調査、一日目(4)
現代。
ここは、知る人より知る人の場所……カフェ店。……看板にはprivate detectiveと書かれている。そこに働いているのは二人。バイトの古都 巧と所長の沢東 黄泉の二人だけだ。
「今日も平和ですね……」
カフェの前で箒を持つ青年……黄泉は掃除をしていた。
「……そうか?」
カフェ店の建物から出てくる青年……巧はゴミ出しをしている。
「……はぁ、のどかな朝でしょ?」
「………………。ゴミ出し終わったら、仕事、言って来る」
private detectiveはカフェ店と同時に探偵事務所でもあり、依頼があればそっちの仕事もするカフェ店だ。この場合の仕事は探偵の方だ。
「……ああ、気をつけて」
「おう……」
さっさっと、ゴミ出しを済ませ、巧は現場へと走って行く。
「……わかな、調査報告が待っていられない?」
「ま、まぁね……」
黄泉に言われて、わかなはフィッと顔を背ける。今の"若菜"は死んで魂だけの存在になっているから、誰にでも見えるわけではない。だから、はたから見れば黄泉が一人でに喋っているように見える。
「気になるならついて行ってもいいよ」
「な、ならないわよ」
わかなは照れてどこかに行ってしまった。
巧がいる場所に警察の車……俗にいうパトカーが止まっていた。
(ここが、川崎 若菜の家か)
通学路の堀から巧は家の門を眺めている。正式には、家の門にある刑事たちだ。
(入れないかな? どうやって入ろうか?)
"探偵"と言って入ればいいが、あいにく巧は知名度の低い探偵=新米探偵でなりたてほやほやなのだ。
(まぁ、彼女の元教師だったし、なんとかいけるよな?)
そう思い巧は通学路の堀を出て行き、堂々と被害者の家に入ろうとするが、家の門の二人の警察に両脇を掴まれる。
「君、ダメじゃないか? 一般人が現場に来ちゃ……」
「そうそう、だから、早く帰りなさい!!」
それだけ言われて、巧は押し戻される。
(だよな……。異界しか早いと思うけど、所長が怖いからな)
異界で若菜の記憶構成を見て、犯人を当てると言う事だ。けど、ココの世界ではソレは禁じ手で、どのミステリーの法則を無視するからだ。さながら、逆手に読むミステリーになる。ちなみに、所長とは黄泉の事である。
「あのさ、被害者の担任教師なんだけど、それでもダメかな?」
巧にそう言われ、刑事たちはヒソヒソする。
「わかりました。今、現場担当の刑事に聞いてきますのでしばらくお待ちください」
そう言って、一人の刑事が中に入って行き、もう一人の刑事は門の所に立っている。