第20話 護衛対象が不審者な件 -side Melia-
あたしはメリア。レハチワ王国の長弓隊の所属だ。
どうやら国防に関わる重大な人物がこちらに向かっているらしく、その護衛を命じられた。
厄介なことこの上ないが、何も問題が起こらなければ観光ができると捉えることもできる。
しかも前金で賞与も出る!
あたしはそう気持ちを切り替えて王都を出発した。
「見つけました!銀髪の青年!」
探し人を見つけたあたしは、少しそれっぽく言葉と雰囲気を作って声を張り上げてみた。
「……の方ならあちらに向かいましたよ」
彼ではなかったらしい。
あたしは礼を告げてまた駆けだした。
だまされた!
誰にって?
護衛対象に!
おかげで次の村まで来てしまった。
村人に話を聞いて唖然。
そう、少し前にラト村付近ですれ違った青年が護衛対象だったようだ。
あたしは来た道を大急ぎで戻る羽目になった。
ラト村に着いたのは日が沈んでからだった。
しかもガラの悪い酔っ払いに絡まれたし。
最悪。
そう思っていたら思わぬ助け舟が入った。
若い男の声に振り返ってみる。
「あーーーーーーーーーーっ!あなた銀髪の!」
そこにいたのは護衛対象だった。
「……の方ならあちらに向かいましたよ」
まだそれやるか!?
はぁ、もう。
これ以上不毛なやり取りをしていても仕方ないのであたしは自己紹介と来た目的を話す。
すると、さっきの酔っ払いが急に笑い出した。
なんなの?いったい。
「俺たちゃこの辺を仕切ってる≪賢盗王≫ガガダ山賊団だ」
見た目がちょーっとアレかなー?とも思ってたけどやっぱりこいつら、ただの酔っ払いじゃなかったみたい。
「あんたらが仕事をしないおかげで俺たちゃやり放題だ。助かってるよ。ありがとうってな。ハーッハッハ!」
あーーもう!こいつら!
好き放題言ってくれちゃって!
そんな折、山賊が護衛対象のレイさんに視線とシミターを向ける。
あ、レイさんの呼吸が明らかに荒くなって、恐慌状態になってる。
あたしは山賊から目を離さずに、レイさんにできる限り優しく声をかける。
「大丈夫。ゆっくり深呼吸をして。大丈夫だから」
レイさんを落ち着かせていると、奴らは帰っていった。
ようやく落ち着いたレイさんは、悔しかったのか、ギュッとこぶしを握り締めて震えていた。
あたしは巻き込んでしまったことをレイさんに謝罪し、護衛に付くことを了承してもらった。
その後は、レイさんが食事を再開したいって言うので、自分の分の料理を持って彼の席へ。
彼が使っている薄黄色い物が気になる。
尋ねてみると、"まよねえず"と言うらしい。
「試してみますか」とのことなのでありがたくいただこうかな。
ふかし芋をまよねえずに付けて食べてみる。
ああああああああああああああああおいしいいいいいいいいいい!!!
深い味わいとさわやかなお酢の酸味という組み合わせがまたいいんだ。
で、この組み合わせが甘いけど淡泊なふかし芋を複雑な味に昇華させているんですねー。
くう!護衛引き受けてよかったあ。
そんな風に感慨にふけっていると、彼ががぼそりとつぶやいた。
「バターもあればなぁ」
ばたあってたぶん、姫様が開発した『ばたあ』のことだよね?
王都に行けばあるはずだけど……。
と思って『くりいむ』と共に姫様が開発したと伝えてみるとやたらと食いついてきた。
「せ、せ、製法!製法は!?」
目、血走ってるし。
あたしが知るわけないし。
あ、でもそもそも――
「あー盛り上げちゃったのに申し訳ないですけど、どちらも高すぎて庶民には手が出ませんよ」
あ、すごくわかりやすく落ち込んでる。
と、思ったら急に復活した。
「なんか表情がコロコロ変わっておもしろいですねー」
そんな風に言ったら聞き捨てならないことを言われた。
どうやら芋を食べるのにばたあがあればじゅうばいおいしいらしい。
バター用の魔道具を作る気でいるみたいだし、出来上がったらあたしにおすそ分けしてくれないかなー?
なんて思ってたらレイさんが不審者になっていた。
「あっあのっ!オウッオウッ王女様と、あっ、あいっ、めっ、面会できませんか!?」
今のあなたを姫様に合わせるのは無理ですねー。
今のじゃなくてもそうそう無理ですけど。
そう伝えても諦めきらないらしく、謎の言葉を言伝てられてしまった。
その後、レイさんに恐怖克服の手伝いを願われて付き合ったり、レイさんが寝坊した分の遅れを取り戻すために彼を吹き飛ばしたりしたけど、特筆することはないかな。
更にその後、山越えを開始したわけだけど、こんなところにいないはずの魔獣がいる。明らかにおかしい。
でもまぁ、そんなに厄介な魔獣でもないし、レイさんの恐怖克服にはうってつけかも。
というわけであたしはレイさんを魔獣の前に放り出した。
あたしも矢じりをレイさんに向け、構える。
レイさんガンバ☆
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★あとがき★
今回、別キャラ視点を書いたわけですが、めちゃくちゃ大変でした。
単純に僕の頭の中を出力する作業とは全く違っていて、
今までの会話とかの整合性が取れなくならないように、兎に角過去の文章を何度も確認する作業でした。
これよく他の作家さんやれてるなぁって尊敬の念が絶えませんね。ホント。
では、次は第21話で会いましょう。




