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魔法ハッカー  作者: 木野二九
成りすまされた衝撃_Spoofing attack
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Dosアタック 1

女の子を2人もお持ち帰りしといて、こんな事言うのもなんだが。


「女性は苦手だ……」


突然泣き出した葵さんと、それを見て僕を非難するローラさん。

店内のお客さん達も僕を冷たい視線で眺めてるし。


――僕に対する攻撃が止まらない。

なんだかそれが、順番に切れ間なく続いてく。


「まるでDosアタックを受けてるみたい」

「なにそれ?」


ローラさんが、現実逃避してる僕にツリツリの瞳で突っ込む。


「連続して攻めて、ダウンを狙う方法」

「ああ、波状攻撃の事ね」

「波状攻撃?」


なんだか聞いたことがあるような? でも具体的にはどんな方法だったっけ。


「押しては引く波のように次から次への攻撃を繰り返して……

相手を疲弊させてスキを突くの。

戦術としては、同時に圧倒する『一斉攻撃』と対になる考え方ね」


「ローラさんは軍にいたんだっけ」

「そうよ…… でも、今はそんな事じゃなくて!」


2人で葵さんを見たらどうやら落ち着いたようで……

運ばれてきた料理をパクパク食べてました。


「ルビー、もう大丈夫?」

「うん」


「じゃあ、とりあえず食事を美味しくいただいて。その後、作戦会議をしよう!」

僕がそう言ったら、葵さんはてれたように笑って……


「うん」

――もう1度頷いた。


いつかシンイチが言ってたな。

「温かい食事と笑顔が心の傷の特効薬だ!」って。


僕はまた会話を始めた美少女2人を眺めながら……

――苦笑いをひとつこぼした。



■■ ■■ ■■ ■■ ■■ ■■



食事が終わって、部屋に戻る。

作戦会議は、人に聞かれない場所が良いだろう。

ローラさんはほろ酔いでご機嫌だし、葵さんも満腹でご機嫌な様子だ。


「ねえ、葵さん。

この部屋から会話が漏れないように魔法かける事ってできる?」


リビングの備え付けのソファにドンと腰を落として、ローラさんが脚を組む。

少し酔ってるせいかアクションが大きくて、ちょっと色っぽい。

フレアスカートみたいな鎧から艶めかしい太ももと、その奥の白い下着がチラリと見えた。


「できる」


その横に、僕の視線を遮るように葵さんが腰かけた。

なぜかベストを脱ぎ、胸元のボタンを2つはずして、呪文のようなものを唱える。

大きな胸の谷間に目が行っちゃったら…… 葵さんは、ニヤリと笑った。


「これで大丈夫」


部屋の隅々に淡い文字が浮かんで、吸い込まれて行く。


「――遮断魔法? 外の音も全然聞こえなくなっちゃった。

軍でも同じような魔法を見たけど、こんなに凄くなかったわ」


あっけに取られてるローラさんに、葵さんが……

「今のは精霊術。結界を作るなら、こっちの方が有効だから」


――そう呟いて、脚を組んだ。

ホットパンツから延びる美しい太ももに目が行っちゃったら。


「どう」

と、葵さんが確認してきた。


「素晴らしいです」

前世からそうだったけど、あの躍動感のある太ももは芸術品だと思う。

僕の言葉に、葵さんも嬉しそうな顔をした。


「それで作戦会議って、何をするの?

ルビーとあんたが前世で知り合いだったのは分かったけど。

あたし、いまいち状況が把握できてないのよ」


「順を追って、説明するよ。

先ずは3人での情報共有が必要だから。

けどその前に、これを確認したいんだけど」


僕がポケットから、森でもらった石を出す。

2人がのぞき込むように前かがみになったから…… 2人の胸の谷間がアレでソレです。


「青い魔力石は、赤い精霊石と共鳴する。

たぶんまったく同じ形にカットされた精霊石が存在する」


葵さんが両腕で胸を寄せるような仕草で、グイッと前に出た。


「あーそれ、聞いたことあるわ!

軍の作戦でも、位置確認なんかで使うって。

でもどっちも高価な代物で、数が少ないのよ」


ローラさんも、さらに石をのぞき込むように近付いてきて……

胸元が、アレすぎます。


赤い髪と青い髪の、胸の膨らみ? うん、実に神秘的だ!

なんか良い匂いまで漂って来るし。


「そ、それじゃ……

森から刺客がくるって考えて、まず間違いないね」


胸の圧力? に負けて、距離をとる。

葵さんは、微妙な笑み。ローラさんは不思議そうな顔つきで。


「なんか、この石から情報が発信されてるから」

僕を見詰めてきた。


石の方は…… たぶんGPSみたいなもんだから、逆探知可能だろう。


「で、どうすんの?」ローラさんの質問に。


「葵さん、また魔力を貸してくれない?

