第34話 巌のような男
「よお、メリア!帰ってきたか!」
「うげ。隊長」
軍本部、長弓隊の訓練場に二人で向かい、扉を開けたところだ。
扉の前にはまるで待ち構えていたかのように巌のような男が待ち構えていた。
弓兵っていかつくないイメージだったけど、この人めっちゃいかつい!
「そちらが例の?」
「はい」
「ほう……」
あんまジロジロ見ないでください。おっかないので。
「あ、それとゴニョゴニョ――それと、ゴニョゴニョ」
メリアが隊長さんに何やら耳打ちをしている。
「ふぅん」
隊長さんにちらりと見られた。
「わかった。上への報告と合わせて必ず伝えよう」
一人放置されててめっちゃ居心地悪い。
何かしゃべった方が良いかなと思った時。
「失礼しました。レイさん、ですよね?」
「は、はい!タキンチ村の魔法使い見習い、レイです」
僕が答えると、メリアが笑った。
「あの実力で見習いは無理がありますねー」
確かに師匠からは皆伝をもらってるけどね。
けど、自分なんてまだまだだって気持ちが、見習いと名乗っちゃうんだよね。
ソシャゲとかでもう3か月もプレイしているのに、「初心者です」って自己紹介しちゃうことあるでしょ?
あれよあれよ。
「私は王国長弓隊隊長、エセンシアです。王女殿下への伝言に関しては、必ず軍団長にお伝えします」
巌のような男なのに、いい匂いがしそうな名前だ。
なんか急に物腰柔らかだし。
でもありがたい。
「不躾なお願いですがよろしくお願いします」
僕は深々と頭を下げる。
これで王女様に伝言が届くなら安いもんだ。
元々大したプライドもないし。
「では私は上への報告に行ってまいりましょう。メリアは彼を宿へ案内してやるといい。ああ、そうだ」
うん?
「ちょっと執務室までご同行願えますか?」
え?え?
急に展開怪しくない?怖いって。
しかし、連れて行かれた先では怖いことなど何もなかった。
「宿はメリアに連れて行ってもらってください。宿に着いたらこちらの木札を渡してください」
手渡されたのは虎の刻印がされた木札だ。
「それを宿に持って行けばタダで寝泊まりできます。食事もご自由にどうぞ」
エセンシアはメリアの方を見て、
「あの宿にご案内して差し上げろ。話は通ってる」
「あたし、もうちょっと護衛したいなー。というか、レイさんの身辺警護が必要だと思うんですよね!ね?」
メリアの言葉にエセンシアは呆れつつ、
「お前……お前の考え如き、俺に見抜け……いや」
ちらとこちらを見、
「いや、やはり警護して差し上げろ。ついでに王都案内も頼むぞ」
マジで!?
「よろしいのですか?」
おずおずと確認する僕。
「問題ありません。どうぞメリアを存分に顎で使ってやってください」
それもだけど、折角王都に着いたのに呑気に観光してていいのかなぁ?
元々観光するつもりではいたんだけどさー。
まぁ、いいって言ってくれてるんだし、いっか!
みんなで執務室を後にすると、エセンシアは一礼して去っていった。
「じゃあ、とりあえず宿に向かいますか」
というメリアについていく。
外はすでに暗くなり始めていた。
この世界には街灯はない。
王都はさすがに家や店から灯りが漏れ出ているからわりかし明るいけど、基本は真っ暗らしい。
……いや、タキンチは師匠の魔道具の影響で夜の明かりに困ったことはないんだよね。
村の外に出て初めて知るこの世界。
「暗くなりきる前に宿に急ぎましょう」
そう言って先導するメリアの背中を追いかけた。




