第5話 測れぬ才を測るために
3人称オババ寄り視点です
夜もすっかり更けたというのに、村はずれにあるオババの家だけはひっそりと灯りを揺らしていた。
(まったく……。とんでもない子が転がり込んできたもんだよ)
化けるかもしれないとは思っていた。
だが、まさか“最初から化けていた”などと、誰が予想できるだろう。
6等級の板を光らせたときのレイの様子――あれは「努力でなんとかした」なんてものじゃない。元から持っている“何か”が違っていた。
オババは作業台に向かい、新しい魔力測定器の木板を並べていた。
今夜作るのは7等級。それも、念のためもう一段階上まで。
(魔力の流し方……あれは完全に熟練者の手つきだったよ。男の子で、あの年で、だよ?)
銅線を熱し、慎重に細い溝へ流し込む。
じゅ、と音がして、夜の静けさの中に溶けていく。
(6等級に魔力を通した時、あの子……抵抗を感じていないようだったねぇ。あれは、もう“そういう素質”としか思えないよ)
ここだけは楽観できない点だ。
一般に、魔力量は男のほうが多い。それは確かだ。
だが、魔力操作は女が得意。だから魔法使いは女ばかりになる。
(なのに、レイはどっちも出来ちまってる……)
手を止めて小さく息をつく。
7等級は、英雄級の領域だ。
それを超える者は、数えるほどしかいない。
(あたしより才のある子に、あたしは何を教えられるってんだい……)
自嘲まじりにそう思っても、手は止まらなかった。
銅線はまっすぐ延び、溝の中で固まっていく。
木板の中心には魔力を流せば光る魔石をはめ込む。
銅は魔力抵抗が高い物質だ。
回路が長いほど、光らせるにはより強い魔力が必要になる。
つまり、それが等級の差だ。
(昔会った賢者様より可能性があるかもしれないねぇ。……男の子なのに、だよ?)
あり得ない話だ。
だが、今日のレイを見る限り、それすら否定できない。
オババは眉をしかめ、しかしどこか楽しそうに木板に最後の溝を刻んだ。
(……やれやれ。気が早いにもほどがあるよ)
それでも。
(明日が、楽しみで仕方ないね……)
オババは木板を抱え直し、そっと息を吐いた。
揺れる灯火に照らされた横顔は、まるで若返ったかのように生き生きとしていた。




