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こかげ⑩










~まだ、秘密~


「つばき、膝枕して下さい」

「・・・え」

「ダメですか?」

「ダメじゃ、ないけど・・・どうして今?」

「・・・だって、最近触らせてくれないじゃないですか。

 膝枕してもらわないと、今日という今日は安眠出来ません」

「そんなこと言ったって・・・仕方ないよね、月に1回のこの時期は我慢しようよ」

「分かってます、耐えてるんです。

 これでも自分と戦って、なんとか打ち勝っているんです。

 ・・・ねぇ・・・つばきも、我慢してます?」

「ぅえっ?」

「つばきも、私に触れたいって、思ってくれてます?」

「・・・なんでそんなこと・・・!」

「いいじゃないですか、聞かせて下さい。

 私に触れられたいって、思ったりもしますよね?」

「し、し・・・」

「ん?」

「しま、しま・・・!」

「しま?」

「・・・す、けど・・・!」

「よかった。

 じゃあ、大人しく待ってます。

 月に一度のこの期間が終わるまで」

「・・・う、うん・・・」

「それじゃ、とりあえず今日のところは膝枕で」

「・・・じゃあ、ちょっとだけだよ・・・?」



++++++++++++++++++++++++++++++


「こかげ1周年記念」の4と5の間くらいの会話。

妊娠が発覚しても、ジェイドさんには月イチのあの期間がきた、と説明しているようです。

そして彼女の不自然な態度から、ジェイドさんは屋敷の使用人達から情報を集めます。


++++++++++++++++++++++++++++++








~眠れなくて~


「うー・・・」

「つばき?」

「ジェイドさーん・・・」

「どうしたんです?

 大丈夫ですか?

 変な夢でも見ました?」

「うぅ・・・違うの、何か食べたいの・・・」

「何かってあなたね・・・今、夜中ですよ」

「だって、お腹すいて眠れない・・・」

「我慢しましょうね。

 朝になったら、美味しい熊さんの朝ごはんが・・・」

「えぇぇ・・・?

 無理、我慢とか無理です」

「まったく・・・知りませんよ、お腹痛くなっても・・・」


「こんなので、本当にいいんですか?」

「うん!

 胡瓜が食べたかったの!」

「ぽりぽりぽりぽり・・・何の動物ですかあなたは・・・」


「う、」

「ほら、こんな夜中に食べるから・・・。

 お腹が痛くなったんでしょう?」

「ちが、」

「はいはい、もう食べるの止めましょうね」

「や、だぁ・・・」

「つばき・・・?

 あ、こら、離れなさい」

「う、じぇ、ぃどさ・・・ん」

「え?

 え、え?!」

「すぴー・・・Zzz」




「食べながら寝るとか、そんなことする人、本当に居たんですねぇ」

「うぅ・・・それはもう忘れて下さい・・・」

「いやいや、お腹がすいたからと駄々をこねて、あげくに途中で寝てしまうだなんて・・・」

「もうやめてってば・・・!」

「いやもうほんとに、つばきったら可愛いですねぇ」

「ジェイドさんジェイドさんジェイドさん!

 周りの人に聞こえてるからね・・・?!」

「あのケータイとかいう機械が残っていたら、“しゃめ”でしたっけ?

 ぜひぜひ残しておきたかったです」


「ジェイドさん嫌い!」

「私は、つばきの怒った顔、大好きですよ~」

「何言ってるの、もーっ」

「泣いた顔は、もっと好きです」

「・・・・・・?!」




++++++++++++++++++++++++++++++


妊婦つばき、夜中に胡瓜を食べるの巻。

ジェイドさん、つばきの怒った顔が好きらしいです。

泣いた顔はもっと好きらしいです。しょうもない大人です。


++++++++++++++++++++++++++++++








~チョコレートが食べたくて~


「ね、ジェイドさん?」

「ん?」

「お姉ちゃん達の赤ちゃん、男の子と女の子、どっちかなぁ」

「そうですねぇ・・・」

「もうすぐ分かるって言ってたよね」

「ええ」

「分かったら、お祝い用意しておきたいんだ」

「もう、ですか?」

「うん。

 だって、お姉ちゃんの予定日あたりに、私に悪阻の酷い時期がきちゃったら・・・」

「ああ、そうですねぇ・・・街で買い物なんて、している場合ではないですね」

「でしょ?

 だから、性別が分かったらすぐにでも買いに行きたいの」

「・・・なるほど・・・」

「ジェイドさん?」

「いや、やめましょう。

 買い物は、私か家の者が行くことにして・・・」

「えぇぇー?!」

「おそらくミナの出産は、秋から冬の初めあたりのはずです。

 性別が分かるのは、おそらくもうすぐ・・・王都中で風邪が大流行する時期でしょうから」

「・・・それで、どうして私が行っちゃダメなの?」

「あなたが風邪でも引いたら大変です」

「むー・・・」

「ね、つばき。

 心配なんです。我慢しましょうね?」

「うー・・・」

「お祝いは、落ち着いてからでも贈ることは出来ますから」

「・・・じゃあ、ジェイドさん・・・」

「ん?」

「その時は、一緒に選んでくれる?」

「もちろんです」

「私達の赤ちゃんの名前も、一緒に考えてくれる?」

「当然です」

「赤ちゃん用品、揃えるの手伝ってくれる?」

「何言ってるんですか」

「チョコレート、買ってきてくれる?」

「・・・その手には引っ掛かりませんよ。

 先生に、甘いもの控えなさいって、言われたんでしょう?」


「・・・ちぇ。バレたか・・・」

「つばき・・・あなたって子は・・・」

「だって、だってだって、チョコ食べたいんだもん・・・っ」

「・・・じゃあ、ひとかけだけ、ですよ・・・?」

「ほんと?!

