2.
投稿できる内に投稿してしまいましょう。後のことは気にしません(笑)
……更新遅くなったらごめんなさい(-_-;)
「本当に助かった。貴方は命の恩人だ」
「いやいや、そんな……」
真っ赤なポーションを飲んでから少し経過すると、彼女はさっきまでの重傷がまるで嘘だったかのように起き上がっていた。どうやらポーションの効き目が俺の常識を遥かに超えていたらしく、傷口が全て塞がり流れた分の血液も補充されたのだとか。「こ、これは神の血……」と何やら呟いていたけど、正直そろそろキャパオーバーしそうなので入ってこなかった。
「あんな貴重なアイテムまで使って頂けるとは……貴方がここを通らなければ、今頃誰にも発見されずに命を落としていた。本当に感謝する」
「いやいや、本当たまたまですって」
彼女が再度深々と頭を下げると、合わせて金色の長い髪がサラリと垂れる。血に塗れていた時には分からなかったが、艶のある綺麗な髪だった。
髪だけじゃない、彼女はその容姿も端麗だった。「血に塗れて気持ち悪い」との事で甲冑を脱ぎ、中に着ていた服も一旦全て脱いで体に付着した血や汗を、どこから取り出したのか分からないタオルで拭いた彼女は、服だけ再度着直し、甲冑を横に置いたままこうして向かい合っていたため、それを知る事が出来たのだ。
あぁ勿論だが、彼女が血や汗を拭っているシーンは見ていない……俺は紳士だからな。決して彼女の傍に大剣が置かれていたからでは無い。
甲冑を脱いで改めてみる彼女は出るところは出、引っ込む所は引っ込んでいる理想的なスタイルをしていて、世の男達を虜にしそうな見た目だった。俺から「童貞キラー」という称号を贈呈したいぐらいだ。
「命を助けて頂いたのだ、何かお礼をさせて欲しい」
「お礼なんていいですって。大した事していませんから」
何とも在り来たりな返答をするが、実際は大した事をしてしまっている事は分かっているつもりだ。何せ人命救助に近しいことをしたのだから。
しかし、ここでお礼だ何だと言って彼女から何かをされたり貰ったりするのを余り良いとは思わない。一度その関係になってしまえば、後で「何を貰った」だの「何をあげた」だのとズルズル引きずる事になるのは明白だ。ソースは俺。
「いやいや、私の種族的にもそうだが恩を返さない訳にはいかない。
……うむ、命を救って貰ったのだからな。お礼と言っては何だが貴方を主として仕えさせては貰えないだろうか?」
「……はい?」
今、彼女は何と言ったのだろうか。俺を主として仕える? はっはっは……中々パンチの効いた冗談だよ。
「そんな冗談を言えるぐらいには回復してくれて良かったよ」
「なっ!? じょ、冗談ではなく本気で言っている!!」
「……いやいや、本気で言ってるのか?」
「あ、あぁ勿論だとも。その覚悟も────」
「……良いか? 恩ってのはあんたが一方的に感じているものだ。別に恩を着せるために行動したわけじゃない俺からすれば、恩を押し売ろうとするその行為ははっきり言って不快だ。お礼ならその感謝の気持ちだけで十分だ。十分以上を与えるのは止めてくれ」
「……そ、そうか……済まない、そこまで気が回らなかったよ」
「いや、こちらこそすいません。少し荒い言葉遣いをしてしまって」
俺としてはやんわりと断るつもりだったのだが、つい熱が入ってしまったようだ。言い過ぎたな、彼女の引き攣った苦笑いがそれを示している。
だが、たとえ彼女が何と言おうと、ここでお礼を貰う訳にはいかない。これ以上彼女と接点を持ってしまうと、恐らくだが厄介なことに巻き込まれる、俺の直感がそう告げていた。
よくよく考えて見て欲しい。異世界に紛れ込んだ異分子の俺がそう簡単にこの世界に溶け込めるはずがない、それにマッドな研究者にでも見つかれば地獄のような実験の日々に早変わりする。俺が取るべき行動は一つ、この世界の情報が集まるまでは人目に付かないようにひっそりと暮らす事だ。
「とにかく、無事に治って良かったです。では」
「え、あっ……」
彼女が何か言うよりも早く立ち上がった俺は、スーツケース片手に彼女の元を立ち去った。この洞窟の出口は分からないが、たまたま向かった方向に道が続いていたので、道なりに沿って奥へと進んで行く。
(……あの人には悪い事をしてしまったな。それに勿体ない事をした)
実際あの女性が俺に仕えたとすれば、もしかしたらラッキースケベだったり、その場の流れでワンナイトを共にしたりしていたかもしれない……いや、ワンナイトじゃ足りないだろうけど。
あぁ残念だ、とても残念だとも!! あれ程の超絶美人とお近づきになれただけで無く、その超絶美人が俺に仕えると自ら申告してくれたのだぞ? これを喜ばずして男を名乗れようか……受けるかどうかは別問題だが。
それでもやはり、目の前の利益より後の安全を選択するべきだ。俺の選択は間違っていないと俺が知っている、それだけで十分だった。
気を取り直して洞窟内を歩いてみるも、見た事もないような色合いの鉱石や水晶がごろごろと落ちているだけで、出口に関する情報は一切なかった。
救いなのはその水晶や鉱石が光り輝いているお陰で足元に注意を払える事だろう。水色の鉱石とか水晶とかレアそうだから持って行こうかな。空になったスーツケースもあるわけだし……ちょっとだけ、ちょっとだけなら問題ないはず。
足元に散乱している鉱石類の中から直感で綺麗だと思ったものをスーツケースに収納していく。鉱石類一つだけでもそこそこの重量はある為、スーツケースの半分も入れない内に重量的に持ち運べないぐらいにはなっていた。
「お、重いな……ん?」
両手で持ち運んで何とか、といったぐらいの重さまで詰め込んで先を進む俺は、不意に足元で「カチッ」という音が聞こえて来たことに反応してしまう。
この時既に嫌な予感はしていた。足元の地面が方形に切り取られたように沈んでいたし、明らかに自然と無関係な機械音だったし、思い当たる節が幾つもあった。
「……これって、もしかして罠────」
だが、気づいた時にはもう遅く、沈んだ足元から突然真っ白な魔法陣が幾つも現れ、俺を取り囲むように瞬く間に展開するとまたしても眩い閃光を放ち視界を奪うのだった。
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