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こかげ①





~メイドさんはうわさ好き~



「どうしよう!」

「え、何?やらかした?」

「お、お嬢様が、髪下ろしてフラフラしてた!」

「えぇ?!」

「シェイディアード様が、担いで行かれたんだけど・・・!」

「えええ・・・?!」

「薄茶色で、天使の輪があって、綺麗な髪だったなぁ・・・さ、触りたい・・・」

「こらこらこら、おかしな方を思い出さないで!」

「・・・はっ。

 お嬢様の荷物を持って、部屋の外で待機してないといけないんだった」

「え~・・・そんな、生々しそうな所に立ってないといけないの・・・?」

「うん、そういう言いつけだから。

 ちなみに、くじ引きで負けたから私が行かなくちゃ」

「・・・じゃあ、せいぜい耳塞いで、頑張ってきな。

 後でイロイロ教えてよね」


「・・・で、どうだったの?」

「うーん・・・なんか、」

「なんか・・・?」

「シェイディアード様が嬉しそうで、お嬢様は微妙なカオしてた・・・」

「・・・事後って感じだった?」

「うーん・・・わたし、そうゆうの分からない・・・」

「つっかえねー」

「そんなぁ~」

「どうなるんだろうねぇ、あの2人」

「さぁ・・・?

 でも、わたし、シェイディアード様が楽しそうで嬉しいけど」

「そぉ?

 私には子どもの世話焼いてるように見えるけどねぇ」

「そうかなぁ・・・?」

「まぁでも、私らのご主人様は働きすぎだよね。

 お嬢様に癒してもらえたら、私達も憂いが減るってもんだわ」

「そだね」

「でさ、どっちに賭ける?」

「賭ける?」

「そ、くっつく方と、くっつかない方」

「・・・ラズ院長に言いつけるよー?」

「固いこと言わないでよ~。

 ・・・で、どっち?」



++++++++++++++++++++++++++++++


「春を運ぶこかげの花」4話の最中、ジェイドさんのお屋敷にて。

お屋敷のメイドさん達は、しらゆり孤児院に縁のある子が多いらしい。

メイドさん達、噂大好き。


++++++++++++++++++++++++++++++






~彼らの密談~



「そうだジェイド、」

「なんです?」

「ひとつ、教えておいた方がよさそうだ」

「・・・どうぞ?」

「いつだったか、お前、ミナに手を出しただろう」

「・・・え、えぇと、まぁ、その・・・」

「いや、それは別にいい」

「はぁ・・・そう、ですか・・・?」

「いや、あの時はさすがに気が触れそうになったが・・・」

「・・・私は、あの時は完全に気が触れてました。

 でも、後悔はしてないですよ」

「・・・そうか」

「ええ」

「ああ、いや、その話がしたいんじゃないんだ」

「そうなんですか?」

「・・・あの後知ったことがあって・・・。

 結論から言えば、渡り人が皆同じ世界からやって来ているとすれば、の話だが、

 どうやら彼らは、俺たちの祖先が獣であることを知らないらしい」

「え?」

「俺も最初は信じられなかったが・・・」

「彼らは、そういう教育をされない世界から来た、ということですか?

 文明がこちらよりも進んだ世界から来ているのに?」

「いや、そうじゃない。

 彼らの世界には、獣から進化をとげたヒトは存在しないらしい」

「・・・えぇ?」

「ミナは、自分たちは猿から進化したヒトだと言っていた」

「・・・はぁ?」

「だから、俺も最初は信じられなかったと言ってるだろう。

 真面目に聞け・・・」

「いやいや真面目に聞いてるから、びっくりしてるんですよ。

 猿からねぇ・・・異世界って、不思議ですねぇ・・・」

「まあ、ミナからすれば、獣の本能が残る俺たちは・・・あれだ。

 理解しがたい行動ばかりをしてたのかも知れない、と思うようになったな」

「・・・なるほど・・・」

「戸惑って、当然だな」

「そうですね・・・」


「それで、どうして私にそんな話を?」

「・・・リアには、話しておいた方がいいと思って。

 ミナの時も思ったが・・・あまり、人を遠ざけることに慣れてないんじゃないか。

 ほいほい男の側に寄ったりして、目を疑うことが何度もあった。

 ・・・リアも寄ってきた人間を友人か何かと勘違いして、自分の首を絞める気がする」

「ああ、そういうことですか・・・」

「なんだ、お前・・・、リアのこと、違うのか?」

「え?

