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渡り廊下⑥









~子犬と蒼鬼~


「うわぁ、可愛い・・・!」

「そうか?」

「シュウは、犬、嫌い?」

「・・・どっちでもないな」

「興味がない、ってこと?」

「ああ」

「えー・・・こんなに可愛いのに・・・」

「どのへんが?」

「たくさんあるでしょ」

「ん?」

「目がきゅるんとしてて、可愛いじゃない。

 上目遣いで見つめられたら、もう。

 ・・・私のこと見て、って甘えられてる感じがして堪らないんだよね。

 それにね、ぎゅーってすると、暖かくてシャンプーの匂いがするの。

 家の中のどこに行くにもついて来て、たまに悪戯とかしちゃったりして。

 叱ると、しゅん、とするんだけど、それがまた可愛いんだよ。あれはずるいと思う。

 一緒のベッドで寝ると、冬は湯たんぽみたいで暖かいんだよ・・・って、」

「なんだ」

「う、ううん・・・なんでもない・・・。

 ごめん、ちょっと喋りすぎたかも」

「気になるな。

 急にどうした、犬の話はいいのか」

(・・・話してたらシュウの顔が思い浮かんじゃったなんて、絶対言えない・・・!)

「い、犬の可愛さはもう伝わったでしょ?」

「それなりにな」

「うん、良かった。

 じゃあ、お店に入って抱っこさせてもらって・・・」

「おい、」



「わぁ~、可愛い~」

「・・・」

「いい子だね、おとなしい・・・」

「そろそろいいんじゃないか?

 子犬もずっと抱かれていると、気疲れ、」

「あ、見て、寝ちゃったみたい」

「・・・もう店員に返せ。

 早く用事を済ませて帰るぞ」

「え、あ、あーっ。

 ・・・もうちょっと抱っこしたかったのになぁ・・・」

「全く、犬の分際で・・・」

「え、なあに?」

「何でもない。行くぞ」

「え、わっ。

 ちょっと、シュウ歩くの速い・・・っ」

「婚姻届よりも犬を選ぶなんて、躾が必要か」

「・・・ん?

 何か言った?」

「いや・・・家に帰ったら教えてやる」

「・・・あれ、シュウ、何か不機嫌?」







++++++++++++++++++++++++++++++


渡り廊下の小話「彼の隣に並んだら」が始まる少し前の、ミナとシュウの会話でした。

婚姻届を取りに行く道すがら、用事を忘れて子犬にメロメロになってしまったミナが、このあと家に帰ったらお仕置きされるようです・・・。

シュウは、子犬の可愛さには勝てない自覚があるんでしょう、きっと。


++++++++++++++++++++++++++++++









~結婚式前夜は、早めの就寝をおすすめします~


「痛くないか?」

「うん、大丈夫・・・。

 肩揉み、上手なんだね・・・」

「そうか、なら良かった」

「ん、効くねぇー・・・」

「・・・明日だな」

「うん」

「緊張してるか?」

「そりゃまあ、しますよ。

 人生で初めて、これで最後・・・と思ったらね・・・」

「そうか」

「そうです」


「・・・あれ?シュウ?

 腰は大丈夫なんだけど・・・」

「俺が大丈夫じゃない」

「え?

 ・・・ええ?」

「なぁ、」

「ダメ」

「・・・何故」

「この手をどけて下さい蒼鬼さん」

「だから何故」

「明日は結婚式なんだよね。

 私、ぎっしぎしになりたくないもん・・・」

「手加減する」

「やだ」

「味見だけ」

「う・・・」

「なぁミナ、」

「・・・やっぱりダメっ。

 おやすみ!」

「・・・これじゃ眠れそうにないんだが」

「し、知らない!」


「・・・なら、明日の夜は?」

「うーん・・・い、いいですよ・・・」

「そうか、よし、早く寝よう」

「・・・」







++++++++++++++++++++++++++++++


彼の隣に並んだら、結婚式前夜。“昨日は言われた通り控えた”というシュウの台詞に関する会話でした。

・・・こんなシュウ、他の人には見せられないな・・・と思うミナなのでした。


++++++++++++++++++++++++++++++









~王宮の日常(陛下の脱走癖)~


「いいですね、ここにある書類、全部片付けておいて下さいよ!」

「へーい」

「返事は、」

「はいはいはいはいはい」

「・・・お願いしますよ、ほんとに・・・。

 私、これから少し休憩してきますからね。

 サボったら、鉄拳制裁ですからね?!」

「分かった分かった!」


「・・・よし。

 ジェイドめ・・・余を仲間はずれにしようなどと百年早いわ!

 何のために離宮の庭を提供したと思っとるんだ!」


「あーっ!!!」

「どうした?!」

「また陛下が脱走しました!」

「まずいぞ・・・!

 補佐官殿から、くれぐれも、と言いつかっていたのに・・・」

「手分けして探すしかないな」

「じゃあ私、白の侍女に応援を頼んできます!」

「俺は紅の侍女に・・・」


「・・・ふ、灯台の下もよく探せ、と言うではないか・・・。

 まあしかし、急がねば・・・式が終わってしまう・・・。

 よし、捜査をかく乱させながら移動するか・・・」






++++++++++++++++++++++++++++++


彼の隣に並んだら3、のあたりの陛下の大脱走。

普段から脱走してるので、手馴れたものです。


++++++++++++++++++++++++++++++









~蒼鬼の恋愛相談~


「ミーナ!

