こかげ⑪
~秘密の花園?~
「・・・白薔薇さま、帰った?」
「あ、ああ・・・はい。
お騒がせしました」
「う、うん、大丈夫・・・」
「・・・あー・・・疲れたぁぁ・・・」
「ね、ねぇリアちゃん?」
「はい、何でしょう?」
「何も、ないんでしょ、白薔薇さまとは・・・?」
「・・・ミエルさん、何想像してます?」
「え?
・・・あ、ああ、ううん何も~」
「あれは、違いますからね?!」
「分かってるって・・・ちょっとびっくりしただけ!
まさか、リアちゃんが白薔薇さまとキスするなんて・・・意外で意外で・・・」
「キスしてません!」
「・・・ああ、大丈夫よ。
私、そういう偏見とか持たな・・・」
「してないんですってば!」
「えー、照れてる?」
「ほんとにないんだってばー・・・」
「そうなの?」
「そうなんです」
「なんだ・・・」
「がっかりするのも間違ってません?
大体、私、人妻ですからね?!」
「そっか、そうだよね」
「・・・もぅ、そうやって私で遊ばないで下さいよね!」
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「こかげ1周年記念」10話の直後、ミエル焼き菓子店での会話。
ヴィエッタさん、ジェイドさんに同じく溺愛系、独占系。
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~取引成立~
「つばきー?」
「あ、ジェイドさん」
「もう帰れますか?」
「・・・えっと、待ってね。
ああ、ちょうどそこ、椅子あるから座ってて」
「はいはい。
急がなくていいですよ。妊婦さんなんですから・・・ああもう、聞いてます?」
「はいはーい、分かってるってー。
・・・ミエルさーん?」
「・・・おや?
なんだか、店の雰囲気がいつもと・・・」
「ん?
どしたの、ジェイドさん。
難しいカオしちゃって・・・?」
「・・・いえ、何か・・・店の雰囲気に違和感が・・・」
「・・・そ、んなわけないよー。
きっと気のせいだよ。早く帰ろ」
「なるほど・・・分かりました。
屋敷でゆっくり聞きますか」
「いやいやいやいや、何もなかったんだってば!」
「じゃあ、誰かは来たんですね。
おそらく、私の知っている・・・ああ、あの子ですか」
「あの子って、どの子・・・?!」
「オーディエとか。
・・・じゃなかったら、ヴィエッタ・・・とか?」
「・・・ま、参りました・・・」
「どちらです?」
「りょ、両方です・・・」
「分かりました。
彼の方は、とりあえず明日お仕置きですね。
ヴィエッタの方は・・・」
「あ、補佐官様・・・お迎えですか」
「ああどうも、お勤めご苦労様ですね」
「・・・あれ、珍しいですね。
今日は中に入って待ってるんですか?」
「ええ、つばきのエプロン姿を堪能してます」
「あ、そういえば夏物は、色違いであと2つ作ろうかと思ってて・・・。
せっかくだから同じ布で、ヘッドドレスも作りたいんですが・・・そうなると、」
「髪の結い方を変えた方が良いのですね?」
「おぉぉ、補佐官様、さすが話が早いですね!」
「もちろん協力しますよ。
・・・楽しみにしてますから、お願いしますね」
「お任せ下さい!
そうなると、またリアちゃん人気が高まって・・・今日みたいに、」
「ふむ」
「あ、ミエルさん!
しーっ・・・」
「ああ、ごめ、」
「やはり今日、誰かと何かあったわけですね?
・・・ところで、つばきの衣装代、援助いたしましょうか?」
「いいんですかっ?」
「ええ、ぜひ詳しいお話を伺いたいですねぇ」
「実はね、白薔薇さまがリアちゃんに迫って・・・」
「やだやだやだやだっ!
だからキスなんかしてませんからーっ!」
「・・・それはそれは・・・妬けますねぇ・・・」
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「1周年記念」10話直後・・・ジェイドさんとミエルさんの取引が成立した瞬間。
つばき、帰ったらきっと問いただされて洗いざらい白状するんでしょう。
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~ルルゼが屋敷にやってきた~
「ルルゼ~!」
「リアさん、お久しぶりです」
「元気そうだねぇ」
「はい、とっても!」
「団長は、毎日お屋敷に帰ってくる?」
「うーん・・・毎日、ではないですけど帰ってきます」
「・・・やっぱり窓から?」
「うふふ、やっぱり窓から」
「せっかく玄関があるのにねぇ・・・」
「おや、ルルゼさん」
「あ、補佐官さま。
お邪魔してます」
「ええ、どうぞどうぞ。
久しぶりで話したいことも沢山あるでしょうし、ゆっくりしていくといいですよ」
「はい、ありがとうございます」
「・・・つばき?」
「うん?」
「お喋りに夢中になりすぎて、体に無理のないようにね?」
「・・・はぁーい」
「返事の歯切れがよくないですねぇ」
「はい、はいはいはいっ」
「・・・よろしい。
私は少し出掛けてきますから、良い子にしてるんですよ?」
「はいっ」
「補佐官さまって、本当に心配症なのね」
「そうなんだよねぇ、いっつも大げさなの。
結婚したっていうのに、未だに子ども扱いすることがあってさ・・・」
「でも、心配なんでしょうね。リアさんのことが」
「それ、どういう意味?」
「あ、え?
