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第43話 じゃあ、始めますね

「じゃあ、始めますね」


 川に着いたので早速始める。

 今日はちょうど少し肌寒いくらいの天候なので、積乱雲を作るのにはちょうどいい。

 

 雷雲を発生させる魔法を使うわけだけど、これは熱と風の複合魔法だ。

 ある程度の短時間で川上の空気を広範囲に熱する必要がある。

 そして、熱の中心に四方から風を送る。

 ぶつかった風が逃げ場を無くして上空に移動して上昇気流になるんだ。

 川の水を蒸発させるのもいいんだろうけど、そんなことしなくても空気を熱するだけで十分だったりするんだ。

 すごく端的に説明すると、台風が海上でどんどん大きくなるでしょ?

 あれみたいな原理。潜熱って言うんだけど。

 

 まぁ、難しい理論は置いといて、まずは実践。

 川上の空気を熱し始める。

 今回は実演なので、多少急いだほうがいいと思い、少し強めに熱してみる。

 次に周りから空気を集める。

 よし、うまく行ってると思う。

 この世界では、太陽の代わりの星は、西から登って東に落ちる。

 つまり、自転が地球とは逆なんだ。

 だから、天気の移動も逆方向。

 天気は東から西に移動する。

 急速に、川向こうのさらに少し先の上空に縦長の雲が出来上がっていく。

 あっちは確か……ハナアカ平原だっけ?

 距離的にはどれくらいかなー?数キロ先?


 あ、光った。成功だね。

 僕はもう魔法を止めていた。

 あとは川上の湿った空気と、上空に行った水蒸気が勝手にエネルギーを生み出してくれる。


 一緒に来た魔法師団の団長さん、めっちゃはしゃいでる。

 まぁそんなに喜んでもらえたなら嬉しいよね。


 うわー。めっちゃ光ってるわ。

 思ったより強い上昇気流になったし、肌寒い日だから低い位置に雲ができたから、雷の発生率が高いのかもなー。

 雨も降りだしたっぽいな。

 雲の下の空気が灰色になってる。


 ………………今思ったけど、あそこに人とか、いないよね?

 商人さんとか、まままままさかお貴族様とかさすがに、ね?

 ま、まあ?王様に言われてやったわけですし?最悪僕の責任じゃあないっていうか?

 あれ?でもあそこ、他国だぞ?


 やっやべー。すっごいドキドキしてきた。

 そんな風に僕がドキドキをなんとか抑えようとして数分。


 ――うん?

 なんだろう?土煙みたいのが見える?気のせいか。

 そう思った瞬間、冷たい風が吹いてきた。


 あれ?まさかガストフロント?

 ってことはあっちではダウンバーストが発生したのか。

 まーーじーーで人がいませんように!お願いします!




 少し時を遡ってアルチュー平原側


「ハナアカ卿が撃たれた!」


 メリアの一射目は実はハナアカに当たっていた。

 周囲はパニックになる。


 ハナアカ以外の3貴族は後ろのテントに控えていた。

 しかし、騒がしい周囲の様子を確認するため、ヤマハマグナが出てくる。


「騒がしいぞ!何があった!?」


「ハ、ハナアカ卿が……」


「なに!?」


 彼の視線の先をたどれば確かに兜の隙間から矢を生やしているハナアカ卿が倒れている。

 

「どこから放った!?」


 遠くのミカミイ要塞を睨むが、あんなところから届くわけがない。


「どこだ?いったいどこから?」


 その時、ミカコルス卿とオリゴンフサオ卿もテントから出てくる。


「何事だ!?」


 ミカコルス卿はいたく不機嫌だ。

 しかし次の瞬間、隣にいたオリゴンフサオ卿の側頭部に矢が突き刺さる。


「ひっ!」


 なんだ?いったい何が起きている!?

 彼だけではないその場の全員が事態を把握できていない。


 慌てている間に事態はどんどん転げ落ちていく。悪いほうへ。


 ドォーン!!!


 後ろのテントが吹き飛んだ。

 雷である。

 テントから近かったお陰で余波を受けた。


「ぐぅっ!今度は何が……」


 顔を上げると絶望の光景が広がっていた。

 見たこともないような頻度で雷が落ちてきている。

 威力もやたら高い。

 そもそも――


「少し前まで雲なぞなかったではないか!?」


 そう、上空は真っ黒な雲に覆われていた。

 まだ悪夢は続く。


 今度は大粒の雨と雹の土砂降りである。

 慌てて脇に抱えていたヘルムを被る。


「く、くそ!天変地異だと!?我らは神の怒りでも買ったのか?」


 どうする?

 撤退が必要か?

 ハナアカ卿は矢の刺さっている位置から考えて、命までは取られていない可能性がある。

 オリゴンフサオ卿は既に絶命している。

 周りを見れば、兵も将も混乱の極みだ。

 今から要塞攻め?

 不可能だ。


 ギリギリと奥歯を噛み締め、退却の命を出そうとした、その時。

 上から強烈な突風が吹き付けた。


(さっ寒い)


 突風は残っていたテントを軒並み吹き飛ばし、人間も多くが立っていられなかった。


「たっ、退却ー!退却ー!」


 先程上げようとした命をなんとか声を振り絞り出して、ミカコルス卿達は命からがら逃げ延びた。

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