 ・・・あ、ええ、いや、」

「どっちだ」

「・・・なんであなたにこんなこと話さなくちゃいけないんです・・・」

「・・・あの時、怒り狂った蒼鬼が王都を破壊してまわらなくて良かったな、補佐官。

 ミナに全身全霊で感謝してくれ」

「だから、あれは・・・って、笑わないで下さいよ・・・」

「・・・悪い。

 いいものを見たな・・・たまには話してみるもんだ」

「・・・金輪際お断りします」

「そうか」

「ええ」

「じゃあ、酒」

「・・・まだ飲むんですか・・・?」


「・・・あ、誰でしょう。

 ちょっと待ってて下さいね」

「大丈夫か・・・?」

「舐めてます?

 私だって、一応何かあっても自分の身くらいは守れますよ」

「分かってるが・・・。

 ま、何かあったら呼べばいい」

「ええ。

 じゃあ、ちょっと出てきます」

「ああ」


「・・・どうしたんです」

「あー・・・っと、変なタイミングで来ちゃったんだったら、帰ります」


++++++++++++++++++++++++++++++


「春を運ぶこかげの花」24話

リアがジェイドさんの部屋のドアをノックする少し前の、彼らの会話。


++++++++++++++++++++++++++++++





~甘い匂い~



「♪♪♪~」

「・・・・・・」

「♪~♪~」

「・・・・・・」


「つばき?」

「?!

 ・・・あー・・・びっくりした。

 なんですかもー・・・」

「何してるんです?」

「何って、お菓子作ってるんですよ?」

「お菓子・・・。

 あぁ、どうりで甘い匂いがするわけですねぇ」

「ごめんなさい、換気扇、つけるの忘れてた」

「いえいえ、もっと甘い匂いを毎日嗅いでますから」

「・・・?」

「おや?

 シェフはどこに?」

「えっと、ちょっと買い物に行ってるらしいですよ。

 夕飯の材料で、足りないものがあるみたい・・・」

「・・・なるほど。

 それで、オーブンに入ってるのは何です?」

「カップケーキですよ。

 このクリームは、焼きあがったら上に乗せるんです♪」

「ふぅん・・・。

 よく作るんですか?」

「たまーに、ね。

 差し入れする時なんかに、作ってましたねぇ」

「差し入れですか・・・。

 相手は男性ですか、女性ですか?」

「・・・え、えぇと・・・」

「・・・つばき?」

「はい・・・?」

「今回は、誰のために作ってるんですか?」

「誰っていうか・・・」

「相手は男性ですか、女性ですか」

「えぇぇ?」

「どっちです?」

「どっちって・・・どっちもですけど・・・」

「・・・つばき?」

「ジェイドさん声低・・・や、あの、ちょ、近・・・ひえぇぇ」

「色気もなんにもない声ですねぇ・・・」

「なくていいです!

 ちょっと離れてー!」

「誰にあげるんですか?」

「いやだから、誰とかじゃ・・・ちょっ・・・」

「・・・私にもあります?」

「そりゃあ、もちろん・・・でも、」

「でも?」

「今焼いてるのは配る用だし、久しぶりだから練習も兼ねててっ。

 だから、ジェイドさんはこれの次にしようと思っ・・・」

「今回のも下さい」

「えぇぇ・・・上手に出来てたら」

「ください。ね?」

「・・・えー・・・じゃあ、」

「じゃあ?」

「このクリーム、泡立ててくれたら」


「もういいんじゃないですか?」

「ううん、もうちょい、ツノが立つくらいまで」

「・・・えー・・・」


「あぁっ!・・・つー・・・」

「何してるんです?!」

「ああ、大丈夫です。

 ちょっと熱かっただけ・・・」

「全くもう・・・!!