ちょっと細工して、それからお客さんを迎えようと思うんだ」

僕が答えると、葵さんはコクリと頷いて。


また、シャツのボタンを外し出した……


「えっ、ルビー何してんの……」

「ここでする? 場所を変える?」


「えーっと、だから…… 胸は揉みません!」


――ちょっと、その。興味はあるんだけどね。

うん。知的好奇心てヤツだよ、もちろん。



■■ ■■ ■■ ■■ ■■ ■■



部屋をノックする音と同時に。

「夜分遅く申し訳ありません、昼間お世話になった森人のエメラルダと言います」


知らない女性の声が聞こえてきた。

ドアを開けると、フードを深々とかぶった2人組が佇んでる。


「よくこの場所が分かりましたね」

「はい。失礼とは存じましたが、この石でキド様の居場所を探しました」


背が高い方の女性が、赤い石を取り出して僕に見せる。


「どのようなご用件で?」


「大したお礼もできず、キド様をかえしてしまいましたし。

出来れば、今後も森とお付き合いいただければと思い…… お願いに伺ったのです」


後ろにいるのがフィーアさんだろうか。

キョロキョロと伺うように、フードの隙間から部屋をのぞき込んでいる。


「立ち話もなんですから、お入りください」


リビングに案内すると、2人はフードの付いたコートを脱いだ。

背の高い方の女性は、流れるような腰までの青い髪で……

整った顔と、スラリと伸びた美しい手足が妖艶だった。


――あれが、エメラルダさんか。


「座ってもよろしいですか?」


ソファの前で微笑む姿は、タレ目と相まって……

どこか子供っぽく、美しさの中に可愛らしさも混じってる。

――確かに、葵さんが言う「男好きする容姿」かもしれない。


「ルビーは?」

フィーアさんは相変わらず落ち着かない感じだ。


「奥の部屋にいますよ、呼びましょうか?」

「いえ、今は結構です。さきにお願いを聞いていただければ……」


遮るようなエメラルダさんの言葉に、フィーアさんはムッとしてたけど。

特に何も言わない所を見ると、主導権はエメラルダさんが握ってるようだ。


「申し遅れました。私はエメラルダ・ポルタ―と申します。

今、サディの下で森の神官をしております。

――どうぞお見知りおきを」


神官と言うだけあって、葵さんやフィーアさんみたいな『狩人』ぽい格好じゃなくて。

レースのカーテンみたいな生地を体に巻き付けた……

古代ギリシャの服。 ――キトンだっけ? そんなデザインのモノを着ていた。


「キドです。ご丁寧にありがとう」


対面のソファに僕が座ると、テーブルの下に隠してある青い魔力石が5回点滅した。

――って事は、あと3人か。


続いて、ながい光と短い光の点滅で「トン、ツー、ツー、トン、トン」の連絡が入る。

逆ハッキングを嫌って、モールス信号でいくつかの連絡パターンを決めたけど。


これは、「カコマレタ」だから、のんびりお話はできないな。

僕はテーブルの下の石を拾い上げ。


「これなんですが、そちらの赤い石と」

エメラルダさんが自分の持つ赤い石を確認する。


フィーアさんもそれをのぞき込んだところで、青い石から、ブラクラを改良したウイルスを稼働させた。


これなら一時的な行動停止ですむし、侵入タイプじゃないから……

ワクチンの散布も必要ないし、後遺症の心配もない。


――赤い石がチカチカと点滅を始めると。

「アン」「イヤッ」

なぜか色っぽい吐息をもらして、フィーアさんとエメラルダさんが倒れ込んだ。


「もう大丈夫です」


僕の声に、別の部屋に隠れてたローラさんと葵さんが出てくる。

ソファの上で顔を赤らめ時折ビミョーなケイレンをする2人を見て、ローラさんが……


「あんたの能力って…… なんか、こう。凄いんだけど、ほら」

――言いにくそうにしてると。


「エロい?」

葵さんが、その部分をフォローした。


うーん、なんででしょ? そんなの狙ってないのに。

「その事はおいといて…… と、とにかく! 残りの3人は?」


「同じ」

葵さんが簡潔に答えた。


「へっ?」

「同じ状況で伸びてる」


ローラさんが、眉間の中央に指をよせて。

「なーんか、このパターンは見覚えがあるような……」



とりあえず部屋を出て、3人で部屋を囲んでいたと思われる賊を回収した。

全員が同じ形の赤い石を持ってたし、似たような戦闘服を着ていたし。


「賊であってるよね」

不安になってローラさんに聞くと。


「これは魔人の突撃部隊が好んで使う装備よ。それにこの徽章は……

――レコンキャスタね」


胸元には、痩せたカエルの絵が刻まれたバッジが付いてる。


「むいて縛っとく?」

葵さんのビミョーなセリフに……


「ねえ、魔人も女性ばかりってわけじゃないよね」

一応確認してみる。


「それは違う。だったらあたしは生まれないから。

たぶん、こいつらは『森人』の交渉役。

森人は男が森に入るのを嫌うから」


恍惚の表情で、気を失ってる美少女『魔人』3人を見て。


なんだかドンドンと……

僕の周りの美少女人口密度が上がってくことに、不安がつのる。



もしやこれは、美少女Dosアタック? だったらすぐに……

――フリーズする自信がありますが。

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