素直な想い
カエデちゃん、かなりテンパってて可愛かったなぁ。
塾の帰り道のことを思い出しては頬がほころんでしまう。
こんな自分もいるんだと発見出来て、人生は面白いなと思ったりする。
正直、あの子からの好意は丸わかりだったし、それに対して拒否することも受け入れることもなかった。
何もあの子に対して想いがなかった。
きっかけは分からないけれど、彼女からの分かりやすい直線に放たれている好意とコロコロと変化する表情が、とても愛らしく感じた。
自分の隣にいてほしい。
こちらに特別な笑顔を向けてほしい。
単純な思いなんだと思う。
こんな単純で好きとか、恋とか、愛とか、言って良いのか分からない。
クラスメイトのハルトが受験直前に同じ塾に入ってきた。
2人で自転車で来るから、彼女と2人で話す機会がなくなっていた。
過保護な幼なじみ、という印象だったが…ハルトは彼女に好意を寄せているだろうな。
ハルトからは彼女を誰にも取られなくない雰囲気がビシビシ伝わってくる。
自分だけがこうやって良いと言わんばかりの過保護っぷりだ。
彼女はそれを知ってか知らずか…意識せずともいつも隣にいる存在だからこそ、意識し始めたら接近するのは早いだろう。
2人きりになったこのチャンスを逃してはいけないと思って、勢いで告白めいたことをしてしまった。
顔から火が出るほど恥ずかしかった。でも伝えなきゃ伝わらないし、意識してもらえないもんな。
大会で優勝したら告白する!って一瞬思ったけど、もしものことがあるからな。
こういうところで心の弱さが露呈してるよな。
もっと努力して自信付けていきたいなぁ…。
ため息を付きながら玄関のドアを開けた
「ただいま」
アオイ「アラタおかえり〜。塾お疲れ。何なに?何笑ってるの?どうしたの?何か面白いことあったの?」
アラタ「え!?姉ちゃんもう仕事から帰ってたのかよ。別に…何も面白いことはねぇーよ。」
アオイ「ふ~ん。受験生頑張ってるねぇ。やりたいこと、今全部やっとくんだよ。法律違反はせずに。若い時は体力あんだから!欲張って生きてけ!」
アラタ「姉ちゃんだってまだ20代前半だろ。」
アオイ「分かってない。20歳超えたらガタッとくるんだよ。週3回体育の授業の重要性が身にしみるわ。」
アラタ「激励ありがとう。頑張るよ。」
アオイ「よし。アラタのその素直さは絶対武器になるぞ〜。自信持ってけよ!おどおどしてたらなめられっからな!」
姉ちゃんはニカッと笑って2階に上がっていった。
誰になめられるんだよ…。
口の悪さが目立つ姉を持つと、品の良い子が良いなと思うようになるのは自然なことだと思う。
いや、姉ちゃんも外では口悪くないのかもしれないな…。
ちょっと休憩してから勉強しよう。
俺はお風呂を貯めながら英単語を覚えた。
お湯がドボドボ入る音が、昂ぶった心を落ち着かせてくれた。




