表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/51

第29話 幸運の黒猫亭にて

「すみません。わざわざ馬を止めてもらっちゃって」


 僕はいつの間にか馬が止まっていたことに気づかなかった。

 メリアが気を利かせて止めてくれたのだ。


「いえいえ、あたしも見たかったですし」


 良いもの見れたなー。

 これはみんなへのお土産話が増えたぞー!

 

「じゃあ行きましょうか」


 メリアはそう言って馬を歩かせ始めた。

 僕はもう一度麦畑を見る。

 また来よう。

 稲も綺麗なんだろうか?


「メリアは稲も見たことがありますか?」


 つい聞いてしまっていた。


「収穫前のイネも見た事がありますよー。なんならあたしは小麦よりイネの方が好きですねー」

 

 やっぱり違うんだ。


「その理由を聞いても?」


「イネの方が小麦より柔らかそうなんですよねー。なので、さっきの波もイネの方が大きく揺れてあたしは好きですねー」


 なるほど。


「どのくらいの時期かわかりますか?」


 メリアは一度「うーん」と悩み、


「あれは確か秋口だった気がしますね」


 そういや日本でも稲の収穫って秋だったっけ。

 こっちでもそれは同じなのか。


「随分気に入ったみたいですね」


「はい。また来たいな、と」


 ここで町に着いた。

 メリアに続いて僕も馬から降りる。


「そういうメリアも随分詳しいですね」


「あたし、姫様の護衛も結構やってますしねー」


 えっ!?!!?

 それなら直接伝言してもらえるんじゃないの?

 そう言おうと思ったけど、メリアはすぐに次の行動に移っていた。


「じゃあ、あたしは馬を預けられる厩舎を探してくるので、レイさんは宿屋に行っておいてください。大通り沿いの、でっかい黒猫の看板が目印です」


 そう一方的に告げて行ってしまった。

 行動が早い。

 仕方ないので宿屋を探す。


 少し歩くと見つけた。

 あーこれは……。

 思ってた黒猫の看板と違う。

 黒猫のシルエットが伸びをしている看板みたいなのを想像してたんだけど、どっちかというと、魔女の使い魔が正面を向いて、看板に手を掛けてる……って言って通じるかな?

 ぎょろっとした目が不気味かわいい看板だ。

 宿の名前は『幸運の黒猫亭』。

 やっぱ黒猫は幸運の象徴だよね。

 グレゴリウス9世こそ悪魔の使いだよね。

 許せないわー。

 おっと、思考が危険な方向に流れちゃった。危ない危ない。


 幸運の黒猫亭はおっきな宿屋だ。

 観音開きの扉を開けて入ると、右手に台の上に置かれたクッションで尻尾を優雅に体に巻き付けた黒猫ちゃんがお出迎え。

 宿屋の名前に偽りなしじゃんね。


 正面のカウンターに行き、受付の女性に二部屋頼む。


「二部屋……ですか?」


 訝しまれる僕。

 メリアさん、いないからなぁ。


「あとからもう一人来るんですよ」


 そう言ってみた。


「お連れ様が本当に来られるかわかりかねますので、前金で二部屋分いただきますけど、よろしいでしょうか?」


「はい。もちろんです」


 宿に迷惑かけたいわけじゃないからね。

 ちょっとお高い。

 さすが王家の直轄領且つ、町。

 村の宿とは違うね。

 王都のお宿はもっと高いんだろうなぁ。


 今回もファンタジーでよく見る一階が食堂で二階に部屋があるタイプ。

 というか、今のところこのタイプしか見ない。

 メリアを待つため、部屋に上がらずに食堂で待つ。

 黒猫があくびをしている。

 指突っ込みてー。


 黒猫を見ながら時間をつぶしているとメリアが来た。

 

「お待たせしましたー。いやー時間がかかっちゃいましたねー。すみません」


「ううん。私も今来たところだから」


「え?何言ってるんですか?」


 渾身のボケだったのに……。

 日本人にしか通じないのかな。


戯言(たわごと)言ってないで部屋に行きますよ」


 メリアさん、辛辣ぅ!


 僕らは部屋に移動した。

 ……しくしく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