13.超氷結電磁砲
「ラティア! 行くぜえ!」
「はい!」
俺はナナハンエアのハンドルを握り込み、一気に加速する。水面にナナハンエアが突入するが、空中に浮いているから問題ねえ。
さあ、ついて来やがれ!
俺がバックミラーでマグマの虎の様子を確認すると、奴は俺達へ真っすぐに迫り、湖へ足をかける。
――マグマの虎が水面を走ってやがるじゃねえか!
ヘーイ! これじゃあ、湖に来た意味が全くねえじゃねえか。
まあいい。男ってのは細かいことは気にしないってもんだ。
マミかイモムシから連絡があるまで、逃げ続けるまでよ。マグマの虎とご機嫌なランデブーと行こうじゃねえかあ。
後ろを振り返ったラティアもマグマの虎の様子に気が付いたようで俺の腰をギュッと握りしめる。
「そんな……水の上を走ってます……」
「不安にならなくていいぜえ。武器が来るまで楽しくドライブといこうじゃねえか」
「……はい!」
俺達の姿を捉えたからか、マグマの虎はさらに加速するがまだナナハンエアの方が速度が速いから問題ねえ。
って! 虎がマグマの弾丸を飛ばしてきやがる!
俺は蛇行しながらマグマの弾丸を避け、マグマの虎とさらに距離を取る。
しかし離れても弾丸が飛んできやがるな。弾丸を避けるために蛇行すると多少ナナハンエアの速度が遅くなるが、追いつかれる事態にはならない。
まったく辛気臭え攻撃をしてきやがって。男ならもっとガツンと来てみやがれってんだよ。
暫く弾丸を避けつつ奴との距離を保っているとようやく超高速電話機が鳴り響く。
待ってたぜえ。この時をよお。
電話をかけてきたのはイモムシだった。マミに超氷結電磁砲を持たせたってことだ。よりによって超氷結電磁砲かよお。
あれは威力が強力な分、サイズが大きい。肩に担いで発射する大砲で連射もきかねえんだよな。
もっといい武器を持ってねえのかよ。イモムシ……仕方ねえ。イモムシだって突然の依頼だったんだ。まさかマグマの化け物を相手にするなんて思いもしなかっただろうからなあ。武器があるだけマシってもんだぜ。
しっかし、マグマの虎はワンパターンだぜ。炎の弾丸を飛ばしてくるだけだ。何か別の芸を持ってねえのかよ。あくびがでるぞ。
『健太郎! もうつくわよ!』
マミから連絡が入ったぜ。よおし。今に見ていろよお。
と、その時虎の形態が変化する。
――鳥になりやがった! 鷹のような猛禽類を類推させるような姿に変わったマグマの虎は翼をはためかせると体が浮き上がる。
マグマの鷹は翼をこちらに向けて振るうと、勢いよく炎の羽の弾丸がこちらへと飛んできやがる。
オオウ! 一芸を持っていやがったのか。
俺は超高速電話を耳と肩で固定すると、両手でナナハンエアのハンドルを握る。こいつは躱すのに少し本気を出さねえとな。
俺の予想どおり、鷹になったマグマの野郎は速度がこれまでの倍以上になったぜ。空を飛びながらこっちへ向かってきて、時折翼を振るう。
羽の弾丸はさっきまでの虎形態と違い、数が多いから躱すのが多少厄介だ。まあ。問題ねえがなあ。
『マミ! 上空まで来たら、超氷結電磁砲を放り投げてくれ。まずお前さんをマグマの野郎が攻撃することは無いと思うが念のためだ』
『攻撃? 上等よ! 健太郎のところにまで行くから!』
『ヘーイ! カワイ子ちゃんを危険に晒したくねえんだよお。分かってくれるよな?』
『カワイ子ちゃん……分かったわ! 健太郎! 上空から超氷結電磁砲を落とすわよ!』
よおし。いい子だマミ。
ちょうどマミの小型飛行機が上空まで到着したぜ。そのまま超氷結電磁砲を放ってくれ!