 ちゃんと冷やさないと」

「大丈夫大丈夫、ほら、焼けましたから。

 ・・・んー、いいにおーい♪」

「ほら、冷やしてからにしなさい」

「はぁーい・・・」


「よ・・・っと」

「わぁ、ジェイドさん上手!

 美味しそう!」

「ふふん」


「・・・んんん・・・っと」

「・・・おー・・・」

「ふふん♪

 意外と、こういうのは上手なんです」

「まだ食べちゃ駄目ですか?」

「そうですねぇ・・・じゃあ、ちゃんと食べれる味か、味見してもらおうかなぁ」

「・・・美味しいです」

「ほんと?!

 よかったぁ・・・じゃ、早速配りに行ってきまむぎゅぅ・・・」

「だーめ」

「ジェイドさーん?!」

「せっかく美味しいものが目の前にあるんですから、ね?

 お茶淹れてあげますから、もうちょっとだけ・・・」

「もう食べちゃダメですよ。

 みんなに配る分がなくなっちゃう・・・」

「じゃあ、配る分以外ならいいです?」

「配る分以外・・・?」

「ええ、例えば、これとか・・・」

「・・・!!!!!

 だっ・・・ダメです・・・!!」

「えええー、泡立て、頑張りましたよ・・・?」

「・・・いやあの、それは・・・ありがとございました・・・」

「どうしても、駄目・・・?」

「い、今はだめ・・・」

「いつになったらいいんです?」

「いつ・・・?!」

「だって、ずぅっと甘い匂いがしてるんですよ?」

「そうなの・・・?!」

「美味しそうな匂いです」

「ジェイドさん・・・!!」

「・・・わかりました、我慢します。

 そのかわり、ちゃんととっておいて下さいね」

「・・・・・・(こくこく)」


++++++++++++++++++++++++++++++


「春を運ぶこかげの花」29話の前あたり、ホルンから戻った後の休日の会話でした。

つばきは包丁が使えないので、お料理よりもお菓子作りを楽しむ子です。

2人の動作なんかは想像してお楽しみ下さい。


++++++++++++++++++++++++++++++





~鉄子さん、雑用代理になる~



「雑用の彼女が、体調を崩した。

 今日は執務室の警備は必要ないから、代わりに雑用を頼む」

「・・・私が、ですか」

「何か不満が?」

「いえ、雑用がおらずとも、執務が滞ることはないのでは?」

「・・・言い方を変える。

 早めに屋敷に戻りたい。手を貸して欲しい」

「・・・かしこまりました」


「失礼いたします。

 補佐官殿から、書類をお預かりしてまいりました」

「・・・あれ?