 お祝い持ってきたよ~!」

「元気な赤ちゃん生んでね、ミイナちゃん」

「ありがとう!

 わ、可愛い服・・・!」

「2人で選んだの」

「嘘つけ、アンのごり押しだったじゃんか。

 俺は、赤い方がいいって言ったのに・・・」

「えーっ?!

 ノルガだって、オレンジ色でいいっていったじゃん!」

「・・・あの、えっと2人共、」

「うるさい、喧嘩は他所でやれ」

「あ、シュウ・・・。

 ノルガとアンがね、お祝いに赤ちゃんの服をくれたんだよ」

「ああ、なかなか良い趣味だ。

 ありがとう」

「う、うん・・・どういたしまして・・・?」

「アン、驚きすぎだろそれ」

「いやだって、蒼鬼が素直すぎて気持ち悪い・・・」


「あれ、ノルガは?」

「夕食の材料が足りなくて、買い足しに行ってもらってる。

 ・・・寂しいか」

「気持ち悪いこと言わないで。

 べっつに、四六時中一緒にいなくたって平気だもん」

「・・・たいした強がりだ」

「ほっといてくださーい」

「そうもいかないんだが」

「蒼鬼・・・?」

「アン、お前、この前の祈りの夜に、ノルガから結婚を申し込まれただろう」

「なんで蒼鬼が知ってるの・・・?!」

「あいつから相談を受けた」

「最悪、どうしてそういうこと他人に喋るかな」

「怒りの矛先を向けるなら、俺にしておけ。

 訓練に集中していないようだったから、聞き出した。

 ・・・ともかく、心配しているから話をさせて欲しいんだが」

「・・・いやに下手だね、小娘相手に」

「そうピリピリするな。

 ・・・俺から見ると、2人は番で寄り添っているように見えるが・・・」

「そういう恥ずかしい台詞、よく平然と言えるよね・・・」

「真剣に心配してるからな」

「ノルガを?」

「お前もだ」

「あたしも?」

「ああ。

 ミナが、妹みたいなものだと言っていたからな。

 リアもノルガも身内みたいなものだし、この際1人や2人増えても同じだ」

「・・・そりゃどうも・・・。

 でも、あたしの心配はいいよ。

 今はミーナとお腹の赤ちゃんのことだけ考えてれば?」

「2人に幸せでいて欲しいと思うのは、余計なことか?」

「・・・ノルガは、何て?」

「まだ足りないみたいだ、と」

「足りない・・・って、何が・・・?」

「さあな。

 愛情か、信頼か、金か・・・それとも覚悟か」

「愛情は足りてる。

 十分過ぎるくらい足りてる。

 信頼もお金も、彼が持ってるものは全部、あたしには過ぎるくらい」

「そうか」

「・・・蒼鬼、ってさ。口、かたい?」

「とりあえず、アンに不利になるようなことはしないと約束出来る」

「・・・そっか・・・。

 あたし、孤児だからさ。

 怖いんだよね。家庭に夢はあるけど、どうしたらいいか分からなくて。

 ノルガとは一緒にいたいけど、」

「いればいいだろ。

 結婚して、どちらかが死ぬまで一緒にいればいい」

「あんたね、そう簡単に言うけどさ・・・」

「踏み切れない理由は、そこなんだな」

「・・・それは・・・」

「ま、ノルガも分かってるんだろうな」

「そう、思う・・・?」

「見てれば分かる。

 ・・・いつかの自分のようだ」

「蒼鬼でも、迷ったり悩んだり、そういうことあるの?」

「お前、俺をなんだと思ってるんだ・・・。

 いろいろあるんだ、これでも」

「そっか・・・」

「俺の場合は、ミナがいつ消えてしまうか分からなくて・・・。

 1日でも早く結婚してしまえ、と勢いで結婚までこぎつけた」

「うん。

 あっという間にミーナを取られちゃって、寂しかった」

「悪いな。こっちも必死だった。

 ・・・でも、別に俺たちが特別なわけじゃないんだよな」

「え?」

「誰だって、いつ死んでしまうかなんて分からないだろ。

 渡り人だろうが、この世界の人間だろうが・・・。

 ある日突然失うことが、ないなんて言えない。

 ・・・そう思ったら、迷ってる場合じゃないな」

「・・・それは、そうなんだけどさ・・・」

「ノルガと、ちゃんと話し合ってみたらどうだ。

 あいつも、アンが話をしてくれるのを待ってるだろうから」

「・・・ん、そうしてみる・・・ね、蒼鬼・・・」

「うん?」

「ありがと、心配してくれて・・・」

「・・・ああ」


「どうしたのアン、なんだか・・・」

「ミーナ・・・」

「やだ、もしかしてシュウに苛められたの?

 売り言葉に買い言葉で、返り討ちにあったんでしょ」

「いやミナ、」

「そうなのミーナ!

 蒼鬼が苛めるんだよ~!」

「おいアン、」

「しゅーうっ。

 アンは妹みたいなものなんだから、2人で優しくしようね、って言ったでしょ!」

「いやだからミナ、」







++++++++++++++++++++++++++++++


ミナ帰還後、アンとノルガが赤ちゃんへのプレゼントを持ってきたところ。

アン、実はノルガと結婚の話が浮上していました。

真剣に話をしていたというのに、最後の最後でアンの裏切りにより、シュウは損な役回りになってしまいました(笑)

おそらく気恥ずかしくてミナに泣きついて誤魔化したのでしょうが・・・。









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