いいえ、あの、可愛くって放っておけないっていう意味です・・・!」
「・・・そういうことなら、まあいいか・・・?」
「よし、じゃあ今日はクッキーを焼こう!」
「クッキー?」
「うん。
型抜きして作ろうよ。
・・・ほら、動物のカタチとか、ハートとか・・・」
「これは・・・お花、かしら・・・」
「うん、そうそう。
いろいろ触ってみて。
・・・って、もしかして結構見えるようになった?」
「うーん・・・ぼんやりとなら。
近くで見た時に、大きな家具の輪郭が、ぼんやり分かるくらいには回復したみたい」
「すごーい!
リュケル先生って、やっぱり本当はすごい人なんだね・・・。
じゃあ、あともうちょっと見えるようになったら、団長の顔も見えるようになるかも?」
「うん・・・なんか、ドキドキしちゃって・・・。
だからまだ、あんまり近くで見ないようにしてるの」
「か、かわいー」
「アヒルさんと、クマさんと、馬と・・・ハートと星と、それから・・・」
「持って帰る分は、先に包んじゃった方がいいかも。
私、我慢できなくて食べちゃいそうだよ」
「うん、じゃあ・・・」
「ルルー、帰るよー」
「わぁっ」
「あ、おひさー」
「だんちょ・・・ちゃんと玄関から来て下さいよ・・・」
「うん、ごめーん」
「謝罪が軽い・・・すかすか過ぎる・・・」
「さ、ルル」
「はい、ロウファさま」
「え、本当にもう帰っちゃうの?」
「うん、だってオレ、3日ぶりに家に帰るんだもん。
いろいろ、したいことあるしー」
「そ、そうですか。
どうぞどうぞ・・・」
「・・・人妻ちゃん、今いけない想像したでしょ」
「してません!!!」
「あ、ロウファさま、ちょっと待って。
帰る前に、リアさんに言っておきたいことが・・・」
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ルルゼがお屋敷に遊びに来て、2人でクッキーを焼いたり、お喋りしたり。
つばきは、焼いたクッキーを誰にあげるのでしょう。
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~父の日~
「教授、今大丈夫ですか・・・?」
「はい、どうぞー」
「おじゃましまーす」
「珍しいね、1人で。
・・・あ、もしかして食事の時間?」
「ううん、違うんです。
ちょっと、渡したいものがあって」
「渡したいもの?
・・・ジェイドに刺されたりしないよね、僕?」
「それは、大丈夫だと思うけど・・・。
あの、あっちの世界で“父の日”っていうのがあって・・・」
「なるほどね、そういう日があるんだ~」
「はい。
で、教授は今は、私のお義父さんだから・・・これ、どうぞ」
「なあに、これ?」
「クッキーです。
この前、ルルゼと一緒に作ったの。
ちょっと不格好だけど、感謝の気持ちはいっぱいこもってます」
「おぉぉおぉおぉぉぉっ」
「いや、あの、」
「むむむむ、娘からの初めてのプレゼント!
・・・どうしよう、どこに飾っとこう・・・」
「いや、食べて欲しいんだけど」
「食べる?!
そんなもったいないことしろっていうの、僕に?!」
「・・・え、っと・・・いや、まあ、好きにしてもらっていいんですけど・・・」
「ありがとうリアちゃん、一生大事にするよ~」
「あ、いえ、どういたしまして・・・じゃ、これで・・・」
「・・・で?」
「え?
ジェイドさん?
なんか、怒ってる?」
「・・・私にはないんですか、クッキー」
「あ、あぁ・・・そういうことね・・・」
「ないんですか?
まさか、本当に?」
「ええっと・・・あの・・・」
(どうしよう、我慢できなくて食べちゃったなんて言えない・・・!)
「酷い!
私の分、ないんですね?!」
「いやいやいや、だって父の日だからね?」
「私だって父です!
つばきのお腹の子の父親ですよ・・・!」
「そんな、そこまで絶望しなくても・・・」
「父親認定されてないってことですか・・・自覚が足りないってことですか・・・」
「父の日のプレゼントはさ、子どもが親に贈るっていう・・・。
赤ちゃんだから、まだ出来ないじゃない、ね?」
「・・・そうなんですか・・・?」
「そう、そうなんだよね!
だから、赤ちゃんが大きくなったら、私が一緒にプレゼントあげるから!」
「・・・本当に・・・?」
「本当!
約束する!
絶対あげるから!」
「・・・分かりました・・・。
カップケーキ食べたいです・・・」
「う、うんうん、取りに行ってくるから待っててね!」
(・・・なんか、妊娠してからジェイドさんのやきもち、レベルが上がってる・・・?)
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ルルゼと作ったクッキー、父の日用でした。狂喜乱舞した教授に、つばき若干引くの図。
本当はもっとあったけど、つばきが食べちゃいました。
ジェイドさん、今回ばかりは教授に惨敗。
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