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根暗少女とコンピュータ少年

 初めて君の手に触れたのは、寒くなってきたね、なんて当たり障りのない会話をしていた頃だ。


「俺って、手冷たいですか?」


 そう言いながら突然手のひらを差し出されて、一瞬戸惑ったけれどその手を掴まずにはいられなかった。

 天井まで届きそうな本棚と、びっしりと積まれたハードカバーや文庫たち。すべて、物語。

 それが、私が私のままでいられる唯一の空間だった。


「手、冷たいね」

「そうですか? 分かりません」


 淡々と口にしながら、私の手を握ったり離したりするのを君は繰り返す。

 誰かと比較したことなんてないと言いたそうな君。

 私が初めてなのかな、なんて馬鹿なことを思ったりもして。

 君はイヤホンを片耳だけ外して、私の方に耳を傾けてくれていた。

 これでもだいぶ進歩だ。 


「あたたかいですね。いいですね」


 そんな風に言われるのが恥ずかしくて、咄嗟に私は「手が冷たいのは、心が温かいからだよ」と口にする。

 途端に君は、面食らった顔で私を見た。


「どうして手が冷たいと、心が温かいんですか」

「さあ? ことわざじゃない? でもよく聞くよね」


 私が離してからも、君はずっと不思議そうに自分の手を見つめていたのをよく覚えている。

 あの頃、どこまでも続く浅い海でじゃれ合うように、君に触れていた。

 でもひょっとしたら、この時もう既に、君は傷付いていたのかもしれない。そう気付いたのはずっと後のことだ。


 ねぇ、いつから私は、間違っていた?

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