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神のオトシ者  作者: NiKKy
出会い
3/84

~愛情 ルナside~

『愛情とは何か』と問われたら

『私をここまで育ててくれたあたたかいもの』と答えます

~ルナ=サテライト~


「レオくんについてもっと教えて?」

今、私はレオくんと向かい合ってテーブルに座っている。

「ボディーガードとして雇うには君の素性がはっきりしていないとダメだからね」

そう言われたレオは戸惑った様子で口籠っている。

「でも……これを言ったらお姉さんは……」

「私はレオくんがどんな人生を送って生きていても軽蔑もしなけれは幻滅もしないよ」

「……違う……そうじゃなくて……これを言ったらお姉さんは普通の生活に戻れないかもしれないから……」

昨日二人を相手したときの赤烏はどこ行ったのか、目の前にいるのは先生に怒られている最中の生徒みたいになっている。

「さっきレオくんは言っていたよね、『生きる為には殺せ』それが『スラムの常識さ』って」

「……うん」

「私にはそれが理解できないの。これまでぬくぬくとこっちの街で育ってきたから世界の優しい表の顔しか見てきてないの。そしてこのまま暮らしていても裏の世界を知ることは無いかもしれない……」

レオくんは頷きながら私の話を聞いてくれている。

「そんなのは嫌なの。この国に大きく関わっているサテライト家の一人娘として、本当にこの国に投資するだけの価値があるのか見極めたい。でも私にはそれを考える情報が少な過ぎた……私に関わるとき全員がペコペコ頭を下げて、自分のマイナスになる要素を必死で隠してた。」

「だからボクと関わってこの世界の裏側を見てみたい……と」

今まで静かに聞いていたレオくんが口を挟む。

「その言い方だとレオくんを利用しているみたいな言い方になるね……でも実際その通りなのかな……」

「………分かった。引き受けることは確定してるみたいだから諦めるけど、ボクの身の上の話はある条件を飲んでくれたら話してあげる。恩がある身で申し訳ないんだけどね」

「え、えっと……まずは……その条件を聞かせてくれる?」

私は冷静に受け答えしたつもりだが慣れない取引をするという緊張のせいで声が上ずってしまった。

だってこんなに若くても簡単に二人も殺しちゃう人なんだよ?

どんな要求をされるか予想できないよ……

その様子を見てレオくんはニヤリと口角を上げる。

「ちょっと貴族のお嬢様にはお願いしづらい内容なんだけどさ……」

「な、なに?」

「…………」

そこから時間をおいて私を焦らしてから告げる。

「……これからたまにギュッてして貰ってもいい……?」

「貴族の私にエッチな要求するなんt……えっ?」

「えっと……だから……たまにハグして欲しいんだけど……ダメ……かな?」

頬を赤らめて恥ずかしそうに上目遣いでお願いをしている。

ハグ?なんかもっとエッチなこととかじゃなくてハグ?

そんなに私のハグ気に入ってくれたの?

そっか……家族から注いでもらってなかった愛情を欲しているのかな……?

それならこの申し出は断るわけにはいかないよね。

「しょうがないなあ。レオくんだけの特別だからね?」

「ほんとっ!?やったぁ!」

無邪気な笑顔でレオくんが喜ぶ。

この子……こんな風に笑えるんだ……

私はレオくんを優しく包みこむ。

「あっ……」

突然ハグをされレオくんは一瞬身体を硬直させる。

「んっ……」

しかしすぐに私に体重を掛け、身体の力を抜いていく。

「あったかい……それにやさしい……」

「キミには私がついてるから……甘えてもいいんだよ?」

「うん……ありがとうお姉さん」

「ん~、そのお姉さんって呼び方も変えない?なんか他人行儀って言うか……これからボディカードとしてずっと一緒にいるんだしさ」

私はレオくんを抱きしめたまま話をする。

「じゃあルナさん?」

「それもまだ固いな~」

「ルナ……ちゃん?」

「だいぶ柔らかくなったけど……なんかな〜」

「えっと、ルナ……お姉ちゃ……ん?」

「それっ!それがいいっ!」

なんか今、私の中で弾けた気がする!

胸の中にあるパズルがカチッとはまる感覚!

「その呼び方!良い!なんて言うか……良い!」

「ルナお姉ちゃん!?語彙力が凄いことになってるよ!?」

「それほどに気に入ったってことだよっ!」

ルナお姉ちゃん……お姉ちゃん……か

……いいね。

「さて……」

レオくんは一人で興奮している私から体を離す。

「ボクの要求を飲んでくれたのならボクはボクのすべきことをするよ」

そう言って私にテーブルに座るように促す。

レオくんは私の正面に座り、目を見つめて話始める。

「まず、本当に最後の確認だよ?ボクの話を聞いたらルナお姉ちゃんは普段通りの生活に戻れないかもしれない……それでもいい?」

「……うん、私はこの世界の本当の姿を見たいから……」

私に迷いは無く、力強く頷く。

「そう……分かった……」

そこで一度レオくんは大きく息を吐く。

「改めて自己紹介するね。ボクの名前はレオ=アーサー=グロニクル。年齢は13歳。出身はスラム街。育ったのもスラムだよ」

「爺やに話した内容でもここは本当だったんだね」

「そうだね、今の時代この程度は調べればすぐにわかっちゃうから」

確かに今時の個人情報は国のデータベースに管理されているから、息のかかっているサテライト家が依頼をすれば一発で国民の身元は割れるだろう。

そのままレオくんは話を進める。

「スラムにはとある組織があって、ボクは親にそこに売られた。昨日あの二人とやりあったときにルナお姉ちゃんに教えた『赤烏』ってのは、ボクが組織に居たときに呼ばれていたコードネームみたいなものなんだ」

