カーテン越しの光
カーテン越しの窓が明るくなった。
真っ暗な部屋が、うっすら明るくなった。
幼なじみのハヤトが帰ってきた。
高校の説明会で1泊するって言ってたけど…明日からのテスト大丈夫なのかな。
自分のことでいっぱいいっぱいすぎて他のことを考えてしまう。
他のことを考えていた方が楽なのかもしれない。
つらいことから目をそらすのも生きていく上で大切なのかもしれないなぁ…。
ガラッ
コンコン
!?
やばい。今はやばい。
でも、明日からテスト期間なのにこんな時間から寝てるのもやばい。
このまま暗いままで出るか…
泣いてたから鼻声だ。泣いてたのバレたくない…。
マスクして風邪引いたっぼいってことにして…。
薄暗い中バタバタと準備をして窓を開ける。
「おかえり。お疲れ様。」
ハルト「…どうしたんだよその声。」
「風邪引いたかも。うつったらいけないから、早目に寝るよ。」
ハルト「明日からテストなのに大丈夫かよ。薬は?ご飯はちょっとでも食べれたか?」
何よ。いつもみたいに何やってんだよ!って言ってほしい。
今は…今だけは、優しくしてほしくない…。
私はハルトの優しさに安堵したのか、人として大切なものに触れたからか、また涙が止まらなくなった。
薄暗い中、私が声を押し殺して泣いている様子を察して、ハルトはただただ待ってくれた。
私が泣き止むのをずっと待ってくれていた。
こういう時、幼なじみとして通じ合う、信頼していることを実感する。
私の中で「早く泣き止まなきゃ!」とか焦る感情は一切なかったように思う。
ひとしきり泣いた後
「急にごめんね。テスト勉強する時間なくなっちゃってごめん。」と謝った。
ハルト「感情が大きく揺さぶられる何かがあったんだろ?人間らしくて良いじゃねーか。泣いたらスッキリするし、泣きたかったら泣いた方が良いんだよ。」
「ハルトも大きくなってから泣いたことあるの…?」
ハルト「大きくなってからって…。そりゃそれなりにあるさ。今だって何もしてやれない自分が情けなくて泣きそうだ。」
急に頭上が柔らかく包みこまれるような暖かさを感じた。
ハルト「大丈夫だ。こんなに勉強も部活も何もかもカエデは頑張ってるんだから。心配するな。大丈夫大丈夫。」
ハルトの手が私の頭を優しく撫でて、離れていった。「…ありがとう。」
ハルト「どうってことない。気にするな。でも…それだけ泣いてたら目元腫れるだろうなぁ。冷やすもの自分で取りに下に行けるか?」
私は首を横に振る。
こんな泣いた顔で下に行ったら、お母さんとお父さんに絶対聞かれる。それだけは絶対に嫌だ。
ハルト「よし。俺が氷とってきてやるから。ちょっと待ってろ。」
ハルトはそう言って、早足に部屋を出て行った。
ハルトはいつでも私の味方してくれる。
幼稚園の時も小学生の時もそう。
周りより大きくて目立つ私をからかってくる男子を、いつも怒ってくれてた。
ハルトの部屋のインテリアに目がいく。
こんなオシャレな部屋にしてたんだ…。
ん…?
カタログが机に置いてある。
全部英語…?
もしかして進学先の高校って海外の高校…?
それで説明会が変な時期にあったの…?
当たり前に高校も家から通うもんだと思ってたから、急な展開に心が追いつかない。
ハルト「氷のうと冷えピタ、両方持ってきた。どっちにする?」
「あ…ありがとう…じゃあ…氷のうで…。」
ハルト「はい。これで冷やしといたら明日の朝は大丈夫だ。」
「容赦なく冷たくて笑っちゃう」
ハルト「泣いたり笑ったり忙しいやつだな。でも、それくらいが良いんだよ。そうやって色んな表情してたら良いんだよ。」
ハルトは珍しく目を細めて穏やかな雰囲気だ。
もう夜も遅いし疲れたのかな?
明日からテストもあるしなぁ…。
「ハルトありがとう。また今度これ返すから。テスト勉強の邪魔してごめんなさい。お互いテスト頑張ろうね。おやすみなさい。」
ハルト「おう。おやすみ。また明日な。」
私はテストに向けて準備した自分を信じて、そのまま寝た。
涙は出し切った感じがある。
眠ることが出来て本当に良かった。
ハルト「好きな女が目の前で泣いてるのに何にも出来ない。こんな悔しいことはねーよ…。」
俺は、俺がカエデに出来ることは全部するって決めてる。
何で泣いてたのか定かではないけど、アラタが関係してそうだな…。
昼間だったから塾は自転車で行っただろうし。
明日からのテストに影響ないと良いけどなぁ。
俺も…大きな変化の時がきたな。
留学先のパンフレットに目をやりながら、カエデの泣き顔を思い出した。
小さい頃と変わらない泣き顔だった。
いつも可愛いけど、泣いた顔も特別だな。
カエデを泣かせる奴は許さねぇ。
カエデの全部を独り占めしたい。
とりあえず明日のテストだ。
テストが終わってからカエデに留学先のことを話そう。