 ほんとにいいの?!」

「・・・仕方ないですから・・・一緒に怒られてあげます」

「やったぁ!

 ジェイドさん、だいすきー!」

「ほんとにもう・・・今回だけですからね?」

「うんうん、分かってますー!」

「はぁぁ・・・。

 じゃあほら、あーん、してごらんなさい」

「・・・あーん・・・。

 んー・・・甘くておいしー・・・」


「この顔に、やられちゃうんですよねぇ・・・」

「えへへー。

 一緒に怒られようね、ジェイドさん♪」




++++++++++++++++++++++++++++++


妊婦つばき、チョコレートが食べたくてジェイドさんを引っかけようとして、失敗。

でも結局ジェイドさんが折れて、成功。

・・・そして、2人はお医者さまに怒られるのでした。


++++++++++++++++++++++++++++++








~鉄子さん~


「て、鉄子さん・・・!」

「お久しぶりでございます」

「元気でしたか?」

「はい、とても。

 リア殿は、お変わりありませんでしたか」

「もちろん、元気です!」

「・・・実は先日、ミエル焼き菓子店に参りました」

「え?!」

「リア殿の、エプロン姿を拝見しに・・・」

「・・・えぇ?!」

「ですが残念ながら、その日は休日だったそうですね。

 また後日、伺うつもりでおりますが・・・」

「ミエルさん、何も言ってなかったよ・・・?」

「私も名乗りませんでしたので。

 ・・・ですが、」

「ん?」

「夏用のエプロンに変わると聞きました」

「・・・情報ツウですね・・・」

「この情報は、補佐官殿から聞きました」

「じぇいどさーん?!」

「・・・え、私が怒られるんですか?」

「言いふらさなくていいです、ほんとに!」

「いいじゃないですかー。

 自慢したかったんですよ」

「補佐官殿は、焼き菓子店で働くリア殿は、共有出来るのですか」

「・・・難しい質問ですね。

 今のところ、我慢出来ます。

 自慢したところで相手が見てなかったら、自慢になりませんから」

「うちの奥さん、可愛いでしょう・・・そういうことですか」

「そうですよ、いいでしょう?」

「・・・リア殿」

「は、はいっ」

「補佐官殿には、休暇が必要ですね。過労の症状が出ています」

「・・・鉄子さんのそんな顔、初めて見ました・・・」




++++++++++++++++++++++++++++++


「こかげ1周年」より執務室にて、つばき・ジェイドさん・鉄子さんの会話。

つばきにでろでろなジェイドさんを見て、鉄子さんの表情が歪みました。


++++++++++++++++++++++++++++++








~元カノって、なあに?~


「つばき?」

「なぁに、ジェイドさん。

 とりあえず手を動かそうね」

「・・・厳しいですね・・・」

「そりゃまあ、仕事が滞ってますから」

「・・・赤い花の雑用ちゃんだった頃が懐かしいなぁ・・・」

「何か言いました?」

「いえ、何も」

「・・・はい仕事仕事ー」



「ところで、ちょっと気になっているんですが」

「なあにー?」

「元カノ、って何ですか?」

「・・・え?!」

「さっき、言ってたじゃないですか。

 元カノがどうのって」

「・・・えっと、ええっと」

「まさか、いかがわしいことですか?」

「いやいやいや、全くそんなことはないですよ!」

「・・・じゃあ、何ですか?」

「え・・・と、元カノっていうのは・・・その、以前の恋人達のこと、かな?」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・ふぅん・・・?」

「じぇ、ジェイドさん?」

「たくさんいる、元カノ・・・ですか」

「あれは、なんていうか気持ちが荒れてて、ですね・・・」

「じゃあ、つばきにもいるんですか?

 元カノ?」

「・・・否定しないの?

 ねえ、ジェイドさんって元カノたくさんいるの?」

「たくさん、ではないと思いますよ。

 ・・・人並みです。比べたことはないですが」

「・・・非難したらいいのか、ほっとしたらいいのか・・・」

「それで、つばきは?」

「ええっと、私の場合は元カレ、って呼ぶんだけどね。

 男性だから、元、彼氏、ってことで。

 女性だと、元、彼女、だから」

「・・・はぐらかさないで教えて下さいよ」

「ひぇぇ・・・?!」

「元カレ、何人いたんです?」

「・・・えっと、あの、ジェイドさん?

 目が据わってるけど・・・怒ってないよね?」

「ほら、つばき。

 怒らないから教えなさい」

「嘘だ、そういうこと言う先生は大抵怒るんだーっ!」

「あ、こら!」


「あっぶない・・・。

 もうちょっとでジェイドさんに点火するとこだった・・・」

「リア殿」

「あ、鉄子さん。

 お疲れさまです・・・ああそうだ、ジェイドさんにお茶、お願いします」

「はい・・・ですが、さきほども・・・」

「ああ、いいんです。

 ちょっと落ち着いてもらわないと、あれなんで・・・」

「・・・そうですか。構いませんが・・・ひとつ、お聞きしても?」

「はい、なんでしょう?」

「元カノ、というのは、一体どういう意味の言葉なのでしょうか」

「・・・き、聞いてたの鉄子さん・・・?!」

「訂正します。

 聞いていたのではなく、聞こえてきたのです」

「・・・ひぇぇぇ・・・!!」




++++++++++++++++++++++++++++++


「こかげ1周年」の8、のお話の直後あたり。

ジェイドさんは、つばきが意味の分からない単語を口にしていたのを覚えていたのでした。

めでたしめでたし。



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