俺の動きに合わせてマミが超氷結電磁砲を小型飛行機から放り投げる。
『健太郎!」
『ナイスだぜえ。マミ!』
俺は役目を終えたテントウムシ型の超高速電話機を素早くしまうと、超氷結電磁砲をガッシと受け止め、肩に担ぐ。
超氷結電磁砲は長筒のバズーカで、筒の直径は十センチ、筒の長さはおよそ一メートル半ってところか。とにかくデカい。
連射もきかねえから一発で当てねえとなあ! でかいだけに威力はご機嫌なんだぜ。
「ラティア。しっかり掴まっていろよお! 倒しに行くぜ」
「はい!」
ラティアがギュッと腕に力を込め、俺の腰に縋り付く。
俺はナナハンエアを華麗にスピンさせると、ナナハンエアは速度を落とさず反転する。正面にはマグマの鷹!
お互いにお互いを打倒する武器を持った。これでようやく勝負だぜ。
自身に迫る脅威を感じとったのか不明だが、マグマの鷹は少し飛び上がると、左右の翼を振るう!
今までと違い、俺は奴に迫っていっているから、羽の弾丸の速度が段違いだ。でもなあ。
「当たらねえ。それじゃあ当たらねえなあ。飛び道具ってのはなあ。心穏やかに撃つもんだぜ」
興奮していたら当たらねえよ。それじゃあダメだぜ。マグマの鷹よお!
俺は超氷結電磁砲のレバーを握り込み、狙いをつける。
レバーを強く押すと、超氷結電磁砲から電磁誘導によって瞬時に音速の十倍以上に加速された瞬間冷凍弾が発射され、奴の眉間へとぶち当たる!
この瞬間冷凍弾は周囲の分子運動をゼロにすることで一瞬で冷凍状態を作り出すんだぜ。
オウケエイ! 思ったとおりのご機嫌な効果だぜえ。冷凍弾は眉間から全体に氷が広がっていき、奴は全身冷凍状態になる。
そこへ、俺は超振動ハンドアックスを振り上げ勢いよく振り下ろす! もちろん、パワーマックスだ!
ハンドアックスがマグマの鷹に当たると、甲高い音をたて奴は高速振動の効果によって分子分解される! 分子になった氷の粒が風に吹かれ、太陽の光を反射しキラキラと輝いている。
ヘーイ! なかなか壮観だな。
俺は岸までナナハンエアを走らせると、そこで停車させる。そこで俺は片足を地面につき、ふうと安堵のため息をついた。
「こんなもんだぜ。ラティア」
俺はナナハンエアから降りると、後部座席に座るラティアの腰を両手で左右から掴むと彼女を抱き上げる。
彼女はそのまま両手を広げ俺の胸へと飛び込んで来た。
「……健太郎! すごい! ありがとうございます!」
ラティアは頬を紅潮させ、俺をギュッと抱きしめながら俺の胸へ頬ずりする。
これにて一件落着だぜ。
「じゃあ一旦街へ戻るか」
俺はラティアの腰に手を回すと、彼女を抱き上げそのまま一回転。子供っぽい動きだったが、彼女は嬉しそうに笑顔で一度回転した後、再び抱きついて来た。
俺は彼女の唇に軽く口づけすると、彼女から離れる。
「こらー! 健太郎!」
おっと。マミが見ていたのか。モテる男はつらいねえ。
俺は聞こえないふりをして、ラティアを抱き上げると彼女を後部座席に乗せて、自分もナナハンエアに乗り込む。
「マミ。ありがとうな!」
朗らかに手を振る俺に彼女は何やら叫んでいる。後で相手してやるから、とりあえず戻るぜ。
俺はナナハンエアのハンドルを握り込み、エンジンをふかす。
「待ちなさいってばあ!」
マミの絶叫が後ろから聞こえるが、気にせず俺はナナハンエアを走らせたのだった。
しばらく連日更新に戻ります!




