第38話 王の威厳
「わたくしは宰相のツキーズと言います。財務大臣も兼任している。そなたも名乗ってみて下さい」
貴族っぽい威圧的なしゃべり方じゃないのね。
しかし、やっぱり宰相だった。
財務大臣も兼任って……。王様、この人に権力与えすぎじゃない?
それだけ信頼されてるんだろうけどさ。
財務大臣ってことは、この人が許可しないと予算は通らないってことだ。
ただの宰相よりよっぽど大物だぞ。
でも、大丈夫。大丈夫。
すーはー。すーはー。よし!
これもメリアのお陰か。
「発言と挽回の機会をお与えくださり、ありがとうございます。私はタキンチ村のレイと申します」
ほう。とか周りから聞こえるけど、マジ気が散って緊張するから黙ってて欲しい。
「そなたは天候を操る魔法が使えると聞いていますが、これは本当ですか?」
メリアが言っていたな。
抑止力として抱えておきたいと。
「誠実に答えるならば、答えは否です」
その瞬間、どよめきが広がった。
が、
「静まれ」
王様すげー。
おっきい声とかではないんだよ?
でも、一声でこの静けさよ。
「誠実に答えるならば……とは?」
ツキーズ宰相が促してきたので、補足する。
「私にできるのは、精々、雨雲発生させるとか、雷雨にするとか、その程度です。晴れにしたり、雪を降らせたりといったように、自由に操れるわけではありません」
雹なら今の時期なら狙えそうだけど、確実にできるとも言いきれないか。
僕の発言に、場は再びどよめいた。
「雷……。これならば、ラーンクを攻め落とすことも可能なのではないか?」
誰かが言った言葉がやけに大きく聞こえた。
やっぱり戦争かぁ。
抑止力ってだけならいいんだけどなー。
ちなみにラーンクは西の大国ね。
しかし、これを否定したのは意外にも王だった。
「この者を使って、そのようなことはせぬ」
よかったー。
しかし、一部の貴族達は食って掛かった。
「ですが陛下。北方のナウォック小国郡。その一国であるセテラムは今、正に攻められております」
「左様ですぞ。そのためについ先日、王国から派兵したばかりではありませんか」
「我らが国にも、いつ、奴らの魔の手が伸びるかわかりませぬぞ」
え?一国を助けるために派兵したって、それなりの数を送らないとだよね?
この国の守りは大丈夫なの?
「そのための、牽制だ」
王の、静かな声に場は再び静まる。
この王様すげえ。
貴族達が攻めろと言うのは、西の大国を脅威とみなしてるからだ。
恐怖を感じるから排除したい。しかもその手段が手に入ったかもしれないのだ。
彼らの気持ちはよくわかる。
しかし、陛下はそれをしないという。
よくわかっているんだ。
そんなことをすれば、世界がどう見るのかを。
攻められる力を得て、それを振るい、他国を滅ぼす。
その姿を見て、周りの国々はどうするのか?
友誼を結ぼうとする国だけではないはずだ。
陛下は今、この場の恐怖だけではなく、先をみているんだ。
この時代の、王政の政治家としては優秀すぎませんかね?
「抑止力、と言うわけですね」
ぽつりと、言葉が漏れた。
しまった!と思ったが、陛下は、
「なるほど、抑止力か。しっくりくる表現ではないか」
そう言って笑ってくれた。
そして、
「そなたの力。この国の抑止力として十全に果たせるかどうか、示してはくれぬか?」
真剣な表情で頼み込んできた。
僕は陛下に向き直り、深く頭を下げた。




