第44話 護衛対象が泣きそうな件 -side Melia-
「うわあ……」
正直、ドン引きだ。
あれ、たぶんレイさんが実演した雷雲なんだろうなー。
被害で見ればそう多い物ではなさそうなんだけど、雷やらなんやらの混乱で、立てた直しは不可能に見える。
たぶんだけどあれ、逃げ帰ったら逃げ帰ったで、大変なんだろうなぁ。合掌。
「なんだ?どうなった?」
隊長に端的に伝える。
「ええと、雷とか、あれはたぶん、雹ですね。そういうので大混乱って感じになってます。被害としてはそこまで多くはなさそうですけど、あんなになっちゃったらもう立て直しは無理なんじゃないですかねぇ?」
「彼の魔法か?」
「十中八九そうでしょうね」
レイさんは運も持っているのかもしれない。
今回、普通に奇襲を受けていたらやばかったかもしれなかった。
あたしの嫌がらせの狙撃も効果がなかったわけではないだろうけど、撤退させるだけの決定打にはなりえなかった。
まあ、どうしてもヤバそうだったらお貴族様全部射抜いてもよかったんだけど。
ただ、いくらあたしが狙撃の腕が良いと言っても、突撃されていたらあれだけ離れてるとどれだけ当てられるかもわからない。
そう考えれば、たった半刻ほどであの軍勢を撤退させられたのは大きかったんじゃないか?
「あ、撤退始めましたね。撤退っていうか敗走って感じですけど」
「実戦で実演か。相手さんも不幸というかなんというか……」
「ですねー」
まぁ、禁止されている奇襲を当たり前のようにして来ようとしてたんだし、天罰よね。天罰。
「俺は他の連中と警戒を続けるから、お前は彼の護衛に戻ってくれ」
あら。珍しい。
「メリアさんいなくていいんですかー?」
「彼の重要度が先ほど上がったばかりだろう。しっかり守れ」
「はーい」
砦から出て川に向かう。
レイさんはちょうど魔法師団長につかまってるところだった。
「その説明ではわかりませんね。もう少し詳細にご説明願います」
「えーっと、まず、空気は温まると上に移動するんですよ」
「それは何故ですか?」
あーレイさんが質問攻めにあってる。
「それは、あのっ、温まって体積が増えると密度が下がって、周りとの比重で……」
「あなたが何を言っているのかわかりません。もう少しわかりやすくご説明願います」
「もーーーー!」
あー。
レイさんの余裕、なくなってきてるな。
そろそろ助け舟を出しますか。
「はいはーい。レイさーん。おつかれさまでーす」
二人の視線がこちらを向いた。
「メリア!」
「あら。メリアさん」
レイさんが泣きそうな顔でこちらを振り向く。
「スルラ様、そろそろレイさんを解放してやってはいただけませんかね?困ってそうですよ」
「あら?それはごめんなさい」
スルラ様は魔法のことになると、たまに見境なくなるから。
「では、帰りの馬車で詳しくお聞かせください」
「めりあぁ!」
ええい!あたしに泣きつくな!
「では、馬車に急ぎましょう!」
スルラ様は相変わらずだなぁ。




