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はじめてのサンタさん(ジェイド&つばき)








「さんたくろす、とは一体何者です」



片言で変なアクセントの言葉を聞き取った私は、思わず手を止めた。

受け取ったコートから、溶けかけた雪がぽとぽと落ちる。夕方には落ち着いた雪が、また降り始めたんだろう。あんまり積もらないといいんだけど。

そんなこと思いながらジェイドさんのコートをハンガーにかけて、私は彼の問いかけに答えた。何者なのかを突き詰めると、たぶんこうだ。

「世界中の子ども達に、夢と愛を配って歩くおじいさん……かな?」

ハンガーを暖炉のそばにかけて振り返れば、何やら難しいカオをしたジェイドさんと目が合う。そんなに険しい表情、しなくてもいいのに。

てゆうか、その情報は一体どこから……。なんとなく想像はつくけど……。


私の言いたいことを察したのか、彼が頬を緩めた。

「エルが、まじめな顔をして話してくれたんですよ」

「……シュウさんが?」

その口からジェイドさんの幼馴染の愛称が飛び出したことに、私は小首を傾げてしまった。てっきり私の従姉の名前が出てくると思っていたから。

ちなみに“シュバリエルガ”だから“エル”だそうで。

……ここだけの話、ジェイドさんはシュウさんがその愛称を良く思ってないのを知ってて呼んでる。あと陛下も。

強くて怖い騎士団の団長さんだったとは思えない、なんとも可愛らしい響き。私は好きなんだけどな。



「そのおじいさんについては、ミナから聞いたと言ってました。

 ……子ども達が物心ついたから、いろいろしてあげたいそうです」

「ああ、それで……」

なるほど、それなら納得だ。

頷いた私を見て、ジェイドさんは言った。

「私もしてみたいです、さんたくろす」

「えっと……」

首を縦に振るのを躊躇してしまった私は、思わず心の中で呟いた。

目をキラキラさせる前に、まずは発音をどうにかしましょうかジェイドさん。





「でもさ、ジェイドさん。

 うちの双子ちゃん達には、サンタさんはちょっと早い気が……」

発音矯正を終えた私は、サンタさんに関するあれこれを説明したあとに小首を傾げてしまった。ジェイドさんが熱意を持ってくれてるのは嬉しいけど、我が家の子ども達は歩くのがやっとだし。サンタさん関連のイベントは、まだ楽しめないんじゃないかと思うんだ。


するとジェイドさんが、ぽかんと口を開けた。そして、ちょっと残念そうに眉を八の字に下げて溜息をついた。

「そうですか……」

見るからに落ち込んでしまった彼に、私は慌てて言葉をかける。

「えっと、大丈夫!

 恋人はサンタクロース、っていうフレーズ聞いたことあるし!

 ジェイドさん、今年は私のサンタさんになって!」


暖炉の炎が、ぱちっと爆ぜた。

ジェイドさんは、私の咄嗟のひと言を聞いて瞬きを繰り返して。そして、ぱっと顔を輝かせた。

「なるほど。相手が子どもでなくても可能なんですね。

 では早速、明日にでも空飛ぶトナカイを探してきます……あっ。

 煙突の掃除も手配しなくては……出来れば梯子も付けたいのですが」


これはもう一度、きちんとサンタさんについて説明しなくちゃいけないらしい。まずは、そう。彼のすることの大半はファンタジーである、ということから。

それにしてもなんだろう、この罪悪感は。

ジェイドさんの口から出た嘘みたいな斜め上発言に言葉を失った私は、ひと呼吸置いて息を吸い込んだ。

「あのねジェイドさん……ちょっと聞いてもらいたいんだけど……」



私とミナお姉ちゃんのいた世界では、本物のサンタクロースが大活躍している……そう思っていたらしいジェイドさんは、現実を聞いてがっくり肩を落として。

でもすぐに両手で私の肩を掴んだ彼は、「この気持ちをうちの子ども達が味わうのは嫌ですね。夢を壊さないように頑張ります。そのためにまずは……そうですね、トナカイを飼いましょう」と言ってくれたんだけど……。


とりあえず今年は私のサンタさんになってくれるらしいので、それで良しとしよう。

さて、何をおねだりしようかな。















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いつもありがとうございます。ふと思いついたお話でした。

また書けたら置きにきます。

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