~お出かけ レオside~
『お出かけとは何か』と問われたら
『組織で使っていた暗殺の隠語』が一番最初に思い浮かぶかな
~レオ=アーサー=グロニクル~
こっちの街で食べるハンバーガーはスラムで食べるハンバーガーよりも格段に美味しかった。
「え?なんか素材の違いとかあるのかな?」
そのように感じたことをルナお姉ちゃんに話すと疑問が帰ってきた。
「いや、鮮度とかは確かに違うと思うけどそうじゃない気がするんだよね」
「なんだろうね」
「まあ、不味いんじゃないから何でもいいか」
ボクはそう言って半分ほど無くなったチキンバーガーにかぶりつく。
「あ、レオくん。口元にマヨネーズ付いてるよ」
「っん……ありがと」
ルナお姉ちゃんがボクの口元に付いたマヨネーズを拭いとる。
「さて、この後はどうしようか」
「ボクの服を買いに行くんだっけ?」
「その前にどっか寄ったりしなくてもいい?」
「うん、赤烏って呼ばれてからずっとこの服を着てたから下手したらこの時点で誰かにバレてるかもしれない」
「えっ……」
「殺気とかは感じなかったから多分大丈夫。でもできるだけ早く着替えた方がいいよね」
「これ食べ終わったら出来るだけ急ごうか」
「そうだね」
ボクとルナお姉ちゃんは急いでハンバーガーを頬張った。
それからボクらは服屋を目指して歩き始める。
「美味しかったね〜」
「そうだね。スラムのでも美味しいと思ってたけどこっちのは格別だね」
「気に入ってくれならよかったわ」
ルナお姉ちゃんはボクに笑いかけながら話す。
そうして話しながら歩いているとあるショーウィンドウに目が止まる。
「……これは」
「ん?どうしたの?レオくん」
そこに飾ってあったのは純白のウェディングドレスだった。
「わ、きれい……」
「………」
「私もいつか着る時が来るのかな……」
「………行こうか。ルナお姉ちゃん」
「え?あ、うん……」
ボクは早足で歩みを進めていく。
「レオくん……?」
「ん?どうしたの?」
「いや……なんでもない……早く行こうか」
「う、うん……」
それからボクらの間に気まずい雰囲気が流れてしまう。
それから暫く歩いて目的地に近づく。
「ん?うん。大丈夫かな」
「え?何が?」
「いや、気のせいだったかな?って」
「何か感じてたの?」
「うん……ちょっと中途半端な感じだったから注意してたんだけど感じなくなったよ」
「そう………殺気ってやつ?」
「似たような物なんだけど、今回のは殺気よりもねっとりとした感じ。たぶんルナお姉ちゃんの追っかけさんとかじゃない?」
「え、私にそんな人いないよ~」
「そう、ならいいんだけど……」
そうこうしているうちに目的地に到着した。
「わ、おしゃれなお店」
「そう、私もよく来るんだ」
店内に入ると若い女性スタッフが話しかけてくる。
「あ、ルナさん。おはようございます。今日はお一人ではないんですね」
「ええ、今日はこの子に似合う服を買いに来て」
「そうでしたか。それではどのような物をお探しですか?普段のようにおまかせにいたしますか?」
「普段黒っぽい服を着ているようだから気分を変えてカラフルなものを見繕ってくれる?」
「かしこまりました。少々お待ちください」
ボクはルナお姉ちゃんと店員さんが会話している間口を開かなかった。
「店員さんと仲が良いんだね」
「あの店員さんはここのオーナーでよく店にいるんだよね。だから来るときにいつもいるから仲良くなったんだよね」
「なるほどね」
「どんな服を持って来てくれるのか楽しみだね」
「そうだね。ボク自身は服にこだわりはないから何でもいいけどね」
小さい頃から殺し屋として育てられたボクはファッションとかについての興味はそれほど強くない。
小さい頃に興味があったのは小さい体でも扱える銃はないかとか、動きやすい最も軽い装備はどれかなど、おしゃれのおの字もないような関心だった。
それからしばらく経って店員さんが何着かの服をボクらのもとに持って来た。
「こんなのとかどうですかね?」
そう言いながら広げたのはとてもシンプルな服だった。
「最近はパステルカラーが流行っていて中はシンプルに白のTシャツで上から羽織るのはイエローグリーンのシャツで明るめに、それと合わせるパンツはジーンズ生地の物にしてみましたが……どうでしょうか?」
「レオくんに似合いそう!いんじゃない?」
「そうかな?ボクにはわからないからルナお姉ちゃんが決めたやつを買うよ」
「これって試着できるんですか?できるなら着てみたほうがわかりやすいでしょ?」
「あ、そうですね。試着室はこちらになりますのでどうぞ」
ボクはその服を持って試着室に入る。
そして今着ている服を脱ぎ、白のTシャツを着る。
そのあとにイエローグリーンのシャツを羽織って違和感を感じる。
「ん……?へぇ、思ってたよりもこの街はクソ野郎ばっかりみたいだな」
ボクはシャツは羽織らずに試着室の外に出た。
「あの……これ……サイズが少し合わなくて……別のサイズありますか?」
店員さんは一瞬考える素振りをしてから答える。
「はい!少々お待ちください!探してきますね!」
そう言って店の裏に入っていく。
その間にボクは店の中にある似たようなシャツを探す。
そうすると水色のシャツを見つけることができた。
そうして店の裏に行った店員さんに呼びかける。
「あ、そのシャツよりもほしいのが見つかったんで大丈夫でした!」
店員が急いで出てくる。
「えっ!?あ、そうですか!わかりました!ではそちらをお預かりいたします!」
「なんで?」
ボクは冷たく質問を投げかける。
「えっ?」
「なんでこの服を一回店員さんに預けないといけないの?」
「ちょっと?レオくん?」
「ルナお姉ちゃん。ここで服を買ったときに一回裏に持って行ったときってどんなとき?」
「え?え〜と。私が別のが良いとか言ったときかな?」
「在庫管理とかの為なの?店員さん?」
「え、ええ。そうです!管理のためには一回裏に持ってかなくてはいけなくて……」
ボクはゆっくりとレジに向かって歩みを進める。
「でもさ、このレジってこのレジ自体で在庫管理できるよね?」
「えっ……」
「もしやり方わからないなら教えてあげれるけど?」
「……」
「まあ、そうしたらこのレジで在庫管理してる分はボクは確認できちゃうけどね」
「……」
店員は何も言い返せずにただ黙ってしまった。
「では、この服をこのままください!店員さん!」
「…………かしこまりました」
店員さんはボクの元気な声に小さく返事をするので精一杯だった。