第42話 護衛役を交代して -side Melia-
伝令からの報を受け、あたしはミカミイ要塞へ急いだ。
ここからならすぐだし、全力を出しても魔力は余裕あると思う。
要塞に着くと、あわただしそうな様子だった。
すぐに隊長のもとに案内してもらう。
隊長は城壁から橋の向こうを睨んでいた。
あたしが近づくと、振り返りもせずに言った。
「おう、メリア、来たか」
背中に目でもついてるんだろうか?
「俺の視力ではわからんのだが、どうやらラーンクから人の入りが暫くないらしい。おかしいだろう?」
「それは確かに変ですねー」
「お前、目がいいだろ?確認してくれないか?」
あたしの背の高さだと鋸壁が邪魔で向こうは見えないので、鋸壁に登って見てみる。
「まずいですね。かなりの兵数がいますよ」
「セテラム攻めは囮だったか……」
これ、本当にまずいんじゃない?
あ、そういえば。
「隊長、あたし、レイさんに遠くまで矢を飛ばす魔法の使い方教わったんですけど、それで狙撃してみますか?」
「お前今のままでもかなりえげつない射撃できるだろ……」
そんな顔しないでくださいって。役に立つんですから。
「うーん。そうだなぁ。ラーンクから人が来なくなって暫く経つみたいだし、何かを待っているのか?」
隊長は何やら考え始めた。
「つまり……なるほど。こりゃ本格的にまずいかもな。よし!」
どういうこと?
隊長は一人で何かに納得してるけど。
「あいつらが動く前にちょっと混乱させてやろう。ここから狙撃できるんなら、相手も面食らうだろうさ」
そう言ってニヤリと笑ってきた。
「あ、じゃあこれと同じ矢をいくつか作ってきてください。大至急で!」
そういって、レイさんに言われた通りに作った矢を近くにいた兵に一本だけ渡す。
矢羽根をかなり小さくし、箆の部分を細くし、矢筈部分を少し細く絞った特製矢だ。
さらに、矢を放つ時に使う魔法も改良を加えた。
今まではこちらから狙いまでを風の道を作るイメージで魔法を使っていたけど、レイさんが改良を加えた方法は、矢を放つ瞬間だけ、矢に回転を加えるという方法だ。
これなら消費魔力はかなり少なくなる。
「改良矢が来るまでは、手持ちの矢を使ってるので、できるだけ早く持ってきてくださいね」
そう言って矢を番える。
「狙いはどうしますか?」
「とりあえず一番手前を狙え。相手の将が異変に一番気づかない場所がいい」
なるほど。
さすが隊長。性格が悪い。
一番手前の真ん中の敵を狙う。
2、1、シュッ!
想定通りに矢と魔法を放つ。
「あっ!」
想定を大きく超えちゃった。
「いやー外しました。あっ!いえ、当たりました」
「どっちなんだよ」
「あーこれやっちゃいましたねー」
あたしは平静を装っているけど、内心冷や汗をかいていた。
まさかあんなに飛距離が伸びるとは思わなかった。
「将を打ち取りました(ボソ)」
「あん?」
「たぶん、将を打ち取りました。うす」
「ああああああん????」
いや、あたしだってびっくりしてるんだよ。
一番手前の敵、一般人より視力のいい隊長ですら見えなかった距離よ。
そこまで届けば十分だと思うじゃん?
最後方のテントの少し手前にいた、鎧がしっかりしている将っぽい人のヘルムに刺さってる。
ちょうど面頬が開いてたからどんぴしゃりよ。
「お前なぁ。いや、将を討ったならいい……のか?」
隊長はウンウン唸って考えてるけど、敵方にも動きがあった。
「あ、どうやら奥のテントには貴族がいたみたいですね」
「あー戦慣れしてねえ貴族さんにはきついだろうなぁ」
同情してる場合ですか?
「次は多分、ちゃんと狙いに当てられますよ」
そういって、騒いでいる貴族の一人に狙いを絞る。
さっきの感覚だと……たぶんここかな?
幸い騒いでいるだけで慌てて走り回ったりしていないから狙いやすい。
2、1、シュッ!
「あー今度は貴族にちゃんと当たりました!狙い通りです!」
「おまっ!貴族に当てちゃったの!?オイオイオイオイオイ」
隊長にしては慌てすぎじゃない?
いつもの隊長ならもうちょっと……。まぁいっか。
「でもほら、うちらは何もないところに矢を撃つ練習をしていただけで、あそこには軍隊はいないはずですよ」
「おー……。おー!そうか!やつら宣戦布告してないもんな!」
そうそう。
「お前今日は頭回ってんな」
隊長が回ってないだけだと思いまーす。
あたしも隊長も気づかなかった。
少し、雲行きが怪しくなっていることに。
そして気が回らなかった。
それがどんな結果をもたらすのかまで。
メリアの視力は13.0ほどです




