渡り廊下⑪
~肉も必要です~
「ミナ、ちゃんと肉も食べた方がいい」
「・・・う」
「どうした」
「赤ちゃんが、食べたくないって言ってます」
「嘘をつくな」
「ほんとに、食べるとお腹が張るんだってば」
「・・・どれ」
「あ、触っちゃダメ!」
「ひと口食べてみろ」
「・・・や、」
「いいから、食え」
「・・・はぁい・・・」
「・・・」
「もぐもぐ」
「・・・蹴ったな」
「ほら、嫌だって。
い、いた、いたた」
「もうひと口」
「えー・・・?」
「いいから」
「・・・もぐもぐ」
「治まったな」
「・・・どうしよう、元気なくなっちゃった」
「違うだろ。
ほら、シエルが催促してるぞ」
「・・・シエルの、シエルの裏切り者・・・!」
「肉が好きなのか。
俺の子だ」
「そこで確認するの?!」
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こんな胎児、いるわけないですが(笑)
シュウとシエル、男同士通じるものがありそうな、なさそうな。
そしてミナ、肉に敗北。
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~病院の待合室にて~
「ねえシュウ、しりとりって知ってる?」
「しりとり・・・?」
「そう。
あのね、言葉遊びなんだけど・・・」
「・・・わかった。やってみよう」
「うん。
じゃあ私から・・・しりとり、の“り”!」
「り・・・リリア」
「リリア?
・・・アンチョビ」
「ビ・・・ビシューテ」
「テ・・・テーブル」
「ル・・・ル・・・ル・・・」
「降参?」
「・・・ダメだ、思いつかない」
「・・・ええ、たくさんあるじゃない」
「いや、ダメだ。
“ル”で始まる酒は飲んだことがない」
「・・・シュウ・・・。
そんなルールはないんだよ・・・」
『ミーナさん、どうぞー』
「あ、はーい。
・・・じゃあ、行ってくるね」
「ああ。
何かあったら呼べ」
「はーい」
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病院の待合室にて、2人でしりとり。
シュウ、思いつく言葉がお酒の名前。ダメだこりゃ。
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~レアな状況~
「最近雨が多いな。
この時期は仕方ないんだが・・・」
「じめじめするね~。
食材、早く食べなくちゃ。カビはえちゃう」
「ああ。
・・・そうだ、今日は俺が食事を作るか」
「ほんと?」
「ミナは本でも読んでいるといい」
「・・・うーん・・・じゃあ、編みものでもしてるね」
「編みもの?」
「ん、シエルの帽子。きっと生まれてしばらくしたら、寒くなるから。
・・・と、シュウの何かも編むから。
これからね、これから。だから焼きもち妬かないで、ね?」
「・・・そうか」
「ちゃんと考えてるからね。
心配しないで」
「ああ」
「・・・んー、でも、毛糸、もっと買わなくちゃ。
シュウは、何色が似合うかなぁ・・・。
ね、何色が好き?」
「ミナが選んでくれた色なら、何色でもいい」
「そう・・・?
じゃあ、やっぱり緑かな」
「んー、いいにおい・・・。
何作ってるの~?」
「ほほ肉の煮込みだ」
「・・・肉・・・。
それはお酒に合いそうですねぇ・・・」
「心配するな。
ちゃんとお前の好きなものも作る」
「ほんと?」
「ああ。
ちゃんと作ってやるから、お前は座って・・・」
「ダメ?
キッチンに立つシュウの姿、見てちゃダメ?」
「・・・見ててどうするんだ」
「ダメ?
蒼鬼の貴重なお料理シーン、独り占め・・・ダメ?」
「・・・希少価値の問題か?」
「そそ。まあ、これからお願いすることが増えると思うけど。ね?
・・・あ、エプロンあるんだった」
「それは断る」
「えええ、そんなぁ・・・」
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ミナに何かを編んでもらいたいシュウと、雨の日の、ごはんの支度。
シュウのエプロンは、ピンクか真っ白がいい。
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~あーん~
「ほら、あーん」
「・・・(自分で食べれるんだけどな)
・・・(これ、断ったらどうなるんだろう)
・・・あーん」
「あと少しだ。頑張れ」
「・・・ん。
でももう、お肉嫌いじゃなくなったから、1人で食べれるんだけどな」
「いいから、ほら」
「あむ・・・もぐもぐ・・・」
「お、あと少しだ。
頑張れミナ」
「いやだから、私1人でも・・・」
「ほら」
「はむ・・・もぐもぐ。
・・・って、違うんだってば」
「ほら」
「む・・・んぐ」
「よし、あと少しだ」
「何かが違う気がするんだけどなぁ・・・」
「次、ほら」
「あむ・・・・・・あ、気づいたらもうほとんど食べちゃってた」
「よし次で最後だな・・・ほら」
「うーん・・・。
何かが違うような気がするんだけどなぁ・・・。
あーん・・・」
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「渡り廊下1周年記念」10話、直後の「あーん」の場面です。
「あーん」を繰り返す蒼鬼。
ちょっとしつこいと思いつつ、付き合ってあげるミナさん。
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~夫婦あるある~
「なんで起こしてくれなかったのー?!」
「いや、起こしたんだが」
「それは起こしたって言わないの!」
「・・・でも、お前のあの熟睡の仕方は、なんだか異常だったぞ」
「え?」
「どれだけ起こしても起きないし・・・」
「そんなに?」
「ああ・・・仮死状態か何かかと思ったくらいだ。
おかげで、朝方まで寝付けなかった」
「えええ、ごめんなさい・・・」
「いや、俺は大丈夫だが」
「・・・私も大丈夫だよ?
むしろたくさん寝て、体がすごく軽いし」
「・・・なら、いいんだが・・・」
「うん、すっごく元気なうちにお弁当、準備しちゃおうっと」
「・・・暑いなぁ・・・やっぱり揚げ物って苦手」
「ミナ、代わるか」
「ん、じゃあ・・・揚げ物だけお願いしようかな」
「ああ」
「ねぇそれ、もうちょっと揚げた方がいいんじゃないかな?」
「そうか・・・?」
「あー、っと・・・はいこれ、バットの下に敷いておいてね」
「あ、ああ・・・」
「あ、シュウ、」
「ミナ、」
「・・・なあに?」
「任せるなら、あまり口出ししないでくれるか。動きづらい」
「・・・ごめーん・・・」
「揚げ物ありがとね。
あとは私が作るから」
「ああ、無理はするなよ」
「はーい」
「この野菜も巻くのか?」
「そうだよ?」
「これ、少し大きく切りすぎじゃないか?」
「えー、そうかなぁ・・・」
「芋、潰しすぎじゃないか?
もう少し形が残っていた方が好きなんだが」
「しゅーうっ?!」
「ん?」
「口出ししないで。
あっち行って、本でも読んでて!」
「・・・悪い」
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「渡り廊下1周年記念」11話、朝目が覚めたミナがお弁当のおかずを作る場面。
普段一緒にキッチンに入ってもあまり気にならないのに、今日はどうやら2人して相手のやること為すこと気になるらしく。
つい、口出ししてしまいます。
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