「何かその名前の由来はあるの?」

「あるんだけど、それは組織がどのような活動をしているかを説明してからのほうがいいかな」

「そうなんだね。わかった」

「それじゃ、その組織についての説明をするね。組織名は反国家過激派組織『UNBaLa(アンバラ)』。国に対して不満を持つ者が集まり、テロや暗殺を行う集団なんだ」

「UNBaLa……」

私は聞いたことのない名前を復唱する。

「この前、国の会議室で爆発があったでしょ?あれもUNBaLaの爆破班の仕業だよ」

「えっ!?あの国の重要人物が大勢怪我したって報道された事件!?それが分かってるなら通報しなきゃ!」

「無駄だよ、ルナお姉ちゃん。アイツらは犯罪のプロフェッショナルで現場に一切の証拠を残さないんだ」

「でも……」

「仮にそれを伝えたとして、裏付けの無い情報に国が動くか微妙だし、それに情報元を求められてたら捕まるのはボクになる思うよ」

「……そうだね」

確かに国に「どこからの情報だ?」って言われて「前に入ってたので……」とは答えられないよね。

「ボクはそのUNBaLaに7歳のときに買われた。入隊させられたのは戦闘部隊で、アイツらは7歳の子供に拳銃を握らせたんだ。それから殺しに特化した戦闘技術を教えこまれ、半年程で実践に駆り出されたよ」

「そんな小さい子に!?」

「そう、むしろ子供だからこそ無鉄砲に突っ込んで行くから捨て駒としては最適なんだ」

「そんな……」

「それから何度か実践に出て、周りの子供は皆死んでいってボクは生き残った。子供にしてはある程度頭が働く方だったから、全力で生き残る行動をとっていた。そしてボクはどんどん戦闘員としての実力をつけていった……」

そこでレオくんは言葉を切って自分の両手を見つめる。

「ボクはこの手で何人も殺した……何度も夢を見て……その度にこの手が血で塗れていると思い出す……」

「レオくん……」

「でも、生きる為には殺さなければいけない。そう自分に言い聞かせて訓練を受けていた。それから暫く経ってボクが9歳になったときかな、組織のボスから呼び出しされたんだ。」


『レオ、お前はとても優秀だ。未来有望だ。私らの希望だ。……そんなお前に提案がある。戦場で生き残る為の力が欲しくは無いか?』

『力?それはどんなの?』

『拳銃の扱いに長けたお前に最適な力だ。』

『それを使えれば強くなれるの?』

『もちろん』

『皆みたいに死ななくて良くなるの……?』

『そうだ。お前ならそうなる』

『なら、ボク欲しい!ボクの力!』

『そうか……それほど死を恐れているのか……それなら、直ぐ準備に移ろう。神の玩具ゴッドファクト、『神眼』の人体移植の準備を……』


「神眼?それって昨日二人と戦ってた時にも言ってたよね?」

「そう、これなんだけど……」

レオくんはそう言いながら眼帯をずらす。

そこには昨日も見た義眼があった。

普通なら瞳がある位置に銃の照準のようなマークがあり、それが光っている。

「ごめんね、もっとゆっくりみせたいんだけど、この眼で見てるだけで脳への負担が大きいから……」

そして直ぐに眼帯を元の位置に戻す。

「え?それって義眼だよね?見えてるの?」

「ああ、義眼って普通は見えないのか……この義眼は特別で視力があるんだ。それも計測しきれないほどのね」

「イメージができないけど……例えるならどれくらい見えるの?」

「そうだな……見通しのいい草原でボクから2キロぐらい離れた距離にルナお姉ちゃんがいるとするでしょ?その時のお姉ちゃんが何をしているか確認するぐらいはできると思うよ」

「そんなに!?」

「さらにこの義眼は視力だけじゃなくて動体視力も高いんだよね。そのおかげで飛んでくる銃弾を打ち落とすことがボクにはできるんだ」

「なるほどね……」

「でも、この目を手に入れても最初は慣れるのに大変だった。この目を使っているときも使っていないときも結局片目で狙いを定めなきゃいけないから対象までの距離感がつかめないんだ。」

「そうなの?」

「ああ、人間の目が二つあるのがその理由で、視差って言うんだけど……とにかく、両目を使わないと上手く狙いを定めれないって話なんだよ。でも、努力して片目で狙うのも慣れて、両目で狙うのと大差ないほどになるまでずっと特訓し続けた……」

そこでレオくんは一息つく。

ゆっくりと私の目を見据えてから私に問いかける。

「ここからは少し重い話になるよ……覚悟はいい?」

私は静かに頷いた。

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