 いつもの雑用ちゃん、お休みですか?」

「体調を崩したそうです」


「失礼いたします。

 補佐官殿から、書類の訂正をしていただくよう、言い付かってまいりました」

「・・・え、いつものコは?」

「体調を崩して、本日は休養しておりますが」


「失礼いたします。

 補佐官殿のサインが済んだ書類を、お持ちいたしました」

「いつもの彼女、お休み?」

「はい」


「ただいま戻りました」

「ああ、ありがとう。

 もうすぐ次の書類があがるから、そこで勝手にお茶の用意でもして休んでいるといい。

 ああ、私の分も頼む」

「・・・・・・かしこまりました」


「どうぞ・・・」

「ああ、すまない。

 ・・・もう少し待ってくれ」

「・・・はい」

「そうだ・・・、

 彼女が休んでいることについて、何か反応はあったか?」

「・・・ええ、まあ。

 書類を届けに行った先々で、彼女は休みなのか、と」

「なるほど。

 ・・・尋ねてきたのは?」

「誰か、という点をお尋ねですか」

「いや、性別と年齢くらいでいい」

「・・・男性が大多数でした。年齢は、およそ18から45。

 女性からも質問されましたが・・・」

「・・・それで十分だ」

「かしこまりました」

「・・・それから・・・」

「はい」

「昨日、彼女が帰るところを見たか?」

「いえ・・・。

 本部に召集されておりましたので」

「何かあったのか?」

「民間人から、不審者を目撃したと届出があったそうです」

「・・・では、この部屋の外にいたのは他の者か」

「はい、ほんの少しの間ですが。

 指示により、交代で本部へ戻って、情報を共有することになっていました。

 何か問題でも・・・?」

「いや、ない。

 彼女が昨日から体調を崩していたのかも知れないなどと、仕方のないことを考えていただけだ」

「・・・・・。

 ・・・重篤な症状なのですか?」

「そうだな・・・少し熱が高いくらいか」

「・・・薬を飲んで安静にしていれば、3日もあれば十分回復するのではないかと」

「分かっている」

「・・・失礼いたしました」


「私は・・・」

「はい」

「このところの私は、どう見えるだろうか」

「・・・失礼ながら、仰る意味が理解出来ません」

「何か変わったと感じることは?」

「率直に申し上げても?」

「構わない」

「・・・お笑いになる姿を、見かける回数が増えたように思います」

「そうか」

「はい」

「・・・良い傾向なのでは、と」

「それを君に言われると、複雑な気持ちになる」

「失礼いたしました」


「カップケーキは、どうだった?」

「・・・ご存知でしたか」

「ああ、私も一緒に作ったから」

「・・・食べてしまいました」

「食べるために贈ったんだろうに・・・。

 私はクリームを泡立てた」

「・・・補佐官殿、お菓子作りがご趣味なのですか」

「いや、彼女に付き合っただけだ」

「・・・はぁ・・・」


「失礼いたします。

 補佐官殿より、書類を預かってまいりました」

「いつもの彼女、今日は体調不良で休んでるって本当か?」

「・・・はい」

「じゃあ、これ。

 喉にいいっていう、飴。

 彼女に会ったら渡してもらえるか?」

「・・・そういうことでしたら、補佐官殿を通された方がよろしいかと思いますが」


「ただいま戻りました」

「ご苦労・・・次の書類で今日は終わりにしておくから、少し待っていてくれるか。

 ああ、お茶のおかわりを頼む」

「かしこまりました」

「・・・・・・」

「・・・さきほど、彼女へのお見舞いの品を断ってまいりました。

 了解を得ず、勝手な判断をいたしましたが・・・」

「・・・いや、助かった。ありがとう」

「いえ。

 ・・・どうぞ」

「ああ、すまない」

「それから、」

「他にも何か?」

「いえ、外では何も・・・」

「・・・歯切れが悪いな」

「・・・私からのお見舞いの品は、彼女の元へ届きますか?」

「君が?・・・彼女にか?」

「・・・問題が生じるようなら、処分いたします」

「いや、そこまでしなくても・・・。

 ただただ意外だ・・・」

「存じております」

「ああ、気分を害したなら謝る。すまないな。

 それで、何を渡せばいい?」

「こちらを」

「・・・わかった。渡しておこう」

「お願いいたします。

 それから、お大事に、と」

「ああ、伝える」

「ありがとうございます」


++++++++++++++++++++++++++++++


「春を運ぶこかげの花」32話あたり、つばき(リア)が熱を出してお屋敷で寝ていた時の、ジェイドさんと鉄子さんの会話。

ジェイドさんは仕事上のお付き合いの人には、きつめの口調になることが多いようです。









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