4.
更新ペース早くないですかね……(-_-;)
どっかで更新途切れないか心配です(笑)
荷台に乗っていた三人の女は、全員が特徴的な見た目をしていた。
一人は俺と同じ黒髪黒目の和顔で、一目見ただけでは日本人だと思ってしまう。体つきこそまだ幼さを感じるが、人形のように美しいその容姿は見る人の目を奪うこと間違いないだろう。
その和顔の女の子の横に座るのは狐、いや狼のような耳を持つ少女で、隣の女の子とは対照的に可愛い系といったところだ。ショートな髪形や尻の方から生えている少し汚れてはいるがふさふさの尻尾、くりっとした目なんかが男女問わず庇護欲を掻き立てるのだろうな。
この子は多分獣人族かそういった名称の種族なんだろう、異世界では最早お決まりなのか、必ず出てくる種族である。
そして最後の一人、二人の少女の前に座る女性が一番奇異な存在だと思う。何せ頭から角が生えているのだ、明らかに人のそれとは別の何かだろう。
……いや、思い出した。確か魔族とかそういった種族だったっけ。前見たアニメのCMでそんな事を言っていた気がする。
「どうですか? どれも中々の上玉だと自負しております。
特にあの淫魔は特上ですよ。何せ初モノの奴隷ですからね」
「サキュバスか……」
淫魔と言えば女性型の魔族として有名な種族で、男性の精を糧に生きるんだっけか。中々エネルギー効率の良い生き方が出来る種族なようだ。
「それで、彼女らを適正価格で購入するとしたら一体幾らになる?」
「……手厳しいですね。獣人族の子と人族の子を合わせて大金貨5枚、淫魔は白金貨4枚ですね」
俺が吹っ掛けて手に入る金よりも合計金額は少ないようだ。であれば購入しても問題ないだろう。
「分かった。その額で三人とも買わせてくれ」
「即決ですか、豪胆な方ですね」
「適正価格で、と言っているんだから別に値切る必要も無いだろ。それとも何だ、まさか適正価格じゃない金額を提示したのか?」
「いやいや、そんな事はございませんよ。
……では購入されたこの三人と奴隷契約を結びますので、荷台に上がって貰ってもよろしいですか?」
メノーに言われた通りに荷台へ上がり、彼女たち三人の傍へと寄ると三人から刺さる程の視線を浴びせられる。先ほどのやり取りを聞いていたのだろう、その眼には好奇も懐疑も含まれていそうだった。
「奴隷契約って、具体的に何をするんだ?」
「そうですね。まずは試しに一人やってみましょうか。
この人族の子の右手の甲に手を重ねて貰ってもいいですか?」
「こうか?」
「はい。では今から奴隷契約を掛けますね」
黒髪の子に手を重ねたその上から手を添えるメノーは、俺の知らない言葉を呟き始める。それが魔法だと気づいたのはメノーの手から魔法陣が浮かび始めた辺りからで、その頃には既に右の手のひらに違和感を覚え始めていた。
魔法陣がスッと消えるとメノーの手がどけられ、俺も手をどけると黒髪の子の手の甲に紫色の紋様が浮かび上がっていた。
「これが”奴隷紋”と呼ばれるもので、奴隷契約を行った奴隷につける事になっています。本来はもう少し正規の手順を踏んで行うべきなのですが、場所が場所なだけに簡略化させてもらいました」
「簡略化すると何か問題があったりしないのか?」
「特にございません。ただ、有事の際にこちら側からの保証が薄くなるぐらいですね」
「もう少し具体的に」
「そうですね……もし奴隷が主人である貴方様に何か粗相をしてしまった場合、その責任は私たち奴隷商にございます。その際はこちら側から相応の賠償金、そして奴隷の再教育を行いますが、簡略化した場合ですとこの賠償金が少なくなり、再教育へと充てる日数が格段と減ります」
要は手厚い保険の効力が弱まる、っていう事か。だけど日常生活に支障をきたす様な制約が付く訳では無さそうだし、まぁ問題は無いだろう。
その後も今と同じ手順で残り二人と奴隷契約を交わした後、メノーの計らいで少しの間だけ交流の時間を設けてもらう事になった。歩きながら自己紹介でも構わないが、こういうのは落ち着いた場所で行うのがいいだろう。
「えっと……取り敢えず俺から自己紹介すればいいかな。
俺の名前は門倉永介、好きなように呼んでくれ。見た目通り中年のおっさんで、中身もそんなもんだと思ってくれ」
「あ、じゃあ私から自己紹介するですっ」
俺の自己紹介に続くべく手を挙げたのは、獣人の女の子だった。
「シィの名前はシィって言うです。良く子供だって言われますけどもう成人しているのです。好きな食べ物はお魚なのです、よろしくお願いしますなのですっ」
俺の方に一礼するシィは、予想通り快活そうな女の子だった……いや待て、成人? じゃあおねぇさんなのか? ……この見た目で?
「……今凄く失礼な目を向けられた気がするのです」
「では次は私が」
シィのジト目を華麗にスルーした俺は、続いて手を挙げた黒髪の子の方に目を向けた。
「私の名は紫乃。好きに呼んで頂ければと思う。
武士の身として生まれ育ったが故、多少の礼節の欠けは許して頂きたい」
やはり戦国とかその辺りの武士が存在した時代の日本人に近い雰囲気があるな。名前も思いっきり和名だし……そういう文化がこちらにもあるのであれば、ある程度の会話のしやすさがあるかもしれないな。因みに年齢は十二歳で、これは見た目通りで安心した。
彼女の自己紹介の続きを聞いていると、紫乃が何か言いたげな様子でこちらをちらちらと窺っていた。
「どうかしたのか?」
「……主殿よ、無礼を承知で頼みたい事があるのだが」
「内容によるな。言ってみろ」
「では恐縮ながら。そこに二振りの刀があるのが分かるだろうか」
そう言って首を横にする紫乃の目線をたどっていくと、確かに荷台の隅の物品の中に刀が二本立てられているのが見えた。
「……確かにあるな」
「あれは私の愛刀、奴隷落ちする際に商品として押収されたのだ。
……後生である、どうかあの刀達を私の為に買い付けて貰えないだろうか。さすれば主殿を守る懐刀として力を振るう事が出来る」
「ふむ……腕に自信があるのか?」
「村では一番の腕前だといつも父上に言われてきたが、余り他人と比べた事が無い故……ただ、野に跋扈する魔物程度なら容易く葬れると思うのだが……」
うーん、交渉材料としては少し弱い気がするが、三人を買い上げてもまだお金に余裕はあるわけだから、別に買ってもいいとは思っていたりする。ただ、いくら奴隷だとは言え武器を持たせるのは少々不安があるか……?
「……刀を買い取ってもいいが、それには条件がある。俺が良いと言った時以外で刀を使うな、これが守れるなら買い取ってもいいぞ」
「その程度の事で良いのであるか……?」
「買うこと自体は別にいいけど、もし金額があれだったらその時はあきらめてくれよ?」
「勿論だとも。こうして奴隷である私の話を聞き入れてくれただけでも十分に感謝しているのだから」
紫乃の微笑み方は、柔らかくてそして美しかった。
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