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チャンス

よっしゃ!

今日はハルトが塾休みだー!


進学先の面談か何か知らないけど、お母さんが言ってた!


今はそんなことどうでも良いの。

先輩と2人で話せるかもしれないチャンス到来!


しかも今日はテスト期間で塾が早目の日だから、明るいし一人で自転車で行っても良いって!


絶好のチャンスじゃない!?


私どうなっちゃうの!?

いやいや、どうって…どうもこうもないですけど?

自転車で塾行って、勉強して、自転車で帰るだけですけど?

何をする訳でもないですけど?


自分でも驚く程のニヤけっぷりだ。口角が上って下がってこない。


先輩の自転車がある!今日も先に来てるんだ…。時間にキッチリしてるなぁ…素敵。はい好き。


手鏡を出して顔面チェ〜ック。


寝癖ついてない。

リップクリームも塗った。

服装も大丈夫。

よし。いざ出陣!


窓からカエデを見ていた先輩(ん…?今日は一人で自転車なんだな。じゃあ帰り話せるかな。…話せるかな?俺は彼女と話したいのか?ん?)


帰り道、心臓が爆発するかと思った。


危ないからと先輩は車道を歩いてくれた。


そう。自転車を押して歩きながら帰ったのである。


2人で。

自転車を押して歩きながら帰ったのである。


2回言った。

大事なことなので2回言った。


あの時間は人生の宝物。


「もうすぐで大会ですね。勉強との両立、難しくないですか?アラタ先輩成績もすごく良いってハヤト先輩に聞きました。」


アラタ先輩「家族のサポートと仲間の存在が大きいよ。俺一人では到底無理なことだから。環境に恵まれてるだけだよ。勉強はなぁ。今のところハヤトには敵わないよ(笑)もっと頑張らないと(笑)」


まっぶし。アラタ先輩の微笑みまっぶし。心臓を焼き尽くす勢いの眩しさ。


私は、こんなチャンスは二度とないかもしれないと思って


ずっと聞きたかったことを思い切って聞いた。


振り絞って声を出す


という経験を生まれて初めてしたと思う。


「すごいなぁ…。先輩って…かなり忙しい日々だと思うんですけど…彼女とかいるんですか?」


思ったより声が小さくて自分でもビックリした。


そんな声の変化を気付いてかどうかは分からないが、アラタ先輩はパッとこちらに顔を向けて


「彼女?今はいないよ。」


と微笑んだ。


今は。今は。今は。


以前は?以前?

これからは?どうなの?


「あ…ッ、スー、そうなんですか。じゃあ好きな人とかは…」


変な息もれた。変な息とともに変なこと聞いた。どうしよう。


アラタ先輩「好きな人か、好きかどうかは分からないけど、気になる人はいるよ。」


真っ直ぐ見てくる先輩の瞳が茶色くて、宝石みたいだった。


捕らえられて離されることがなくてそのまま吸い込まれるような感覚だった。


「気になる人がいるんですね。同じ学校の人ですか?アラタ先輩の学年、とても綺麗で可愛い人が多いですもんね。眼福眼福。」


意味の分からないことを言ってしまった。何を口走るか分からない。自分が怖い。これが恋か。


アラタ先輩「同級生ではないよ。」


「え!?同級生ではない…同じ学校ではあるんですか?」


アラタ先輩「そうだね。」


「一年生ですか?」


アラタ先輩「違うよ。」


「その人は運動部の人ですか?」


アラタ先輩「そうだね。」


「その人はロングヘアですか?」


アラタ先輩「うーん…多分違うよ。」


あたしは何をアキネイターやっとんねん!!!!


心の中で自分にツッコミをしながら、それ以上は聞けなかった。

何の答えを聞くのも怖かったから。


先輩は歩いていた足を止めた。

ワンテンポ遅れて私も止まって、どうしたんだろうと思って振り返った。

先輩は真っ直ぐ私の目を見た。


アラタ先輩「その子はよく笑ってるんだ。元気いっぱいって感じ。勉強も部活も一生懸命でね。愛嬌もあって品もあって、多分俺はその子のことが気になってる。と言うか、好きになってる。こうやって話して実感したんだ。気付かせてくれてありがとう。今度の最後の大会が終わったらその子に告白しようと思うんだ。卒業したら離れ離れになっちゃうでしょ?とても素敵な子だから、離れてる間に誰かに声をかけられると思うんだ。だから…。大会が終わったら、またこの話聞いてくれる?」



先輩の低い声が、色なき風とともに私の耳に届く。


心地よく、胸が暖かくなる


この風が吹くたびに、私はこの記憶を思い出すと思う。


ゆっくり話してくれる先輩の声が一つ一つ私の中に入ってくる。


その言葉を理解するまでに時間がかかった。


そして確認する勇気を持ち合わせていなかった私は、小さく小さく頷くしかなかった。


先輩は柔らかい視線を私に向けていたが、頷いて視線を外したら


アラタ先輩「さぁ、帰ろうか。」


優しく包み込むように促してくれた。


お母さん「おかえりなさい。ずいぶん時間かかったのね。自主勉強室にでもいたの?暗くない時でも遅くなるなら連絡しなさいね。おやつあるわよ。」


「あ!そうだった…ごめんなさい。今度からちゃんと連絡するね。おやつありがとう。いただきます。」


まだふわふわしてる。


手を洗って


鏡の中の自分を見て腰を抜かしそうになった。


今朝見た時より可愛くなってない!?


何で!?なに!?


これが恋してる顔…恋したらこんな顔になるんだ…。


中学2年生、自分の顔の変化に仰天。


思い出すたびにのぼせたの?ってくらい顔が赤くなるから、お母さんにどうしたの?って聞かれてしまう。


どうにか、どうにかしなきゃ!

リビングに行けない!


そうだ。

今日はおやつやめとこう。


このまま部屋に直行しよう。


テスト勉強に集中したいって言って、顔合わせないようにしよう。


その日は勉強がかなりはかどった。


夕飯も自室


お風呂は入ったけど、すぐ自室


思い出したら悶えてどうにもならないかな、先輩の言葉を思い出さないように勉強し続けた。


恋はトキメキを与えてくれるだけじゃなくて勉強までさせてくる。万能か?

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