感情が揺れる
嫌なことは重なることが多い。
たまたま通りかかった先輩とぶつかってしまった。
今だけは会いたくなかった。きっと世の中のヘイトを全て吸い込んだような顔をしていたはずだ。
運命の出会いとでも言いたそうな目をした彼女が「あ!先輩!こんにちは!いつもカエデから話は聞いています!とっても優しくて素敵な人って!」
私は真っ赤になって慌てて「やめてよ!」と制止する。
「何よ本当のことでしょう?それとも嘘なの?」キュルンのした大きな瞳で聞いてくる姿に、怖じ気付いてしまった。何で先輩の前でこんな…恥ずかしい。
先輩「大丈夫?ぶつかったところ痛かった?」と聞いてくれた。
どうやらぶつかった痛みで顔をゆがめていたと思っているようだ。
彼女はすかさず「優しい〜カエデが言ってた通りの素敵な先輩ですね!」と褒めている。
先輩は無視して、私に話しかけてくる。「怪我はない?良かった。勢いよく出てきたからビックリした。気を付けろよ。じゃあまた塾でな。」ポン
ポン?
一瞬、時間が止まった。
なに?今の。
脳が
頭が
髪の毛が
先輩の手が、私の頭に乗った。
事実をあげるとするならば、それだけだ。
でも…不思議な感覚だ。
脳が揺れた気がした。
近すぎる先輩との距離が、私の心臓の動きを速めた。
顔が真っ赤だったと思う。どうすることも出来ずに、同級生に茶化されながら離れて行く先輩の背中を見るしかなかった。
「良いな〜ズルい。」低く小さな声を、私の心は無視した。
聞こえないふりをして、教室に戻ろうと無理矢理戻った。




