悲しい予定
お父さん「テスト勉強頑張ってるんだってな。お母さんが褒めてたぞ。」
最近筋トレに目覚めたお父さん。
宅配で届いた筋トレグッズを開封しながら話しかけてくる。
「お父さん…楽しそうだね。筋トレグッズ…?」
「この前は海外から育毛剤取り寄せてたよね。あれ効果あったの?」
お父さん「まだ使い始めて2ヶ月くらいだ。ああいった類の物はすぐに効果が表れるものじゃないんだよ。毛根も筋肉も毎日の積み重ねが大事ってことだ。」
「へー…まぁ頑張って。」
お父さん「カエデ、今日の塾はお父さんが送り迎えをするからな。テストで疲れてるだろうから自転車はやめときなさい。」
「え…良いの?お父さんありがとう。」
良かった。
これで先輩と帰りに会話しなくて済む。
お父さんナイスタイミング!
(って、何でこうなるの!?何でハルトも一緒に乗ってるの!?この前号泣したこと何にも聞いてこないし…何なの…)
ハルト「すみません俺まで塾の送り迎えしてもらって。ありがとうございます。」
お父さん「良いんだ良いんだ!同じ時間帯に同じところに行くんだから良いんだよ。ハルトくんも一生懸命勉強してるらしいな。お父さんお母さんも感心してたぞ。受験する所は決まったのかい?」
ハルト「まだ最終的には決めてないんですけど、海外留学も視野に入れています。」
カエデ「え!?海外!?」
ハルト「そうだ。思い切って挑戦しようと思ってるんだ。」
お父さん「そうかぁ。ハルトくんならどこでだってやっていけるだろう。もう頑張ってるだろうから、あとは体調管理だな〜。」
ハルト「おじさんは最近筋トレはまってるって親から聞きました。受験が落ち着いたら俺にも教えてください。」
お父さん「お!ハルトくんも筋トレ興味あるのかい?筋トレは良いぞ〜育てようと思ったら一定のレベルまではすんなり応えてくれるからな。髪の毛より素直だよ。」
カエデ「お父さん反応しずらいこと言わないで。本当にやめて。」
お父さん「すまんすまん。はい、着いたぞ〜。2人とも頑張っておいで。また迎えに来るからな〜」
カエデ「は~い。行ってきま〜す。」
ハルト「おじさんありがとうございました。また帰りもよろしくお願いします。」
ハルト、卒業したら外国に行っちゃうの?
高校も家から通える場所にするんだろうなって勝手に思ってたから、頭が追いつかない…。
私がボーッとしていると、ハルトは私の背中を優しくポンと叩いた。
ハルト「ボーッと突っ立ってる場合じゃないぞ。明日もテストはあるんだ。目の前のテストに集中しろ。」
「う、うん…。」
先輩の自転車が目に留まる。
どうしよう。
多分ミサキのことが好きなアラタ先輩
海外に行っちゃうかもしれない幼なじみのハルト
私は同時に失う可能性があるんだ。
2人とも私の側から離れていくかもしれない。
心が押しつぶされそうだった。
いつか失ってしまうかもしれない。
じゃなくて、これから失う予定。
こんな悲しい予定なんてある?
私どんな顔したら良いの?
ハルトの顔
先輩の顔も
まともに見られない。
今がテスト期間で本当に良かった。
ワークを懸命に覗き込んでいたら、2人の顔を見なくて済む。
何も変わらなければ良いのに。
変わらない未来を望んでも、叶わないことは知っている。
テストが終わったら11月には3年生最後の大会だ。
それが終わったら3年生は引退。
受験が終わったら3年生は卒業だ。
変わらないことはない。そんなことは分かってる。
人間の気持ちもそうなんだろか。
私がアラタ先輩を好きな気持ちも変わってしまうのだろうか。
ハルトが海外に行って全然会わなくなって、今みたいに気軽に話したり関わることもなくなるのだろうか。
仕方ないことを受け入れる度量の大きさは、中学2年生の私は持ち合わせていない。
見えない未来が
変化しすぎる未来が
怖くて怖くて仕方なかった。




