調査、一日目(3)
異界
「って、ちょっと待った!!」
「ん?」
誰かの声で、教室や生徒……時間が止まったかのように、凍りついている。まるでこちらはテレビを見ているかのような気分だ。
青年は怒鳴った声の主……若菜を見る。
「これは何!? なんで、わたしや貴方はあそこにいるの?」
「ああ……」
青年の答える気のない態度に若菜は怒鳴る。
「答えなさい!!」
「……。まぁ、そんなにカッカしないで。若菜」
「するわよ!! というか貴方、誰?」
若菜はドカッとソファーに座る。
「はぁ……。僕の名前はタク。僕の名前はもう言わなくても分かるよね? そしてコレは若菜が死ぬ七日前からの記憶を再生しているにすぎない」
タクは自己紹介を簡潔に済ませ、説明をする。
「はっ、なに言っているのかわかんない」
「……だーかーら、今見ているのは若菜の記憶って事」
その言葉に若菜は赤面する。
「なぁ、勝手に覗かないでよ!! プライパシーの侵害じゃない!! サイテー。貴方、それでも古都先生だったの!!」
若菜はソファーにあったクッションを何度も何度もタクにぶつける。
「あのね……、若菜が調査って言ったから調査しているんだよ」
「だからって、こんなやり方ってないんじゃない!!」
クッションをタクの顔面にぶつけて、若菜は何処かに行ってしまう。タクはその後ろ姿を見つめているだけだ。
「…………。犯人みつけ、こっちしか早いのに……」
ポカとタクの頭が殴られる。
「……っつ。ヨミ、殴るなんて、酷いだろ?」
涙目で見上げるタクにヨミと呼ばれた小柄な少年は、溜息をつける。
「ソレはプライパシーの侵害です。女性に失礼です。タクはあちらの世界では教師ではやめて、探偵なのでしょ? 探偵は探偵らしく事件を解いてくださいね」
「了解です。ヨミ……」
外に出掛けるタクを所長のヨミは見送り、まるで何もなかったかのように、テレビ画面を消すかのように、消した。