作戦
塾に行けないことをカエデに言ったら、すっごく喜んでる。
真剣な表情しても無駄よ。
口の端っこが上がっちゃってるもの。
小刻みに震えてるし。
バレバレだっつーの。
そりゃ邪魔されたくないわよね。
悔しいけどこれだけはどうしようもないわ。
ハヤト「カエデ。忘れ物だ。」
え!ハヤトさん!?朝の会の時間ギリギリに…そこまでする?
たかが幼なじみに。
ハヤトさんは絶対にカエデのことが好きよね。
そうよ!ハヤトさんがカエデと付き合ってくれたら、先輩はカエデとくっつかないじゃない!
私って天才じゃん!
ハヤトさんに頑張ってカエデと付き合ってもらったら良いのよ!
ハヤトさん顔が良いからカエデもイケメンで自分に優しかったらそっちにいくでしょ!
私って天才じゃん…!
テニス部の先輩がハヤトさんとよく一緒にいるし、それとなく話してもらおう〜。
自分のことが好きかもしれないって言われて意識しない男子はいないわよ。
早速チャンスが昼休みにきた!
ミサキ「あ!先輩〜!こんにちは!」
女子テニス部の先輩A「お。ミサキ〜。どうしたの?中庭に顔出すなんて珍しいじゃん。」
女子テニス部の先輩B「ちゃんと日焼け止め塗った?可愛い顔が日焼けしちゃうわよ。」
ミサキ「えへへ。オススメしてもらった日焼けしっかり塗りました!気分転換にお散歩してたら先輩に会えて嬉しいです!あれ?ハヤト先輩ですよね?私カエデと同じクラスメイトのミサキです。今朝ラケット届けてあげてましたよね。カエデ、先輩がいる時はツンツンしてましたけど、先輩がいなくなってから相当嬉しそうにしていましたよ。照れ隠しなんでしょうけど、先輩のこと大好きなんだなって思います!」
ハルト「…カエデが?嬉しそうに…?」
女子テニス部の先輩A「あ〜幼なじみの子でしょ?家が隣だっけ?…ん〜?何なに?ハヤトどうしたの?顔真っ赤だよ?」
女子テニス部の先輩B「ふふ、チークでも塗った?」
ハルト「…何でもない。日焼けしただけだ。」
ミサキ「…(ちょっと待ってハルトさんこんな顔するの?可愛い…可愛い可愛いずるくない?その表情ずるくない?)」
女子テニス部の先輩A「ちょっとちょっと。ミサキも顔赤いわよ。大丈夫?共感性羞恥ってやつ?」
女子テニス部の先輩B「日焼け止めの量が足りてなかったんじゃない?鏡見ながら塗り直しなさいね。」
ミサキ「は、はい…。失礼します。」
そそくさとその場を後にした。
何これ何これ何これ何これ。
いっつもクールなハルトさんがあんな真っ赤な顔して…
あのギャップはズルい。
そんなの見せられたら…何でこんなにドキドキするのよ。
赤面しているのを隠したかったから、教室まで走って戻った。
息は上がって紅潮していてもおかしくはなかった。
カエデ「チャイムが鳴るまでもうちょっとあるから、そんなに急がなくても大丈夫だよ。移動授業でもないし。」
普段通りのカエデの様子に、何だか拍子抜けした。
カエデはハルトさんのあの一面は知らないのかもしれない。
「独り占めしたい。」
この想いが頭の中を埋め尽くすのに、そう時間はかからなかった。
ミサキ「私、やっぱり先輩好きじゃないかも。あんまり話も合わないし。」
口から出た自分の言葉に、私自身が一番驚いた。
もちろんカエデも驚いた表情をしている。
作戦
それも一転、すぐに安堵の表情へと変わった。
カエデ「そっか…。人間同士だから色々あるよね。」
ミサキ「そうね。だからカエデと先輩の恋、私応援するからね!」
おいおい話が大きいって!
何よ人間同士だからって!
ハヤトさんのギャップが大きすぎて、変なテンションになる。
周りには気付かれたくない。
私のキャラが崩壊しちゃう。
深呼吸して
また作戦を立てよう。




