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第37話 粗相の連続

 開く扉に招かれて前へ進む。

 まさか僕がレッドカーペットを歩くことになるとは思わなかった。

 緊張しすぎて自分が絨毯を踏みしめているのか、雲の上を歩いているのかすらわからない。

 ふわふわと、おぼつかない足取りで前へ進む。

 

 下げていた視線を前に向けると、すでに玉座に座っている、豪奢なローブを身にまとい、王冠をかぶった男と目が合った。

 その瞬間、僕はジャパニーズDOGEZAをしていた。

 

「へへーーっ!」


 気分は江戸時代に殿様の前に連れ出された平民そのものだ。

 

「お、おう……」

 

 王も貴族もドン引きである。

 なぜこうなった?

 てか、僕より先に王様が待ってるとは思わないじゃん?

 あとから入ってくるんじゃないの?


「と、とりあえず面を上げたまえ」


 王の横にいる脂ギッシュな毛髪が後退した男が声をかけてくれた。

 いかにも宰相って感じの見た目だ。


 顔を上げてよいとのことなのでありがたくそうさせてもらう。

 片膝ついて「ハッ!」とか「ハハッ!」とか格好良くやってみたかったわ。

 ハッ!


 顔を上げると正面には王と宰相、絨毯から少し離れて貴族たちが立ち並んでいる。

 あ、あかん。倒れそう。

 ちょっと他のことに気を向けよう。


 あーそういえば他の王族はいないんだなー。

 と、空の椅子を見て思った。

 ロココ調って言うの?

 綺麗な椅子は並んでるけど、空席なんだよね。

 王妃様とか王子王女様とか用なんじゃないかな?

 あ、ちょっと落ち着いてきたかも。


「私はこの国の王であるバラン・クスミ・レハチワ12世だ。そなたを招いたのには訳があってな」


 ひぃっ!

 ゴンッ!

 再びのDOGEZAである。

 ドッドッドッドッドッドッ!

 心臓の音がうるさい。


 会場はヒソヒソ声に包まれる。


「まだあんな幼い子だぞ?本当に大丈夫なのか?」


「それ以前の問題であろう。王子殿下方や王女殿下はもっと幼い頃から堂々としておられた。格が違いますわ、格が」


 そのような声が聞こえてきた。

 そりゃそーだ。

 こちとら一介の村人ですよ?


「静まれ」


 静かな。それでいて強い力の籠った声に、場が静けさを取り戻す。

 僕も思わず顔を上げる。


「陛下、いきなり陛下では緊張してしまうようです。ここはわたくしから説明を致しますがよろしいでしょうか?」


「そのようだな。任せた」


「ハッ」


 宰相っぽい男が王様と数度やりとりをし、こちらに歩いてきた。

 そして、えっ!?片膝をついた?

 僕は目をパチパチ。


「気が利かなくてすみませんでした。ここで良いので周りの者にも聞こえるようにわたくしと話をしましょう」


 めっちゃ悪事で飯食ってますって見た目だけど、気を遣ってくれた上にめちゃくちゃ紳士だった。

 人は見かけで判断してはいけないの見本である。


 粗相をしまくった僕の首は、この男になんとか救われたのかもしれない。

 レイは命拾いしたと思っていますが、この程度のことでは罪には問われません。


 あと、王が12世なのにも、一応意味があります。

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