第32話 些末な違い
翌日。
僕らは早々に幸運の黒猫亭を出発した。
そして、またメリアにしがみついて騎乗中だ。
「今日中には王都に辿り着きますね。謁見は数日後になると思います」
やっぱ王様って忙しいのかなあ?
そう思って聞いてみたら、どうやら事情が違うらしい。
「陛下の忙しさはわからないですけど、数日かかるのは、貴族達の都合を合わせるためですね。その辺、ややこしいみたいですよ」
え?貴族にお披露目でもするの?
王様だけじゃないの?
「あのー。僕はてっきり国王陛下にちょろっと魔法を見せるだけだと思ってたんですけどぉ……」
僕が思ってた話と随分違いそうじゃない?
「あはははやだなー。そんなわけないじゃないですかー」
何がそんなわけないんだろう。
「雷を発生させることができるって聞いてますけど?」
「確かに僕は雷を発生させることはできますが、それはあくまで間接的にで、直接雷を作れるわけじゃないですよ。てか、先ぶれの兵士さんには伝えましたよ!」
そう、ちゃんと伝えたはずだ。
「いいですか?レイさんは何かご自身を過小評価しているみたいですけど、天候や雷を操れる魔法っていうのは、伝説上のものだけです。正直、あなたは国が大きく揺らぐような存在なんですよ」
んな大仰な!
「そもそも雷に関しては操れないですって!発生はさせられますけど、それ止まりです!」
天候だって『操れる』と表現できるかは微妙なラインだし。
「そんな違い、レイさん以外にとっては些末なことなんですよ」
「大げさ!大げさですよ!」
僕が使える魔法で何ができるわけでもない。広範囲の畑に水を撒けるくらいなもんだ。
しかしメリアは、「はぁ」とため息をついた。
「大げさなもんですか。あなたを国が抱えているだけで、他国は我が国に攻めてこられなくなるんですよ」
そんな馬鹿な。
僕は戦略核か何かですか!?
「だって師匠は僕にそんなことは言いませんでしたよ」
「それは……。優しいお師匠に習ったのですね」
メリアにそう言われたことでハッとした。
師匠は僕が天狗になったり、誰かに利用されたり、事件に巻き込まれたり、そういったことにならないように僕を育ててくれていたんだと。
師匠だけじゃない。
きっと、村のみんながそうだったんだと。
さすがにチビ達や年の近い友達は別だろうけど。
「そういうわけで、あなたは国にとって重要人物なんです。それなのに徒歩で来るとか駄々をこねて……」
それは本当に申し訳なく思っています。
特に、兵士さんに。
「本当はこの話は言うつもりはなかったんですけど、この数日でレイさんの人となりは大体掴めましたからね。他国に逃げたりとかはしないでしょう」
数日で人となりを掴まれたの、何気に怖くない?
「国に対する帰属意識は正直、そんなにはありませんけど、村のみんなは好きですからね」
師匠もいるし。
「そういうことなので、そろそろご自身の特異さを自覚してください」
はい。すみません。
僕が黙り込むと、気を利かせたのか、メリアが話しかけてきた。
「ところで、なんで発生はさせられるけど操れないんですか?」
「ああ、それはですね……」




