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八百万の神々(仮題)  作者: さつま揚げ
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八百万の神々 第二話 やってきたのはロリ女神

「なんか、疲れた」

神社で合格祈願のお祈りをした後まっすぐ帰ってきた大樹は、自室に戻るとそのままベッドに突っ伏した。

11月も終わりに近づきつつある今、季節は完全な冬である。

そんな中歩き回るのも確かに疲れはしたのだが、それ以上に大樹を消耗させたのは採用試験の結果である。

「不採用か…はぁー」

結果を思い出すと増々気落ちしてくる。

第一志望であった企業の面接に落ち、今年の春に大学を卒業した大樹は晴れてプーとなった。

家族、特に妹からの視線に耐えられず急場しのぎの為に警備会社に就職した大樹は仕事の傍ら就職活動を続けていた。

 しかし、自分自身何をどうするのか、どうしたいのかが定まっていなかったこともあり、その後に応募した企業のこと如くに滑り続けて今に至る。

どうしたもんかとベッドの上をゴロゴロと転がりながらぼーっとしていると、扉の向こうから「帰ってきたのー?」という声が聞こえた。

「ああ、いるよー」

大樹が言い終わるより先に勢いよく扉が開かれ、そこには予想通り今彼が一番顔を合わせたくないやつが立っていた。

「ねえ、帰ってきたんなら結果どうだったのか教えてよ」

人の許しもないままずけずけと部屋に入ってきたのは楢原保奈美ならはらほなみ、今年高一になったばかりの大樹の妹だ。

人の私室に無断で入ってきたばかりか、ベッドのそばまで歩み寄り興味津々な顔でこちらを見下ろしている。

「お、おい、ちょっと近いって」

「別にいいでしょ、兄弟なんだし」

あまりにも無防備な妹の様子に、先ほどまでの憂鬱な気分もいくらか緩和されているのに気付いた。

保奈美が気さくな性格であり、誰とでも仲良くなれる性格の持ち主であることは理解しているが、こうも無防備だといろいろと心配にもなってくる。

「あのなあ、親しき仲にも礼儀あり…というのはちょっと違うか。でもほかの男友達とかにもそんな感じだったりしたら、兄としてはいろいろと心配なんだが」

「あははは!そんなこと気にしてたの?兄貴以外にこんなことするわけないじゃん!ていうか、話すり替えないでよ、結果どうだったの?」

ケラケラと笑いながら受け答えしていた保奈美は、はっとした顔をしてこちらに詰め寄ってきた。

ちっ、そうやすやすとこっちの思惑にはまってはくれないか。

「そんなの、いちいち聞かないでくれよ」

実際そこまでではないが不採用という結果にショックを受けていたのは事実だ。

特に、妹の保奈美にはあまり情けない姿を見せたくないと思うのは、兄としてのプライド故だ。

「もう、そうやって落ち込まないの!落ち込んでたって何も変わらないんだから。次に向けて頑張ればいいんだよ!」

先ほどまでケラケラ笑っていた表情を改め、こちらを気遣うように力こぶを作って見せる。

最も、華奢な保奈美の腕に力こぶはまるで出来なかったが。

しかしこいつは、保奈美はまるで分っていない。

「悪い、ちょっと出てくる——」

「あ、ちょっと兄貴」

勢いよくベッドから跳ね起きた大樹はそのままの勢いで自室を出ると、妹の呼び止める声を無視して外へと飛ぼ出していった。



「はあ」

勢いあまって家を飛び出してきたものの、後悔の念から大樹は深いため息をついた。

妹は何も悪くなんかない。ただ自分を励ましてくれていただけだというのに、どうしてもそれにうなずくのは情けないような気がして、気が付けば外へと飛び出していた。

「って、今の俺のほうがもっと情けないよな」

試験に落ち、そんな兄を慰めようとやってきた妹を置いて、一人町中を当てもなくさまよっている自分に目を向けると、あまりの情けなさにため息が出る。

「何やってるんだかなあ」

ため息をつきながら適当にふらふらと歩いていた大樹は、気が付けば美桜神社の前まで来ていた。

最近、採用試験に落ちるたびに合格祈願と家族の無病息災をお祈りするのが半ば習慣づいていたからだろうか。

せっかくここまで来たのだから、お参りのため一礼をして一の鳥居をくぐり二の鳥居をくぐろうとしたところで、数時間前にあった着物姿の少女を見つけた。

「あれ、君は確かさっきの」

「おお、ちょうどよい所に来た。おぬしを探しに行くところであったぞ」

「?」

言葉を途中で遮って近づいてくる少女は、とても10歳前後の外見には似つかわしくない威厳が感じられ、思わず後ずさりした。

腰が引けている俺を見てどう思ったのか、少女は満足そうにうなずいてから口を開いた。

「光栄に思うがよい。厳正なる審査の結果、お主は神々より選ばれたのだ」

何だかよくわからない言葉を口にする少女を怪しげな目で見やりながら、大樹は自分の耳がおかしくなったかと耳に指を突っ込んだ。

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