第27話 旅は急ぎ足で
村にはすぐ着いたけど、翌日は早々に出発だった。
というかメリアがやたらと急いでる。
思い当たるとしたら、やっぱり魔獣かな?
メリアは昨日村に着いてすぐに商人組合に行って注意喚起をしていたらしい。
山向こうの村にも伝令を出したと言っていた。
新たに魔物の領域ができたって話なら、できれば早めに制圧して資源化したいところだろうし。
それに、山道の危険性が上がるということだから、通行人への注意も必要になる。
あとは、ガガダが所有する魔物だった場合も、より警戒が必要になるだろうしね。
そんなわけで、急ぐ必要ができたのだけど、これはさすがにどうなんだろう?
「ちょっと!落ちないようにちゃんと腰かお腹を掴んでくださいよ!」
そうは言いますがね、メリアさん。
女性の体を掴むのなんて、やっぱり少し抵抗がありますよ。
「あと、もうちょっとちゃんと密着してください!振り落とされたいんですか!?」
そうは仰いますがね、メリアさん。
オトコノコには事情があるものなのですよ。
しかし振り落とされたくない僕はメリアにしがみつくことにした。
うっ。
メリアさんの防具、なかなかの臭いですね。
臭いに顔をしかめつつ、揺れる馬上で考える。
思ったより早く王都に着くことになりそうだ。
まぁその方が良いか。
無駄に師匠を心配させずに済むし。
僕も昨日ホームシックにちょっとなったし、早くタキンチに帰りたいなぁ。
昨日のアレはホームシックじゃなくて現実逃避か……。
僕らが乗っている馬はレンタルだ。
たまたま軍に馬を卸している御用農家がある村だったのを、メリアが思い出して借りた。
馬主とメリアに面識があったので話はスムーズだった。
僕は騎乗なんてしたことがないのでこうやってメリアにしがみついているわけだ。
ちなみに返す時は、松尾芭蕉が那須野で馬を借りた時のように、この馬の止まるところにて馬を返し給え。……的な感じではなく、王都に着いてから別の兵士が返しに行くらしい。残念。
村を出て川を一つ渡ったところで一旦馬を休憩させる。
馬に川の水を飲ませながらメリアは言う。
「この川を渡ったことで王家の直轄領に入りました。距離はまだもうちょっとありますが、時期に王都に着くでしょう」
「何日くらいで着きそうですか?」
メリアは今度は岩塩を取り出し、馬に与える。
「うーん。二人乗りであんまり速度が出せるわけでもないですし、2日くらいですかねー。今日はふたつめの町に泊って、明日の夕方には着くと思いますよ」
本当にあっという間に着きそうだ。
観光気分だったんだけどなぁ。
あれ?でも王様に呼ばれてるのに観光気分だったのはもしかしてやばいのかな?
ま、まぁ?メリアとか?護衛に出してくれてるし?
大丈夫だよね?本当に(真顔)。
「我々は欲し肉でも齧って小腹を満たしましょう」
そう言ってこの前作った猪魔獣の欲し肉を要求してくる。
欲し肉は僕が預かっていたのだ。
バッグ2個持ちだからね。
バッグから欲し肉を取り出してメリアに渡す。
メリアはさっそく齧りついてチューチュー吸っている。
……なんだろうね?美少女なんだけどね。
僕も齧る。
うーん臭い。
旨味は強くなってる気はするんだけどねー。
狩ってその場で食べた肉串の方がまだ臭みが少なかったなー。
まぁ、あまり贅沢も言えない。
こっちの世界ではこれでもごちそうの部類だ。
いつも芋ばっかりだし。
タキンチはもうちょっと美味しいものあったんだけどなぁ。
野菜も色々作れてたし、畜産もやってたし。
牛なんかは王都に卸す用で村人が食べることはなかったけどさ。
タキンチで食べてたのは専ら鶏肉だ。
日本の料理がガチで恋しい。
メリアが無言でチューチューしながら手を差し出してきたのでもう一つ渡す。
最初に渡したのは大き目の一枚だったんだけど、もう食べきりそうだ。
軍にいると食べる速度とかも要求されるんだろうなぁ。
そんなわけで軽食をとって出発する。
あ、そういえば次は町ってメリアが言ってた気がする。
でも素通りなんだろうなぁ。
残念。
しかしこの日、僕は意外な、そして生涯忘れられない光景に出会うのだった。




