第18話 護衛が味方とは限らない件
前門のイノシシ魔獣。後門のアーチャー。これなーんだ?
初めて見る魔獣の目の前に投げ出された僕の現状だよ!ちくしょう!
「メリアさんメリアさん、なんで矢を番えてるんですかね?」
「さあ?なんででしょう?」
恐怖の克服チャーンスとか思ってるに違いないって、この子!矢尻こっち向いてるし!
てか国が護衛にこの子を選んだのは間違いだったんじゃない?
あーでも僕が克服の手伝い頼んだんだったか。うーむ。
しかし聡い皆さんならお気づきでしょう。
そう、こんなことを考えられるくらいには心の余裕があるのです。
そんなことを考えてたらイノシシが突進してきた。
速っ!!
これは食らう――と思った瞬間、
――ヒュン!
僕の耳すれすれを矢がかすめ、イノシシの少し前の地面に刺さる。
止まるイノシシ。
後ろからは「チッ」と舌打ち。
あのー。狙う相手僕じゃないですよね?いやいや、まさかそんな。
まあ、護衛だし?僕を射ったりはしないよね?ね?
……よし、落ち着こう。
まずは状況を整理して対処しよう。
ゲーム知識だけど、敵と相対した時の基本的な対処法は、大きく分けて2つある。
ひとつは、相手が動いた後に攻撃を打ち込む方法。
相手の攻撃をいなしてから、その隙に反撃するいわゆるカウンター。
ゲームでプレイヤースキルが高い人はとにかくこれがうまい。
回避が主体、攻撃はその次。
ただ……。
チラとイノシシを見る。
イノシシは矢を警戒してか、こちらの様子をうかがっている。
イノシシの速さに僕は対処できないので今回はこれは無理。
そしてもうひとつは、相手が動く前に制圧する方法。
相手が動く前にこちらから仕掛け、ノックバックやひるみを利用して主導権を握る方法。
今回はこちらを採用。
今の状況打開にはもうひとつ方法があるんだけど……これはあとで触れるとしよう。
そんなわけで魔力を練り込み、魔法を発動させる。
イノシシの上の空気を思いっきりイノシシに叩きつける。
空気の圧力で動きを封じる狙いだ。
上から下へ叩きつけた空気によって土煙が巻き起こる。
同時に、イノシシの足元の土を圧縮・硬化。
尖らせ、トゲ状に形成する。
ズン、と地面が震え、
次の瞬間、土のトゲがイノシシの首元を貫いた。
短い断末魔を上げ、イノシシはそのまま崩れ落ち、動かなくなった。
ふう。と息を吐く。
緊張もしたし、恐怖もあったけど、前みたいに頭が真っ白にはならなかった。
メリアに克服頼んだ時は失敗したかなー?とか思ったけど、こうも早くに成果が出るとは思わなかった。
恐怖の克服ってそんな簡単にできるものなの?解せぬ。
「いやー。男なのに魔法が使えるの、本当だったんですねー」
いつもの調子でメリアが近づいてきた。
「しかもかなりの手際でしたしね!」
誤魔化すつもりなのか、それともガチなのか。
「……外して、舌打ちしてましたよね?」
「なんのことでしょー?イノシシに当たらなくて舌打ちしただけですよー?」
僕はハァとため息を吐いた。
まぁ、メリアはたぶん僕に当てるつもりはないんだろうけどさ。
「イノシシから守っていただいてありがとうございますぅ」
「どういたしましてぇ」
二人顔を見合わせて笑い合う。
あ、ちなみに最後のひとつは結界を張るパターンね。
ただ、今回のイノシシの突進を結界で防ぎきれるか自信がなかったから採用しなかった。
たぶん、大丈夫だっただろうけどね。
「そういえば、このイノシシどうしましょう?焼いちゃいますか?」
あーでも山火事になっちゃうかなーとか考えてたらメリアから待ったがかかった。
「何言ってるんですか?食べるんですよ」
えっ!?
………………魔獣、食べるの?食べられるの?
本当に?
僕は天高く昇った太陽を振り仰いだ。




