~ルーカン王国 ルナside~
『ルーカン王国とは何か』と問われたら
『私が生まれ育った故郷』と答えます
~ルナ=サテライト~
「私を監視してるのがルーカン王国?」
私は先ほどレオくんから告げられた物事について頭の理解が追い付いていなかった。
「そう。あくまで予測の範囲内だけどね」
「何かUNBaLaに居たときに情報とかがあったの?」
私は何故レオくんがそのような予測を立てたのか全く理解できなかった為にこのような質問を投げかけた。
しかし私の予想を裏切り、レオくんは答えた。
「いいや、スラムには王国の情報はほとんど流れて来ないよ。国側が重要機密として流出しないように管理してるからね。不自然なほど厳重にね………」
「それならどうして………」
「さっきルナお姉ちゃんの服に付けられていた盗聴器とボクが買おうとしたときに付けられていた盗聴器を見比べて欲しいんだけど」
そう言いながらポケットをまさぐって2つの黒い小さなプレートを手のひらの乗せる。
それをよく見てみるが、二つの違いを見つけることもできなければおかしなところも発見できなかった。
「特におかしなところは見つけられないけど………」
「そう、この二つは全く同じ物でとても精密に作られた盗聴器なんだ」
私はレオくんが何を言いたいのか理解できなかった。
「その盗聴器がルーカン王国と何の関係があるの?」
「この盗聴器ってとても高性能の物で一つ当たり80万円を超えるんだよ」
「は、はちじゅっ!?」
私は思わず声を上げて驚いてしまった。
「で、ボクの服にも仕掛けられていたことを考えるとたぶんルナお姉ちゃんの部屋にある服ほとんどにこの盗聴器が仕掛けられていると思うんだよね」
「それって何円かかるの!?」
「そう、だからルナお姉ちゃんに盗聴器を仕掛けるにしても予算がバカにならないんだよ。そんなに金の掛かる作戦を誰が行えるかって言ったら………」
「ルーカン王国自体かサテライト家か………」
私は想像したくない想像を呟いた。
「サテライト家の方はこんな店に頼らなくても家で何とかできるはずだからサテライト家の可能性は低いんだよ」
「そうなると消去法でルーカン王国になるんだね」
サテライト家に関わっているから把握しているのだけれど財力的に余裕がある富裕層はサテライト家が周りと比べても頭一つ分突出している。
「なんでルーカン王国がルナお姉ちゃんを監視しなくちゃいけないのかわからないけど、とりあえず警戒しておくよ。いくらボクと言っても上級国兵複数人の相手は厳しいからね」
「上級国兵?」
今までに聞いたことのなかった単語だったので聞き返した。
「そう、上級国兵。この国の兵士は階級分けされていて下から『新国兵』『下級国兵』『中級国兵』『上級国兵』『総国兵』『総国兵長』の6段階があるんだ。上級国兵以上の兵士は全体の10%ぐらいで凄く強いんだ。ちなみに総国兵長ってのは全兵士の中で最も力のある一人に与えられる称号なんだ。たしか中級国兵以下なら全員で戦っても総国兵長が勝つって噂があるよ」
「そんなに強いの!?」
「あくまで噂だけどね。ボクが組織に居たときに絶対に総国兵長に顔は覚えられるなって教えられたな」
「それはなんで?」
「組織の一員だとわかられたら街を歩いていてすれ違いざまに首を撥ねられるからだって」
「そんなに物騒なの?この街って」
「さあ?でも歴代で一番ヤバイ総国兵長は今の一代前の人らしいよ。ローグ=エルロイドって人なんだけど」
「その人は何が凄いの?」
「銃弾が飛び交う戦場でも剣一本で生き残り続けた伝説があるんだってさ」
遠距離兵器が開発され続けている今、戦場に銃を持たずに出るのは自殺行為に等しいことぐらいは平和ボケしている私でもわかる。
それなのにわざわざ銃を持たないのはよほど剣に自信があったのだろうか。
「元々銃を使ってた時は中級国兵程度の強さだったらしいんだけど、剣を使い始めてからどんどん昇級していって最終的に総国兵長になったって」
「その人が一代前ってことは今の総国兵長はその人よりも強いってこと?」
「どうなんだろ?総国兵長が軍力の象徴だから軍の外には情報があんまり流れてこないんだよね」
そういってからレオくんは不敵に笑う。
「今まで上級国兵とは何回か戦ったことがあるんだけど、手ごたえが無かったからな。一回でいいから総国兵長と戦ってみたいな」
それは冗談などではなくレオくんの心からの希望のように感じた。
「でも戦ったら殺されちゃうんじゃないの?」
「そうだね。たぶん人間の中で最も強いのは総国兵長だろうね。でも………」
「ボクはもうすでに神の力を宿した人間の域を超えた存在だから」