
それはそうとポイント評価して下さった方、本当にありがとうございますっ!!
お礼に作者からの熱烈なハグを……え、要らない?
「じゃあ最後は私ね」
紫乃との約束を交わした後、最後に淫魔の女性が手を挙げて自己紹介を始めた。
「私の名前はマリー、年齢は聞いてくれない方が嬉しいかなぁ?
大体の事は出来ると思うから、よろしくお願いしますね、ご主人様?」
うーん、今一つ掴みどころのない自己紹介だな。結局分かったのって名前だけだし。
実際、名前さえ分かれば困る事は無いのだが、それは少々味気ないというか物寂しいというか……主従関係があってもそれなりの親密さは必要だろう? 今までそんな関係を持った経験はないけど。
「ま、一通り自己紹介も終わったし、俺はメノーに話をつけてくるから。お前達はここでもう少し待っていてくれ」
俺がそう告げると三人共首を縦に振っていた。聞き分けが良くて助かる、これで反抗するような手の掛かる奴が一人でもいれば、恐らく俺はメノーに難癖付けて何も買わずにこの場所を去るだろうな。俺の事は俺が良く分かっているさ。
荷台を降りると馬の世話をしているメノーの姿があった。近づくと足音で気が付いたのか、俺を見て微笑んでくる。
「自己紹介は済みましたかな?」
「あぁ。それで、ちょっとした話があるんだが。
あの黒髪の子の持っていた刀を二本買うなら、幾らだ?」
「あぁあの武器ですか。あれは銘のある武器ですので、二本合わせて白金貨2枚が良い所でしょう」
「なるほど。……あぁそうだ、あの鉱石類って合計幾らで買い取ってくれるんだっけ?」
「……まったく貴方って人は。白金貨6枚と大金貨5枚で良いですよ。でもこれ以上は上げませんからね?」
「十分だよ」
俺がそう呟くとメノーは苦笑いして荷台の方へと回り込む。
中で三人の枷を外し、馬車の外へとおろしてからメノーから刀を受け取る。その時だった。
「あぁっ!? あれは一体!?」
「「「「えっ?」」」」
マリーが驚愕の顔を見せながら俺たちの後ろ側の空を指さす。その慌てように何事かと俺も他の三人も振り返ると、そこには別段何も変わり映えのない空が映っていた。
特に目を疑いたくなるようなモノは何もない、彼女の見間違いだろうか。そう思って彼女の方に視線を向けると────そこにある筈の彼女の姿がなかった。
「あれ? マリー?」
「……あっご主人様っあそこですっ!!」
シィの指さす先を見ると、空中にマリーが立っていた。
そういえば彼女が魔族、それも夜の街を飛び交う淫魔だったことを忘れていた。であれば当然空を飛ぶための羽は持っているだろうし、滞空するなんてお手の物だろう。
「うふふ。ごめんなさいねぇ? 私はこんな所で捕まってて良い立場じゃないのよ。
────私は人を魅了し隷属する淫魔。だからこうして簡単に隷属魔法を解くことが出来るの」
そう言ってマリーは自身の右手の甲を見せながら軽く振るうと、濃くハッキリと付けられていた奴隷紋があっさりと消え去ってしまった。同じような魔法を掛ける事が出来るなら、その逆の解く事も容易だということか。中々に迷惑な話だ。
「さぁ、元ご主人様。もし私を隷属させたければ追いかけて来てくださいな?
その時は最上級のおもてなしをさせて頂きますので。それではご機嫌よう」
一方的に話すだけ話して、マリーは何処かへと翻して行ってしまった。ふむ、魔族というのは中々面倒な種族のようだ。特定の魔法に特化した種族なら、その魔法を無効化出来てしまうとは。
「主殿よ、私が後を」
「待て。別に追わなくていい」
俺から受け取った刀を握りしめて走り出そうとする紫乃を声で制止すると、紫乃は不思議そうにこちらに視線を送りつけてくる。
「追わなくて宜しいのか? 主殿が大金をはたいて購入した奴隷が逃げ出したのだぞ?」
「ああ。今からあいつを追って途方もない時間と労力を無駄にするよりは、一時的に大金を失った方が被害としては最小限だ。金は何時でも稼げるが、時間と労力は使い捨てだからな。秤にかけるまでも無いだろ?」
「た、確かにそうではあるが……」
「金を払った俺が良いって言ってるんだ、あいつの事はもう忘れろ。それより二人とも、出発するぞ」
「「は、はい」」
マリーの事を考えていても話は進まないし、何より考えていること自体が時間の無駄だ。この考え方に疑問があるのか、二人ともぎこちない反応をしていた。
と、申し訳なさそうな表情でメノーが話しかけてきた。
「誠に申し訳ございません。まさか淫魔の奴隷が奴隷紋を解除できるとは思ってもいませんでした」
「今までこういう事は無かったのか?」
「ええ。彼女の口ぶりからすれば、恐らく彼女程の実力者になれば可能なのでしょうが……それをこちらに見抜く術はありませんから」
「不憫なものだな」
「ええ、全くです」
俺の相槌に苦笑するメノーは、「して」と話を切り替えた。
「彼女の分の白金貨3枚は如何いたしましょうか?
辛うじて現金は渡せますが、それ以外で貴方様にお渡し可能な物品がございません故、あの鉱石の一つをお返しすることになりますが……」
「それは困るな。荷物になるからという理由でメノーに売ったんだ、出来れば軽くなるようにしたい」
「でしたら白金貨3枚をお渡ししましょう。そちらの方が断然と軽いですから」
こうして俺は白金貨3枚という多いのか少ないのか分からない金銭と、一癖も二癖もありそうな奴隷少女二人を購入したのだった。
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