第49話 まよねーずとぱそこん
待合室に移動しながら、スルラが僕に質問してきた。
「そういえば、レイさんは殿下とお知り合いなんですね」
あーそれかあ。
なんて説明しよう?
てか、前世は異世界で暮らしてて、その時一緒にいたのが芽結だった。とか言ってもどこまで信じてもらえるか。
そもそも、前にも言ったけど、この世界では生まれ変わりの概念自体がないからなぁ。
「うーん。どこから話していいものか……」
ずっと返答せずに黙っているのもアレなので、間を繋ぐために一言言ってみる。
実際のところ、話して良いものなんだろうか?
ちょっと考える。
まず、生まれ変わりについて。
話すことのデメリットはない……かな。たぶん。
異世界について……も大丈夫か。
いや、異世界の知識を悪用する人もいるかも?
まぁ、この二人ならたぶん、大丈夫。
で、異世界で芽結と恋仲だったこと。
これは言わないと接点があった整合性が取れない気がする。
とっさの嘘で誤魔化すのもいいかもだけど、嘘は苦手だからそのうちバレそうなんだよなぁ。
それに、嘘ってバレると信用を一気に失うからなぁ。
「そう……ですね。部屋に着いてからでいいですか?」
そういった時にはもう部屋の前だったけど。
部屋に着いた僕らは白髪オールバックさんに退出してもらい、念のために風の結界を張って防音をした。
以前にメリアを起こさないように張った、例の無音の結界だ。
今回は防音が目的なので、上にも張って蓋をした。
「ほうほうほうほうほうほう!これは……凄いですね!魔法を5つ同時発動ですか!」
スルラのテンションが高い。
そう言えば雷雲を作った時は大はしゃぎだったな。
「正確には同時発動ではなく多重発動です」
以前メリアにした説明をスルラにもする。
「なるほど、興味深い。では私にも同じことができると?」
「少なくとも、多重魔法はそうです」
魔法師団長で魔法は使い慣れてるだろうし、今すぐにでもできるんじゃない?
「ならば今度簡単な魔法で試してみましょう。さて……」
スルラは眼鏡をクイッと持ち上げ、
「わざわざ人払いして、防音の結界まで張ったのですから、あまり大っぴらにできない話題と推測します」
「はい。お二人には他言無用でお願いします」
「ほーい。りょうかーい」
メリアは軽いな。
でも軽いのは普段の態度くらいで、やることはやるし、守るものは守る人なのは知ってる。
「了承します」
スルラも約束してくれた。
「まず、異世界というのがあってですね。こことは文化や文明、植生と言ったあらゆるものが違う世界が存在するんですよ」
スルラもメリアも「?」と言った顔をしている。
まぁ、そうよね。
「例えば、この世界では太陽は西から昇って東に落ちますよね?ですが、僕が知る異世界は逆です」
「つまり、東から昇って西に落ちるということですね?」
「そうです。他にも、星の配置が違っていたり、そもそも、あちらには魔法も魔力もありません」
スルラが驚いた顔をする。
「魔力が!?それはさぞ不便でしょう」
「その分、科学というのが発展しているので、生活水準はあちらが上です」
「それは興味深いですね」
あれ?
思ったより信じてもらえてる?
僕的には荒唐無稽な話な気がするんだけど。
信じてもらえないなら、異世界は別の星って言う僕の仮説を話そうかと思ったんだけど。
そうなんだよね。
僕は異世界は別の星なんじゃないかと思ってる。
そして、魔力……というか魔素は暗黒物質の一種なんじゃないかと。
「それで、そのカガクというのはなんですか?」
「科学に関して話をするのも面白いですけど、今回の話の主題ではないのでまた今度にしましょう。で、僕も王女様も、その異世界出身だということです」
これにスルラは訝しげな表情をする。
「妙ですね。王女殿下は赤ん坊の頃からいらっしゃいますよ」
「実はですね、僕も王女様も、一度死んでるのですよ」
スルラの眉間にしわが寄る。
「はいはーい。死んでるのになんで生きてるんですかー?それに、『一度』ってなんですか?何回も死ねる魔法があるんですか?」
メリアが疑問を投げてくる。
なるほど。
輪廻の概念がないとそういう考えになるのか。
「あちらの世界では、一度死んだ命は、別の形になって生まれ変わる……という考えかたがあるんですよ」
「……生まれ変わる」
スルラが反芻する。
「そうです。実際、僕と王女様はあちらの世界で死んで、こちらの世界に生まれ変わりました。生まれてすぐは、あちらの世界の記憶はありませんでしたけどね」
スルラもメリアも黙り込んでしまった。
「これが、僕と王女様の面識があった理由です」
「……そういえば、殿下が急に大人びた時期がありましたね」
「そうなんですかー?」
「ええ。よくわからない単語を話すこともあって、みな不思議がっていたそうです」
スルラはハッとした顔で、
「もしかして、言語が違うのではないですか?」
と言ってきた。
「ご明察の通りです。こちらとは言語が違います。王女様が開発した『バター』なんかはあちらの世界の単語です」
本当は国ごとに言語が違うんだけど、そこまでは言う必要はないかな。
「あ、まよねーずとかぱそこんってもしかして」
マヨはたぶん世界共通で通じるワードだし、パソコンは日本人にしか通じないと思うから、咄嗟だったけど良いワードチョイスだったね。過去の僕。
「あっちの単語ですね」
メリアが納得した顔をし、スルラがマヨとPCに興味を示したタイミングで、扉が開かれた。
即座に結界を解除する。
「お時間です。移動してください」
ああ、時間が来ちゃったか。
今度こそ、今度こそ粗相をしないで乗り切れますように!




